化粧
私は、濃い化粧が苦手です。
濃くしたくなる理由は、分からなくはないです。見た目の良し悪しは、社会的な評価や、対人関係に大きな影響を及ぼすでしょうし、化粧をすることで見た目のコンプレックスから開放され、自信を持って生活できるようになるということもあるでしょう。
ただ、やっぱり濃い化粧は苦手です。
それは、その人の本来の姿を隠すものだと感じるからです。ただでさえこの世界は嘘にまみれています。その嘘を見破り、本物を手に入れるのは、非常に骨が折れる作業です。私は日々、その作業に追われているのです。
私がこの作業に追われる理由は、将来、本当のことに気がついたときに、絶望したり、後悔したりしないようにするためです。意味があると信じて長年やっていたことが無意味だったと感じたときの衝撃は想像することすら恐ろしいです。
人間も同じです。死ぬまで、その人の、化粧をバッチリ決めた姿しか見ないのなら問題は無いですが、長年付き合えば、それも、親しければ親しいほど、そうでない姿を目にする可能性は高まります。
私は怖いのです。その瞬間が。今まで見ていたものは嘘で、信頼していた自分の”人を見る目”が、節穴だったということが判明する瞬間が。その恐怖が大きくなりすぎて、最初からその関係を持ちたくないとすら思うこともあるのです。
だから私は、親しい人には、薄い化粧でいてもらいたいと思うときがあります。薄い化粧の人と親しくなりたいと思ったりもします。もちろん、いろいろ事情もあるでしょうから、決して強制したりはできませんが。
ビリー・ジョエルの曲に「素顔のままで」という曲があります。
私は、親密な関係はその地点からでないと始められないと感じているのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!