思い出に残る給食を。ダカルシェフの本格カレー
学校給食のお昼の一コマ。
スパイスの効いた本格的なカレーの香りが漂う校舎のスピーカーからは
ネパール人ダカルシェフによる、縦笛の音が聞こえてきます。
いつもとちょっと違うお味でおいしかったのか、幸せそうに素敵な笑顔を浮かべながら食べる子供たち。
ごはんを食べ終わると、まるでテーマパークに来たかのようなはしゃぎ様で、ダカルシェフにサインを求めています。その子供たちの素敵な笑顔とサインを求める声に、思わず満面の笑みでサインを書くダカルシェフ。まるで学校のヒーローの様だねと微笑みながら、見守る学校の岡庭栄養士と立岩さん。
そんな素敵なほほえましい光景が浮かぶ一日は、「本格的なカレーを作る本場のシェフがいますよ。」という立岩さんの言葉に、「子供たちにいろんな食体験をしてもらいたい」という素敵な考えを持った岡庭栄養士が答えたことから始まりました。
こんにちは!グリーンハウス note編集部いわちゃんです!
子供たちにとって日常になっている給食の時間に、ちょっとでも子供たちに喜んでもらいたい。非日常を届けたい。そんな想いをもって日々子供たちに、“食”を届ける岡庭栄養士と立岩さんにお仕事への想いとこのイベントの裏側を教えていただきました。
◆食を楽しむ心を育てる
―はじめに、学校で栄養士をされている岡庭さんの業務内容を教えてください。
岡庭:今は給食管理が一番大きい業務で、「献立作成」と「食育」を軸に業務を行っています。献立作成では同じ組み合わせにできるだけならないように組み合わせを変えるように工夫をしており、食育活動では「食への興味」と「健康教育」の二つに分けて活動しています。その中で「食に興味を持ってもらってほしいな」という想いから食文化・食材・郷土料理についてなど、月に一回全クラスを周って給食の時間にお話をしています。
―実際に岡庭栄養士自らお話しされるのですね!どういったお話をされるのですか?
岡庭:例えばスペイン料理を給食で出した時は、5年生の社会でちょうど日本の食料生産などについて授業で学ぶので、それと絡めて「スペインだと地中海に面しているから魚料理が多いんだよ」などといったことを伝えています。やはり教育活動に合わせて、学校の授業を聞いて関連付けることで子供たちのためにもなると思うんですよね。
(世界の料理「スペイン」 パエリア、トルティージャ、オリーブオイルドレッシング、サラダ、グレープゼリー、牛乳 写真提供:岡庭栄養士)
―たしかに授業と関連付けることで、子供たちも学んだことが頭に入っていきやすいですし、食に興味を持ってくれる子供たちが増えていってくれそうですね!健康教育ではどのような事をされているのですか?
岡庭:健康教育では、低学年ではどうして食べるのか、中学年では保健体育の授業などで成長に必要な栄養について、高学年では家庭科で5大栄養素についてや、保健体育の授業で生活習慣病について教えています。ただ知識だけだと面白くないので、最終的には食を楽しむ心を育てるというのを食育の一番の軸にして食育を行っています。
―とても素敵ですね!そんな食育への想いもある中で、ダカルシェフイベントを行っていただいたんですね!
◆日常の中にちょっと非日常を。
―実際にやっていただき、いかがでしたか?
岡庭:小学生って自分たちが思っている以上に同じ日常が続いているので、日常がちょっと非日常になる...例えば牛乳がコーヒー牛乳になるだけでもテンションあげあげみたいな感じなんです!なので給食の中で普段と違うことをしてあげたいという気持ちがあるんですよ。この気持ちをダカルシェフのイベントをやった時に一番感じましたね。
言ってしまえば、同じ環境、同じ食器で、同じ時間に食べているのにちょっといつもと違うというのがわかるだけで、おいしいのももちろんあると思いますが、すごく食べていました!それにダカルシェフが教室に行くとダカルシェフの周りに子供たちがたくさん集まってたんですよ!
立岩:まるでアイドルでしたよね!(笑)
岡庭:こちらが思っていた以上に大人気でした!誰かがサインくださいと言ったらもうたくさん集まってきて、「そろそろダカルシェフ帰りま~す!」と言いながら私と立岩さんはマネージャーみたいに交通整備するような感じになっていました。(笑)やはりちょっといつもと違うことをするとその場も盛り上がるし、印象に残るんだなと思いました。
―とても盛り上がっている様子がお話から伝わってきます!
そもそも今回ダカルカレーシェフのイベントを行おうと思ったきっかけは何だったのですか?
岡庭:最初は立岩さんでしたよね!
立岩:そうですね。新型コロナウィルスの影響で、多くの学校でイベントといったスペシャルメニューがどんどんなくなっていく状況でした。子供たちに楽しんでもらえる給食を提供したいという想いから、社食でこうしたイベントがあるんですが、学校でやったら面白いですよねと提案をさせて頂いたのがきっかけです。
岡庭:その提案していただいた時に、自分自身も幅を広げたいし、子供たちの経験にもなるし、、、一石四鳥だと思い、絶対やりたいと思っていました!
