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潮が舞い子が舞い 雑多なアウトプット

所感

もっとこの美しい物語を…見ていたかったよ…!
もちろんこれで終わり!?感はあるし、右佐虎美や刀禰バーグマンは特に進展なく水木百々瀬も語られずに終わってしまって悲しい気持ちも大きいんだけど(CP厨すぎる)、阿部共実先生はあえて余白を残した終わり方にしてるんだろうな、という安心感がある。
これがジャンプ漫画なら打ち切りダァと騒いで集英社にバスで突っ込もうとしているところだけど…。

「月曜日の友達」の時もそうだったけど、阿部先生の描く漫画は読後感が寂しい。この寂しさの正体は何だろう。もう新しい彼らを永劫見れない寂しさなのか、余白(解釈の自由さ)から生まれる寂しさなのか、正直よくわからない。しかし必ずしも感情を言語化する必要もないので、この感情をあるがままに自分の中で大切にしようと思う。
「人の多感で複雑な心を喜怒哀楽で表してしまったらこぼれ落ちるものがたくさんあると思うんです」
ほら、バーグマンもこう言ってるし。

「潮が舞い子が舞い」第6巻 第60話より


車崎についての考察

車崎のその後が語られなかったのは驚いたけど、94話の性悪説の話が伏線になってると思う。
車崎と釣岡が決裂した95話でもしきりに「性格が悪い」って文言が出てきた上に、性悪説の話の直後だから、これは繋がってると考えていい。

94話では、摩耶先生が性悪説を「先天的な本性は問題にせず後天的な教養にこそ人のあり方を見出している」と解釈している。
つまり、99話にある「俺はこのまま大人になるのかな」という車崎の悲痛な問いに対する作中のアンサーは、「人は後天的に変われる」という前向きなもの。
車崎は自分に対する指摘を認めて、水木に対して誰に言われることもなく「ごめん」と謝った。彼は既に変わり始めてるし、きっと釣岡たちとも仲直りできるんじゃないかと思う。多分。

「潮が舞い子が舞い」第9巻 第94話より


「変化」の中で「不変」を望む人間の美しさ

最終話でバーグマンが言ったように、人は変わっていく。
車崎は変わり始めたし、水木と百々瀬の関係も変わっただろう。
この作品では変化というある種の現実を描いてくれているけれど、もっと強調されているのは変化の中で不変という理想を望む美しさだ。
「月曜日の友達」で水谷が月野に「ずっと一緒だよな。」と言ったように、潮舞いでは百々瀬がバーグマンに「私は何があっても、真鈴とずっと友達でいたいと思っている。」と言った。
不変は起こりえないし良いことでもない、それでも不変を望む人の心は美しいと、阿部先生はそんなことを作品に込めてるのではないだろうか。

「月曜日の友達」第2巻 第7話より
「潮が舞い子が舞い」第10巻 最終話より


ガチの妄想

ここからは完全に妄想で、余白の部分をもっと好きに解釈しようと思う。
水木と百々瀬は付き合ったでしょ!きっとあの水木のセリフの後、百々瀬が頬を赤らめながら「おい、はっきり言えよ。」とか言って、水木が正式に告白して二人は付き合ったんじゃねーかなーと思います、うん。うふふふふ。
そうじゃなきゃ9,10巻であんなに何事もなかったかのように振舞えないでしょ!水木が好意を示しただけで関係が曖昧なままなら、あんなにお互い冷静なわけない。あの様子は付き合って関係がはっきりしたからこそだろう。

水木が可愛い犀賀に対して全くなびく様子を見せなかったのも、百々瀬と付き合ってるからじゃないかと思った。「なんかずっと続けばいいのにって思うね、どこまでもどこまでも、遠くへ遠くへ」という犀賀の婉曲的な告白に対して、水木は「いいねどこまでも行きたくなるよね、でも風越が待ってるから」とはっきりとNOを示した。でも水木は中畔や氷室の好意にすら気づかない鈍感野郎なので、ガチで気づかなかった可能性も十分あると思う。
まあ、犀賀が水木の背中に書いた文字は本当に「アホ」だったんじゃないかな。水木は如来だから人の好意をなかったことにはしないはず。

CP厨としては、枇杷谷&黒羽根も右佐&虎美も刀禰&バーグマンも全員くっつけたいところなんだけど、はっきりと恋愛の矢印が示されてるのが枇杷谷→黒羽根と刀禰→バーグマンくらいしかなくて、あとはそこまで至ってないんだよなあ…お気に入りってくらいの感情で…。
これを全員付き合いますうううううハイ論破あああああ!とするのは流石に余白の解釈の範囲を超えている、残念です。

でもバーグマンにとって刀禰って相当お気に入りだよね。バーグマンは百々瀬がいるときしか咆哮しないはずだけど、刀禰と二人の時はバーグマンが咆哮するシーン結構あるんだよね。遠慮なく咆哮する時点で好感度は高いに違いない。きっと思わずツッコミが強くなってしまう刀禰にバーグマンはシンパシーを感じたんだろうな。だから腋じゃねえって言ってるだろ!


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