「至福のレストラン 三つ星トロワグロ」
タイトル写真は我が家に、和食でゲストをお招きした時のセッティング。
新聞の「欧州の有名レストランを巡る二本の映画がこの夏に公開される」という記事を読んで、封切りされたらぜひ行きたいと、心に留めた。
同時に「美食家ダリのレストラン」の記事も掲載されており、こちらも検索してみたが、私の住まいする県では公開している映画館はなく、とりあえず
「至福の・・」を観に行った。
お料理大好き仲間のお一人を誘って朝一番の上映時間を目指した。
・・・というのも、この映画の上映時間は240分、4時間だ。
ウイークデイはお昼から夕方までの上映、土日は朝9:30からの上映と
分かり、主婦としては夕方遅くなるよりも、朝の方が良いとした。
ナレーションもなしで、レストランの様子をただひたすらに捉えていると
記事で読み、飽きないかしら?と多少の不安を抱えながら出かけた。
監督は94歳のフレデリック ワイズマンという、その場所の日常をひたすら写すという手法で数々のドキュメンタリー作品を発表してきた巨匠
だそうだ。新聞記事によれば、2020年に友人と共に「トロワグロ」を訪れ、自分でも思ってもみなかったが「ここで映画を撮っても良いか?」と尋ねていたという。一旦席を外したシェフは戻ってきて「もちろん」と答え、後で聞くと、シェフはワイズマンをウキペディアで検索していたのだという。
7週間かけて撮影し、編集に9ヶ月かかったという作品は、退屈しないかという懸念は杞憂に過ぎず、4時間もの時間が過ぎたとは思えない
作品だった。
朝の材料買い出しに始まり、メニューの検討、新メニューの考案、
それに伴う材料の調達、シェフたちの流れるような作業風景は、観ていて
気持ちよく画面に導入されていく。
実際にはシェフ同士の意見の違いもあったり、オーナーシェフ・ミシェルとその息子との意見の隔たりもあるに違いないと思うが、その辺りは編集してあるのだろう。
キッチンは清潔感と、美味しい料理を作ろうという雰囲気に溢れており、
シェフ一人一人の動きは流れるように進む。
飛び交う会話の中には、魚を捌くときに「いけじめ」材料に赤紫蘇などと
日本に馴染みのある言葉、日本料理から学んでいる話などに親近感を感じる。
赤紫蘇はそのままフライにして添え物としていたが、梅干しかシソジュースぐらいしか考えていなかった頭に新鮮な空気が吹き込まれた感じだった。
徹底した味覚や香りへのプロの拘りは、素人の及ぶところではないが、その精神には学ぶべきところがあると思える。
フランス、ローヌアルプ地方の小さな村にある民家を買い取って改修した
レストランは、あふれる緑に囲まれている。ガラス張りで周りの緑を取り
入れているホールからは、馬が放牧されている様子なども窺える。
ポスターにあるように、カジュアルな雰囲気だ。いわゆるフランス料理
レストラン然としたクラシックで重々しい雰囲気とはかけ離れている。
シェフたちは周りの畑で、野菜を育てたり、チーズ工場を見学して料理に
合うチーズを探したりにも余念がない。
ゲストにオーダーを取る時に、「嫌いなものやアレルギーがありますか?」と問われたゲストは、しばらく考えてから「請求書」と答えるところはいかにもフランスらしいウイットに飛んだ場面で印象的だった。
トロワグロは日本にも店を出しており、ハイアットリージェンシーの中に
あったようだが、2019年に撤退している。
50年以上もミシュランを取り続けているというレストラン・・
手が届かないかもしれないが、経験したかった。
間に10分間の休みを入れての上映だったが、後半の最後の方は、ゲストとシェフ・ミシェルとの会話が多くなり、ミシェルが、自分の経歴や、経験をしゃべるシーンは少し冗長に流れている気がした。
その点を除けば、とても楽しんだ映画だった。
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