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「女性ホルモンとあなたらしい生き方」Lean In Tokyoイベントレポvol.1

writer/篠原舞

2020年12月19日、Lean In Tokyo主催のオンライントークイベント「キャリア・ライフプランの選択肢を広げよう〜女性ホルモンとの付き合い方〜」に弊社代表の長谷川が登壇しました。

イベントは二部構成となっており、第一部では「女性ホルモンとあなたらしい生き方」と題し、長谷川と国立成育医療研究センターの前田裕斗医師が、女性ホルモンの働きや、コントロールの方法などを解説。第二部では「私のLean In Story」として、長谷川自身が今までのキャリアで一歩踏み出し、挑戦したエピソードを紹介しました。

本記事では第一部「女性ホルモンとあなたらしい生き方」の様子をレポートします。

Lean In Tokyoとは
Lean Inとは、一歩踏み出すこと・挑戦することを意味している。
2013年、Facebook COOであるシェリル・サンドバーグが出版した『Lean In』。この本で推奨している「女性が野心を持って、挑戦することができる社会」を実現するために、シェリルは本のNext StepとしてLean In.orgを立ち上げた。
Lean In Tokyoは、2016年3月から本格始動し、このLean In Chapterの一つとして、そして日本で唯一のRegional Leader Chapter (地域代表)として
女性が一歩踏み出すきっかけをつくることと、これを後押しできる仲間を増やすことを目標に活動を行っている。
長谷川彩子
Vitalogue Health 代表取締役CEO
東京大学薬学部・薬学系研究科卒(神経科学・薬理学)、London Business School MBA修了。薬剤師、漢方認定薬剤師。
アクセンチュア株式会社にて通信、製薬業界等のクライアントに対するM&A・新規事業・戦略コンサルティングに従事。2014年よりフリーランスで、日本及びイギリスにて、スタートアップ投資案件及びスタートアップでの戦略立案の双方に取り組む。帰国後、ゴールドマン・サックス証券会社投資銀行部門にてTMT/ヘルスケアセクターにおけるアドバイザリー業務に従事。株式会社アカツキの投資プロジェクトHeart Driven Fundを経て、自身の経験をもとに、女性が自分の身体と向き合い人生の選択肢を広げるきっかけを増やしてほしいという想いから2020年4月にVitalogue Healthを起業。郵送のホルモン検査キットを使い病院・婦人科に行かずに自分の身体の状態を知ることができるサービス「canvas(キャンバス)」を開発。2021年2月からクラウドファンディングを開始予定。
前田裕斗医師
産婦人科専門医。
国立成育医療研究センター 産科
東京大学医学部医学科卒業後、川崎⇒神戸と勤めその後現職。
嫌いなものは理不尽なこと!日本における女性のまつわる様々な理不尽について問題意識を抱き活動中。

ホルモンの働きと身体への影響について

生理の時って、仕事に影響が出ませんか?
生理前後を含めたら、月の半分は体調が悪くありませんか?
生理に重要な会議が重なると、辛くありませんか?
仕事を頑張りたいけれど、このままで妊娠できるのかな…、いつ子どもをつくろうかな…など、モヤモヤしませんか?

長谷川は自身の経験を振り返り、「私は月半分ぐらいは体調が悪く、生産性は普段の3割くらい。重要なミーティングに生理が重なったらすごく辛くなりますし、こんなにハードワークをしていて、妊娠や出産ができるのだろうか?と思っていました。これは皆さんにも経験があるのではないでしょうか。女性は一生を通してホルモンに振り回されると思っています。」と話します。

月経不順やPMSによる不順、妊娠機能への不安、更年期による不調と、年代によって様々な悩みを感じている人が多くいます。また、ホルモンによる不調が働く女性の生産性低下を招いた場合、その経済的損失は年間6.37兆円とも言われています。

ホルモンは女性のキャリア・ライフと切っても切り離せない関係なのです。

そもそもホルモンとはどういったものなのでしょうか。前田先生は「ホルモンとは、情報を届けるメッセンジャーです。脳から指令を出し、様々な組織に働きかけるものです。ホルモンは内分泌腺で作られていて、内分泌腺には、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、副じん、すい臓、生殖腺などがあります。女性の身体で特に気にした方がいいものは生殖腺、つまり卵巣です。」と話します。

いわゆる「女性ホルモン」と呼ばれるのは、エストロゲンとプロゲステロンです。

エストロゲン「女性らしさをつくるホルモン」
妊娠のための準備をする(子宮内膜を厚くする)
自律神経、感情、骨、皮膚、脳の働きに大きく影響
基礎体温を下げる
★子宮の中の状態や精神状態を整えるなど、ポジティブな働きを持っている
プロゲステロン「妊娠のためのホルモン」
妊娠を助ける(子宮内膜をふかふかにして着床を助ける)
体内の水分を保持したり、食欲を増進させる
基礎体温を上げる
★生理前にむくんだり、無性に食べたくなったり、ニキビができやすくなったりと”困ったちゃん”なところもある

