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スプリンターズS② 展開予想編

・はじめに

本記事で利用するラップタイム数値はMahmoud氏のサイトによるデータを参考にさせていただいております。
大変重宝しております。ありがとうございます。

2022スプリンターズステークスの出走馬分析とレース予想になります。
①初手分析編では各馬の前半ラップタイムから特徴やポジションを推測
②展開予想編では後半の3Fの展開予測と各馬の短評を含めた比較
③最終結論編では予想印からの購入価値を見定め、馬券にどう反映させるかの意思決定基準を提示。

以上の三部構成となっております。
(記事内画像はnoteブラウザ版で簡単に拡大可能です)

長文を読む時間や耐久力のない方は、太字を流し読みしつつ画像でイメージを把握すれば最終結論に辿り着きますのでそちらをオススメします。


・隊列決定(記事①のおさらい)

①初手分析編で作成したポジションの再確認

4F目到達時点での予測値によるソーティング

±0.0 1テイエムスパーダ
+0.1 8ファストフォース

+0.6 2ジャンダルム  
+0.7 16マリアズハート
+0.8 7ウインマーベル
+0.9 *13メイケイエール
+1.0 12ヴェントヴォーチェ
+1.1 9*ナムラクレア

+1.5 4ダイアトニック 

+1.7 11トゥラヴェスーラ 10*タイセイビジョン
+1.8 14ラヴィングアンサー
+1.9 3メイショウミモザ 6ナランフレグ

+2.2以上 15シュネルマイスター    5エイティーンガール

注 *記号は取得値の幅が大きく予測信頼度が低いので中央値を利用

上記のポジションを念頭に置いて話を進めていきます。

・残り3Fの加減速データから見る余力比較

 

①上がり3F予測値


上がり3F予測値を過去データから算出。(非公開)
全体の所感は以下。

・13メイケイエールの上振れが大きい
→21スプリンターズの補正値が要因(かなり強い競馬をしているので補正が強くなった)

・9ナムラクレアの中央値と平均値の乖離が0.5秒以上ある
→出遅れて追い込む形となった前走の影響。再現性としては中央値に寄せた方が良いと判断。

・他に上がり3F 予測値にバラツキが見られるのは11トゥラヴェスーラ、2ジャンダルム
→これはポジション的にペースに左右される脚質のため、脚を溜められる、温存出来るといった勝負のアヤによる部分か

・1テイエムスパーダはきっちりラスト1Fは11.9+αまで失速
→今回は坂の存在とG1での戦いとなるためさらに落ち込む?

といったところ。
ちなみにというかやはり上がり予測値1位は15シュネルマイスターとなりました。はたして間に合うのでしょうか?
 

②ペース耐性を考慮して最終的なタイム差を算出

次にペース耐性を考えます。
セパレートコースでのタイムトライアルでない以上、どうしても戦法がかち合う馬同士が出てきます。
また、後ろから行く「相手次第の馬」も場合によっては上位争いに参加する前にゴールを迎えてしまうこともあります。

よって持てるポテンシャルをそのペースでどれだけ発揮出来るか、という部分が後半で重要になってきます。
この部分は過去ラップデータの『加減速と上がりタイム』に相関関係を求めて分析してみました。

(算出方法と評価基準は今年の重賞データのみで作成したものをベースにしているのでまだ精度は高いと思えませんが、現状自分が使用できるものはこれしかありませんので御了承下さい)

①と②を総合して前半3Fで確定したポジションに当て嵌めます。

ペースを作り出すのがテイエムスパーダとファストフォースと仮定し、先頭との相対的な関係をグループ分けしてみます。
使用したのは各馬の過去データから算出される加減速の推移と距離補正等を加えた数値です。
これで逃げ2頭をどの馬が抜き去りゴールするかが判断出来ます。

テイエムスパーダ、ファストフォースとの比較をゴール時点での推定タイム差で相対化。

A)【-0.5~-0.1】【余力あり】争覇圏内。位置関係をキープしたまま追走し、後半で逆転可能
ヴェントヴォーチェメイケイエールナムラクレア(位置前)

B)【+0.0~+0.3】【やや余力あり】位置関係をキープも差を詰める所でゴール板が先に来てしまう(届かず)
→ジャンダルム、ナムラクレア(位置後ろ)、タイセイビジョンダイアトニック

B’)【+0.3~+0.5】【余力無し】経済コース、トラックバイアスに恵まれても着内が精々。
→ラヴィングアンサー、トゥラヴェスーラ、ウインマーベル

C)【+0.3~+0.6】【余力あり・距離差大】ペース、トラックバイアス有利、先行勢の消耗、と能力以外の要素が必要。2F目までの差を残り区間全体で詰めていく(視覚的には捲りに近い)
シュネルマイスターナランフレグ、エイティーンガール

