無い未来を考えるより、今できることを
昭彦先生から予期せぬ提案を受け、まだどうするべきか悩んでいた。
結論
たくさん迷うところはあった。
ニワトリ卵論が一番の悩みどころではあったがもう一つ懸念点があった。
それは、一度始めてしまうと簡単には止められないというところだった。
イベント的な形で単発で行うものであればよいが、小学生に向けての英会話教室となると小学校に通っている間はずっと来てもらうということを計算しなくてはならない。
これはかなり今後の人生設計において重大な決断となる。
この時点でのプランと言えば、多くの幼稚園と契約を結びリモートで行う異文化交流を全国的に広げていくことがメインである。
その足枷になるようなものは排除しなくてはいけない、そう考えていた。
しかし、それと同時に考えるのがやはり目先に利益である。
とにかく独立したのはいいが、稼ぎが少ない。
妻は思いっきりやればいいと大きな心で構えていてくれているが、やはり何とか少しでも早く、せめてサラリーマン時代と変わらない程度の稼ぎを得たいと考えているのも事実だった。
そうなったときに、英会話教室で在れば日本中どこにでも存在しているし、真新しいものではないので生徒も集まりやすいのではないか?
すぐに収益化に繋がるのではないか?
そういう思いもあった。
そうこう思いを巡らせながらも、この日もいつものようにまこと幼稚園に到着し、備品の準備をしようしていた。
園に到着すると、昭彦先生が園児の母親らしき女性2人と話をしていた。
僕の存在に気付いた昭彦先生が、大きな声でいつも通りあいさつをしてくれた。
そして、そのまま話をしているお母さんたちにこのように伝えた。
「おおGeshi!!おはようございます!ほら、これGeshiです!お母さんこれから英語のレッスン始まるので是非きてくださいね!」
なにっ!?
するとお母さんたちもとても興味あるといった様子で僕に話かけてくれた。
「いつもお世話になっています。息子が最近ジェシーが来て楽しいとか、いろいろ話してくれて初めはなんのことかわからなったのですが、Geshiだったんですね!英語のレッスンがとても楽しいみたいでいつも話してくれるんです。そして昭彦先生から聞いたのですが、英会話教室が始まるんですよね?少し興味があって。」
そうだ。
昭彦先生という人は、僕のようなよくわからない奴からの連絡にもウザがることなく興味を持ってくれて受け入れてくれた人。
新しいことに興味があって、そういう人間を応援したいと考えてくれる人でもある。
そして、この昭彦先生のすごいところは、とにかく考える前に他人に話すこと。
おそらくこの行動に関しては、よく言う「やりたいことは他人に話して後戻りできないように自分を追い込め」と言ったことではなく、ただただおしゃべり好きが高じてということかもしれないが、結果としてその流れに背中を押されて突き進まざるを得なくなる人が少なからず周りにいることは確かであろう。
ある意味僕もその一人だった。
この時点では僕はまだこの小学生英会話教室に関しては前向きに検討していたとは言えなかった。
しかし、この時のお母さんたちの反応を見た時、僕の心に変化が現れたのだった。
そして、ひとまず軽い自己紹介をした僕はとっさに、詳細はまたチラシを作って来週までにはお渡ししますと伝えた。
そう、僕は軽く後には引けない発言をしたのだ。
そしてそのお母さんたちが帰った後、昭彦先生がこう話した。
「今のお母さんたち本当に英会話教室来てくれますよ。あと、数名もう来たいって言ってくれてる人がいるんで結構集まりますよこれは!絶対楽しいですよGeshi!!」
何だがいろいろすでに話が進んでいるように感じた。
僕が考えている間にその後ろで事が進んでいる。
昭彦先生のコミュニケーション能力は確かに高い。
この人がいるこの幼稚園で3年間お世話になり卒園した子供達の親御さんは、きっとこの幼稚園への思い入れが強くなり、信用も高い。
その園で引き続き英語教室が行われるとなれば、確かに他の英語教室に通うよりもすでに好条件がそろっていると考えてもおかしくないかもしれない。
ここは日進まこと幼稚園という土俵と、昭彦先生の営業力にかけてみるか。
そんな気持ちも湧いてきたのだ。
もちろん僕自身も英語を教えることに間しては自信があった。
これまで行ってきた自身の経験から、どのようにすれば英語が伸びるかは実証済だ。
なんだかやる気が出てきている自分がいることに気が付いた。
他力本願かもしれないが、あれよあれよという間に勝手に進んでしまっているというのももしかすると運命なのかもしれない。
この流れに乗ってみるのもありかもしれない。
よし、言ってしまったからにはチラシを作ろう。
そしてチラシに乗せる内容、つまりレッスン内容や時間や月謝なども早急に考えなければいけない。
しかも期限は一週間以内だ。
果たして出来るのか?
いや、やるんだ!
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