女性はこの二つのホルモンの変動に毎月さらされており、ホルモンのバランスが崩れると心や身体の不調を招きやすいのです。

そのほかにも女性の身体に関わるホルモンとして、プロラクチン、AMH、テストステロンがあります。

プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)
乳腺を刺激して乳汁分泌を促進する
授乳中に高くなる
高すぎると卵胞の発育を阻害することがある
★高くなると生理が止まってしまうこともある
AMH(抗ミュラー管ホルモン)
卵巣から分泌されるホルモン
卵巣予備能(残っている卵子の数を反映)を知る指標
★人によってバラツキが大きいのと、同年代の人の平均と比べての指標なので、低いからと言って必ずしも妊娠しにくいというわけではない。
妊娠のしやすさは卵の数ではなく、質が関わってくるが、質を表す指標は現在年齢くらいしかない
テストステロン(男性ホルモン)
男性の10分の1だが、女性でも分泌されている
皮脂分泌、体毛発育、筋肉質にするなどの作用
女性においては、高すぎると排卵が抑制されることもある
★男性ホルモンを合成してから、女性ホルモンが合成される

また、甲状腺も重要です。甲状腺ホルモンは脳、心臓、骨格筋、代謝など全身に作用するので、ここが悪くなってしまうと、結果的に卵巣にも影響が出てしまいます。

甲状腺ホルモン(FT4)
甲状腺機能の異常は女性に多い
甲状腺に異常があると、月経に異常が出たり、妊娠しにくくなることも
★エネルギー代謝を行うために分泌されているので、一般的に疲れてだるい、集中力が続かないという状態は甲状腺ホルモンが低いと言われている

ホルモンをコントロールする方法

ライフステージという切り口で見てみると、ホルモンのピークである20代半ば〜40代半ばに「結婚・妊娠・出産・子育て」が発生し、かつこの期間はちょうど仕事での頑張りどきに重なっています。これに対し、長谷川は以下のように述べました。

「だからこそ、女性ホルモンをコントロールし、プランニングしていくことが大事なんです。

働く女性がホルモンを気にした方がいい理由は二つあって、一つ目は自分の今のパフォーマンスに大きく影響するからです。生理中の複数のホルモン変動に伴う身体やメンタル・判断力への影響を知った上でコントロールできるようになるといいんじゃないかなと思っています。

二つ目は、将来のライフプランを左右するのは”今”であるから。ホルモンのピークは今です。老化は止まってはくれません。後悔しない人生選択をしたいのなら、今のうちから定期的に自分のことをケアしていく習慣をつけておくことが必要です。」

では、コントロールするためはどうしたらいいのでしょうか。今すぐできることとして、前田先生より4つの方法が紹介されました。

1.自分の心身の状態を把握する
自分の身体は自分が一番わかる。
PMSが煩わしくても、「PMSだから」という理由を知っているだけで身体や気持ちが軽くなる。
なるべく定期的にホルモンを測るのもおすすめ。
2.自分の性周期・体調リズムに合わせて計画する
生理前は睡眠が浅くなるので注意。
体調が悪い時は無理しない。周りの人に仕事を任せてもいい。
できるだけ身体・判断能力が絶好調の期間に重要な意思決定を持ってくる。
3.セルフケア
食事:
オメガ3など良質な油をとったり、乳酸菌・納豆菌・麹菌・ビフィズス菌など腸内環境改善に関わるものをとる。
食事制限や糖質制限をしたり、トランス脂肪酸やGI値が高いものをとったりするのは良くない。
★そもそも痩せすぎると女性ホルモンの分泌が止まり、太りすぎると排卵が止まってしまうこともある。
また、食事をとるタイミングが月経困難症に影響するという文献もあるので、朝食を抜かずに食べるといったことも大事。

運動:
激しすぎる運動よりも、ヨガやピラティスなど呼吸を整えるものがおすすめ。
★ちょっとした運動はストレス解消にもなる。ただ、運動をしすぎると生理が止まることも。

睡眠:
不定期な睡眠時間、睡眠不足は避ける。お風呂に入ってから寝る。
リズム運動、朝日を浴びるのも良い。
★1日のリズムが婦人科系の病気の発症に関わっているとも言われている。

アロマ:
ローズ、ゼラニウムは女性ホルモンコントロールに効果がある。この二つ以外でも、好きな香りであればOK。
★ストレス解消にもなるので、上手に取り入れていくと良い。