立岩:この提案をしたときに、逆に岡庭栄養士から食育にもつながるのではとご提案いただき、ネパールの文化などの紹介もさせていただきました。そんな岡庭さんの熱意があったからこそ、素敵なイベントになったと思います。
(世界の料理「ネパール」 ターメリックライス、バターチキンカレー、ビーンズサラダ、ジョア 写真提供:岡庭栄養士)
◆相互の想いが詰まった、思い出に残る給食
―相互の想いがあった方こそできたこのイベント。やるにあたり伝えたかった岡庭栄養士の想いはどういった物でしたか?
岡庭:現在も世界の料理を提供はしているのですが、やはり本場の味を出すには限界があるなと感じていたんですね。しかし本場の方が来てくれることで、子供たちにこれが世界の味なんだよということが伝えることができるんじゃないか。食経験を広げてあげられるのではと思いました。
また、大人になって、ふと「給食のときこんなカレー食べたな~」とか、「面白いシェフが来ていたな~」と思いだしてくれたら嬉しいなと思ったんですよね。また、こうした経験があると、きっと食が好きになると思うんですよね。
なので食経験を広げてあげたい、おいしい物を食べさせてあげたいという想いが強かったです。
―きっとその想いが伝わったのだろうなと思います。今回ダカルカレーイベントをするにあたり事前準備も大変だったと思うのですが…
岡庭:ちょっと大変でしたが、グリーンハウスさんに事前に来て試作会をしていただくなど、すごくサポートしてもらったなという印象です。私の懸念として、社食と給食の栄養素や味や辛さの違いがあったんですね。しかし給食用にレシピをあらかじめ考えてくださっていたので、そのレシピを私の方で一度変更させていただいて、それをまたダカルシェフに確認してもらうという感じで進めていきました。
立岩:岡庭栄養士にはそもそもダカルシェフのレシピに使う食材が学校給食で出せるのかの確認から、栄養摂取基準等に合わせるために副菜の調整などたくさんお力添えいただきました。味については何度もダカルシェフとグリーンハウスの栄養士と共に、試行錯誤を重ねて給食用のレシピを開発していきました。やはり学校の皆様が自信をもって出せる給食でないとダメだという想いから試作会もさせていただきましたね。我々がいくらやりたいと思っても、学校の皆様のご支援が成り立たないとできないので感謝の気持ちでいっぱいです。
―本当にありがたいですね。イベント後の反応はいかがでしたか?
岡庭:今でも子供たちに「また食べたーい」とか「今月はないの?」と言われます!(笑) 先日一度再現メニューでダカルカレーを出したのですが、その時は今年度で残菜量が今年度で一番少なかったです。やはりダカルシェフのイベントは思い出としても残っているし、子供たちにヒットしたのではないかなと思っています。
また保護者の方からもお声掛けいただくことがありがたいことに多くて、その際にも「いいイベントだね」と。他にも保護者から集めた学校評価の自由記述欄にも献立を工夫してもらっているというコメントがあったのがとても嬉しかったです。それもいろいろとこうしてご協力いただいているからこそだなと思っています。
◆安心して楽しめる給食を支え合う力
―他にはどんなイベントをされているんですか?
岡庭:「かしうさぱん」という出来立てパンを毎月出しています。他にも行事食として、お彼岸ではおはぎを出したり、郷土料理給食として、東京都民の日にはもんじゃ焼きを春巻きにして、「もんじゃ春巻き」にしたり、山形県はラフランス生産量第一位なのでラフランスや芋煮などを出しています。世界の料理は月に一回はやっていますね。
またセレクト給食を2か月に一回やっていて、カレーライスとハヤシライスや、醤油ラーメンと味噌ラーメンどっちがいいかみたいに選べるようにしています。
―とても楽しそうですね!
岡庭:結構盛り上がるんですよ!いつもより多く作ってもらわないといけないので準備が大変なのですが、子供たちに楽しむ中にも選ぶ力が出てくるといいなと思っていて、「どちらもおいしそうだな、、けど普段はこっちを食べていないからこっちを食べようかな~」といった発想が出てくると良いなと思っています。
―今後やってみたいイベントはありますか?
岡庭:ダカルイベントのような本場の味が楽しめる料理イベントや親子の料理教室などもやっていきたいです。今後も、非日常なものを提供していきたいと思っています。
―最後に伝えたい想いを教えてください。
岡庭:学校で栄養士として楽しいなと思うのは、すぐに子供たちの反応が見えるところなんですよね。子供の食べている顔や食べ終わった後のちょっとした会話とかとても楽しいですし、もっと何かやってあげたい!と思います。そして本当に給食室の調理員さんに支えてもらっていますね。こちらがどんなにやりたくても、現場がついてきてくれないとできないんですよね。そこまでできないですよと言われたり、技量的にできないかもといった心配せずに任せれることがありがたいなと思っています。所長さんからは「これをこうしたらもっとこういう風においしくなりますよ」などとご提案いただけることが関係性としてもとてもいいなと思います。ダカルシェフのイベントもですが、普段安定して給食を提供できているという土台があるからこそできることです。本当に支えていただきありがとうございます。
立岩:食への興味を持つ子供が一人でも増える様に、、、これからも楽しく安全・安心な食事を提供していきます。
毎日当たり前においしくて栄養バランスがとれたごはんが食べられると思っていた学校給食。
その背景にはたくさんの想いがありました。次回は柏木小学校のできたてパンのイベントに潜入取材をしてきます!お楽しみに♪
―ダカルシェフの想いを聞きました。ラッシーのレシピもついているので是非ご覧ください!
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