D)【+0.5~】【余力無し】このスピードでのレース展開ではほぼトップ争いに参加できないお客さん状態。掲示板狙いで格好はつくように見えるが、正攻法では厳しい。
→マリアズハート、メイショウミモザ

視覚化したものは下図

上記のような分類になります。
持てるポテンシャルを発揮出来るのはA>B>B’>C>Dの順です。

ゴール地点での逃げ馬との相対的タイム差


補足及び短評
逃げ
両馬とも3-5F目の失速度合の分散は小さいことが判明しています。これは過去データの失速範囲に幅があまりなく、毎回同じようにスピードダウンしていくという特徴を指し示しています。(テイエムスパーダの5F目の加減速タイムにおける不偏分散が0.02、ファストフォースに関しては3-4Fの加減速タイムの不偏分散が0.08-0.09、3Fが0.02)
ほぼ毎回決まった垂れ方をすると考えて良いでしょう。
逃げ先頭テイエム→ファストフォースの並びならファストフォースに余力あり。逆なら前に出た分ファストフォースの余力は削られる。


A群は2F目の加速でどれだけ先頭から離されずに4F目を迎えているかが鍵。ナムラクレアに関してはゲートがどうかという所。やはり後手を踏むのは避けたい。
ジャンダルムやウインマーベル、マリアズハートが道中逃げ組を追いかけて間隔を詰める形になれば、上手く壁が作れるメイケイエールの勝利パターン。
メイケイエールがやや掛かり気味で逃げとの差を自ら詰めてしまうと最後は甘くなり、ゴール手前で何かに差される可能性アップ。


B群は急流でなければチャンス。ロスなく進めた者が漁夫の利を得るパターンも。
B及びB’群の中で追走力に秀でているのはダイアトニックとタイセイビジョン。脚質は違えども両者インベタは必須条件。
タイセイビジョンは自分でレースを作れない分どうしてもハマり待ちになる。
ダイアトニックもローテが吉と出るかどうか未知数。ただ後半の失速は小さく「ひと脚使える」タイプ。
ジャンダルムはここでは突出した区間ラップを出せず、力不足。
ただ内枠という味方が今回はある。


B ’群のトゥラヴェスーラは度重なる内因性鼻出血の影響で前哨戦を使えなかったことが準備不足とならなければチャンスも。
ただ脚の使いどころも難しく、出来ればイン寄りのポジションを道中確保したい。しかし同じかそれ以上の追走スピード帯の馬は多く、巡り合わせの要素は大きい。
ウインマーベルは斤量や戦歴からそこそこ人気するとは予想されるが、どれも厳しい流れを制した結果とは言えず、信頼度は下がる。特にラスト1Fがそこまでの区間と比べたときの減速幅が大きく、最後パタリと止まる可能性も。1400mのさほどキツくない流れで持ち味を発揮するタイプか。

C群はほぼ3F→5Fが減速なし、もしくは加速区間になるのでタフな馬場かつペースが上がるほど有利。先頭が失速具合と相対的に差は縮まっていき、「ものすごい差し脚」に見える形となる。
しかし、この脚質は先頭との位置関係が全て。前が急激に止まるか、隊列が団子状態になるかのどちらかでしかチャンスはない。これらより前に位置し余力がある馬が数頭いるので非常に厳しい。

ナランフレグは右回りの成績というよりもやはり仕掛け所と前の距離に左右され過ぎるので軸には出来ない。
シュネルマイスターも早めスパートで格の違いを見せたくともただ余分な距離を走るだけになるのは明白。ナランフレグより後ろに位置を取ったならそれよりは早く動かなければならず、完全に騎手の判断に委ねられる。
エイティーンガールは高速馬場への適応力は低く、渋った馬場や荒れた馬場の助けが必要に。

D群に残された上位浮上への道は少ない。トラックバイアスが極端で、通るコースによって走破時計に影響が出る状態待ちとなる。もしくはインベタ経済コースを余力ありで回れた時か。

グループ毎の各馬短評

③余力と出せる上がりの限界

上記で示したA群は逃げ2頭より前でゴールする可能性が高い、と判断しました。ではそのA群同士での力関係はどうなるのでしょう。
人気のメイケイエールとナムラクレア、かなりタイプが違います。
感覚的に見ればそんなことは分かる、というのも納得できますが、数字の上でもそうなのか一度確認し、どちらが上かを決定します。

13メイケイエール 加減速内容
3-4F【+0.25】 4-5F【-0.25】                5-6F【+0.5】 
9ナムラクレア  加減速内容
3-4F【+0.3】   4-5F【+0.15~+0.25】 5-6F【-0.5】
【】の中の数値は秒、-は加速、+は減速