メディテーション:
深呼吸で自律神経を整える。そうすることで、深い睡眠も促す。
手芸や楽器、料理など、自分が集中してできる趣味などでも同じ効果が期待できる。

アファメーション:
アファメーション(自己肯定)する言葉を自分にインプットして、思考パターンを変える。
一連のセルフケアをすることで、自分を大事にしていく。
4.妊活などのライフプランを立てる
「自然に子供が3人欲しい場合は、23歳から妊活に取り組んだ方がいい」「不妊治療も選択肢に入れつつ、絶対に子供が1人欲しい人は35歳、できれば子供が1人欲しい人は39歳から妊活に取り組んだ方がいい」という論文もある。
妊娠・出産を考えている人は、このようなデータを参照しつつ、自分はいつ妊活をはじめるのかを考えておくのがベター。

女性の健康まわりをサポートする「FemTech(フェムテック)」

フェムテックとはfemale(女性)とTechnology(技術)を掛け合わせた言葉で、女性の健康課題をテクノロジーで解決するサービスやプロダクト群を指します。

最近では海外だと500社、日本でも100社近くフェムテック企業が存在していて、市場規模は2025年までに5兆円になるという試算も出ています。しかし、まだまだ楽観視できない状況だと長谷川は話します。

「今フェムテックは盛り上がりを見せていますが、日本の女性の健康まわりは、歴史に例えると旧石器時代だと思っています。例えばピルは1960年に出たのですが、アメリカでは180種類ある一方、日本にはあまり種類がありません。健康管理のために必要な情報も、どこで得たら良いのかも分かりません。キャリア・ライフデザインのために必要な選択肢が狭められているんです。

だから私は選択肢を増やしたいなと思い、Vitalogue Healthを立ち上げました。そして今、canvasというホルモン検査を通じて自分の体調を把握・管理し、より主体的にライフキャリアを描くことをサポートするサービスを開発しています。」

canvasが目指すこと

ホルモンをコントロール方法の一つに「自分の心身の状態を把握する」というものがありました。そこで有用なのがホルモン検査です。

長谷川自身、生理が止まった時にホルモンを測ったら色々なことがわかったという経験から、canvasの開発に着手したと言います。

「自分の身体を知る上で検査を受けようと思った時に、そこには3つのハードルがあると感じました。

1つ目は、仕事が忙しく、時間が取れないこと。どんなに不調でも、女性だから仕方ないと思って病院の優先順位を下げがちです。

2つ目は受診の心理的なハードルが高いこと。内診があると気軽に受診できなかったり、不妊治療クリニックに行くのに抵抗があったりといった人は多いと思います。

3つ目は、そもそもどこに行けばいいのかわからないこと。ガンのような大病や、出産・妊活・不妊でないといけないと病院に行ってはいけないという思い込みもあります。」

そこで、canvasは郵送された検査キットで自己採血し、それを返送するだけで結果がわかるという手軽さを訴求したと話します。

「まずは20代後半〜30代の女性に向け、妊娠コンディションに関わる検査を提供します。キットでは排卵機能や卵巣予備能(卵子の数)、甲状腺機能を判定できます。さらに、医師と連携したり、ピルや漢方、卵子凍結などの情報にアクセスできる仕組みもあります。」

2020年の夏頃、20代10名、30代32名、40代5名の計47名に対して、トライアルを実施。参加者のうち、全体の43%に対して受診を勧めたところ、子宮筋腫・PCOSの疑い・橋本病の疑い・排卵障害の疑い・卵巣が晴れている可能性などの疾患が判明もしくは疑われるという結果が出ました。これ受け、参加者からは「今後も定期的に検査を受けたい」との声が上がりました。

長谷川は最後に、canvasを通して実現したいビジョンをこのように語りました。

「プロダクトは妊孕性の検査キットからスタートしていますが、私たちは決して全員が子どもを持った方がいい、というような固定的な価値観を伝えたいわけではありません。各々が実現したい人生を描き、追求していくのがあるべき姿だと思っています。

ただ、望む生き方をする時に、ホルモンの影響は切り離せないのは事実です。だからこそホルモンの状態を知って、コントロールして、生き方をデザインしてもらいたい。私たちはcanvasを通じて、それをサポートしたいんです。

女性に限らず、男性や生物学的な性にとらわれない人など、あらゆる人がホルモンを知ってコントロールすることでハッピーになる世界を実現するために、これからも取り組んでいきます。」

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~ canvasの最新情報は、こちらで発信しています ~

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2021年1月27日(水)に開催されるfermataさんとのオンラインイベントに長谷川さんが登壇します!
Femtech Fes! vol. 18
「ホルモンケアとFemtech〜生理から妊娠、更年期まで〜」
<トークテーマ> 
 ・あらためて学ぶ「女性ホルモン」とその影響
 ・海外のホルモンケア & Femtech 事例
 ・ホルモン数値を知ることで、どのように自分の未来を描けるのか?

■日時:2021年1月27日(水)19:00 ~ 20:00
■参加方法:ビデオ会議システム「Zoom」
■参加費:無料
■申込方法:イベント専用ページよりお申し込みください
https://femtechfesvol18.peatix.com


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