帰国の日に。
「やっと着いたぁ。足、むくみすぎてやばい。」
意識しなくとも、
他人の会話が耳に入ってくる。
久々に聞く日本語が鬱陶しい。
日本到着のアナウンスが流れ、
飛行機を降りる。
「やっぱ日本が一番ちゃんとしてるよね。」
言葉だけでなく、
自国に固執した狭い考え方も。
当時はそんな窮屈さに嫌気がさし、
日本を出た。
日本の言葉から、
そしてこの空気から離れれば、
自由になれると思った。
「トラブったけど、
何だかんだ楽しかったよね~。」
“向こう”では良い事もあった。
でも、辛い事だってたくさん経験した。
「あっちの人、皆フレンドリーなのが良いよねぇ。」
「みんなモデル並みの見た目だし。」
“向こう”の空気に息が詰まり、
飛行機に飛び乗ってきた。
自分の生まれた国に帰りたかった。
でも、と思う。
胸の深いところに何かが残る。
「またみんなで行こうね!
今度はあっちの言葉を勉強してさ!」
パスポートを強く握り、前を見る。
まだ”帰る”訳にはいかない。
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