2頭の加速内容を数値比較


13メイケイエールは4-5Fにおける『仕掛け』で相手を競り落とすもの。
その相手の失速具合とこちらを相対化するとゴール前で引き離してるような印象になります。
ですが、数値の上ではわりと「強いスプリント馬の典型」といったもの。ラストの1Fは11.5秒付近。
坂路調教でその勾配を加味しても、やはりラストは脚の回転力がやや落ちてるのは確認できます。

対する9ナムラクレアは最後の最後に根性を見せるタイプ。
3-4Fで減速してしまうのはコーナリングがあまり上手くないことを示しており、この区間はむしろ外目を回った方がスピードのロスが少ないかもしれません。しかし舞台を考えると外を回すのもまたリスクが。
そしてラスト1Fで11.2秒を叩き出すポテンシャル、これは大きな武器です。
阪神の坂にも対応した結果を残し、栗東坂路の終いもキャラ通りにバテることなくこなしています。
中山の坂も十分対応、攻略可能でしょう。

となると『この2頭同士の決着』に関してだけ見れば、直線で先に抜け出した13メイケイエールを最後の最後に9ナムラクレアが差せるか否か、という形になります。
数値的には13メイケイエールに分があります。

12ヴェントヴォーチェは9ナムラクレアと同じかそれより前に位置出来れば勝機。同じポジションからのギアチェンジなら2頭に引けを取ることはありません。

このように①で推測したポジションと各馬の残り3Fの加減速を比較して最終結論を出していきます。
9/24-25の芝レース見る限り、やはり『内・前』有利であることは否めません。
クッション値が9/24で7.8、9/25で8.8であの状況ですから、これより固くなると考えれば『より内・前が有利』となることでしょう。

また、C群の15シュネルマイスターに関してですが、スタートから2F目を押して位置を取った上で加速出来るなら・・・・・別次元のレースを見せることになると思います。それくらい加速ラップの質が違います。
ただそれをここで行うかどうかは別の話。前に出していくなら前哨戦を使ってテストするはずです。
よって希望的観測を切り捨てた場合『間に合わない』という結論しか数値は示しません。
なにせただの一度もスプリント戦で前にポジショニングしたデータがないのですから。
予測モデルでは1位から0.5差以上との結果。
スプリント戦に合わせた戦いかたをせずに2F 後半からひたすら追い続けるという形ならあるいは、と言いたいのですがゲームではありませんからね。

全体傾向ですが、ここまで2F目で記録したトップスピードを少しずつ下げながらコーナーを処理していく展開となります。
となればやはり距離ロスを防げるラチ沿いをキープできたものほど余力がある、と考えて差し支えありません。
穴を開けるのはその点で恵まれた馬となります。
そこでポジショニング表のグループ毎に比較します。
0.15-0.2秒以内の範囲でかち合う馬は内枠の馬がインを取れる、と考えて単純化。もちろん騎手の技量でそこをひっくり返してくることもあります。

以下予測データからの余力度を区間毎に比較し、減速割合のみでソーティング(横並びはほぼ同一と判定)

ラスト2F地点での加減速から見る余力度合い

↑余力有り↑
シュネルマイスター
エイティーンガール ナランフレグ
ダイアトニック タイセイビジョン
ヴェントヴォーチェ
ウインマーベル ラヴィングアンサー
ナムラクレア メイケイエール
ジャンダルム
メイショウミモザ
テイエムスパーダ ファストフォース
マリアズハート
↓余力無し↓

ラストに向けての減速比が小さいということは、そのペースで余力ある追走が可能、または前につられること無く自分のペースで後ろから、といった関係性が見えてきます。

しかし余力があり、差して来たとしても前に届くかどうかはやはり位置関係によります。

ラスト2F→1Fに向けての余力


 

④トラックバイアス


枠と土曜日の芝の荒れ具合でどの馬を上げ下げするかは個人的な指標や感覚に左右されるのでここでは提示しません。
トラックバイアスに関する数値や計算手法に関して、適切な手法があったらヒントを是非コメント欄までお願いいたします。
わたし個人では新潟直線1000mの枠バイアスを記録したものをベースに
「距離ロスを前半の同脚質グループ内で考慮する」
というやり方のみに留めています。
ただこのやり方は芝スタートのダート戦であんまり役に立たないのでもしかしたら間違ったアプローチなのかもしれません。

クッション値による影響に関してはひとつ前の項目で挙げたように考えています。
今回の判断基準としては前週のクッション値8.8より数値が大きくなれば、馬場が固くなったということですからスピードが上がるととらえます。そうなれば前と内がより有利です。

さて、推測データと枠順などの条件が出揃いました。
果たして本命馬は何になるのでしょうか。

いよいよ③最終結論編へ。



ここまでが前半と後半の展開予測を過去走データに基づき分析したものになります。

それでは③最終結論でまたお会いしましょう。
読んで頂きありがとうございました。

©️ぺぬ