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【2021年本屋大賞ノミネート作品#4】『八月の銀の雪』伊与原新

中学生のときの塾でだったか、手も足も出ないような難しい問題に出会うと、その問題を食い入るように見つめて俯いてしまう私に、先生が「物理的に下を向くと、わからないわからないとどんどん視野が狭くなって、ますます何も思いつかなくなってしまう。一度目線を上げて落ち着こう。非常に難しい問題というのは、みんなわからないものだよ」と声をかけてくれたことがある。

試験問題に限らず、迷ったり悩んだりしたとき、その対象ばかりを見つめてしまいがちだけれど、目線を少し上げて、世界の広さを思うことで救われることがある。

この本は、科学の視点から世界の広さを教えてくれる。

科学の視点から人の気持ちに寄り添う

コンビニ店員のベトナム人留学生と就活に苦戦する理系大学生の交流を描く表題作をはじめ、科学の視点から人の気持ちに寄り添う短編が5つ収録されている。

不安を感じながら一人で子育てをする人や夢を諦めざるを得なかった人。自信を持てない人たちに、本書は静かに優しく語りかける。全体の空気感がとても好きだ。

科学についても、地球内部のことや生物など、様々な内容が含まれており、どれも興味深かった。

私が日常の小さな出来事に心を煩わせているときも、宇宙や海はありのままの姿で存在しているのだなと思うと、もう少し頑張ってみようかなと素直になれる気がする。

世界は広い

たまには締切が近い仕事のことや周りの人たちのことだけでなく、宇宙や海のことに思いを馳せたいと感じた。

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