見出し画像

前園真聖が語る「否定的なアドバイスをくれる人を大切にしよう」 #5 第二の人生

元人気プロサッカー選手で、現在は解説者やタレントとしても活躍している前園真聖さん。しかし一見、順風満帆に見える前園さんにも、かつてある挫折がありました。著書『第二の人生』は、世間を騒がせた「あの事件」から、執筆当時までの思いを正直に告白したエッセイ。意外な素顔が垣間見える本書から、内容の一部をご紹介します。

*  *  *

ポジティブに自己否定しよう

現役時代にもメンタルが大事だというのはわかっていましたが、その当時はメンタルトレーニングが主流ではありませんでしたから、何をどうしたらメンタルが鍛えられるのか、皆目わかりませんでした。

画像1

いまになって思うのは、強いメンタルを身につけるためには、他の誰かにコーチングを受ける以上に、自分で経験や失敗を積み重ねていくことが重要だということ。

どんなメンタルトレーニングよりも「オレはここがダメなんだ」と経験や失敗を踏まえて自分の弱みを素直に認めることが大切なのです。自尊心が邪魔してそれができないと、メンタルも強くなれないのだと思います。

僕は事件がきっかけとなって「いまのままではダメだ」と自分に本気でダメ出しができましたが、その道のプロとして長い経験を持っている人にはプライドがあり、「オレはプロの世界でやってきた」という自負が強すぎるため、弱さを認めるのをためらうケースが多いと思います。

プライドがないと第一線でプロとして活躍できませんが、第一線を退いてからも捨てられない昔のプライドは邪魔なだけです。スポーツ選手が現役を引退して他の分野に活動の場を移しても、必ずしもうまくいかない理由はそこにもあると思います。

かく言う僕も現役のときには自分にダメ出しできなかったと思います。メンタルがすべてを左右しますから、ダメだと思ったら本当にダメになりますし、仮にダメでも「オレはまだ全然イケている」と自信を持たないとプレーにも悪い影響が出ます。ちょっとでも弱気になると、たちまちプレーが消極的でつまらなくなるのです。

では、どうすれば良いのでしょうか。

「オレはダメだ」で終わらず、ダメならダメなりにそれを乗り越えるためにどうするかを考えることが重要になります。失敗体験をいつまでも引きずっているとうまくいきません。

そこは難しいところです。失敗と経験を糧として自分にダメ出ししないと次のステージに向けて脱皮できないけれど、自らを否定しすぎると次のステージに行くモチベーションが落ちてしまいます。

ですから、ネガティブに自己否定するのではなく、「次に行くためにいまの自分にいったんダメ出しするのだ」とポジティブに自己否定するのが理想です。

否定的なことは誰も言ってくれない

過去を引きずるタイプだと難しいでしょうが、僕は引きずらないタイプなので、あの事件でポジティブに自己否定して次のステージに行けたのかもしれません。

画像2

サッカー選手として迷走が続いていた頃、周囲に「こうすれば良くなる」という肯定的なアドバイスをしてくれる人は大勢いました。でも「お前はアトランタがピーク。いまのお前は違うから目を覚まして謙虚になれ」と言ってくれる人はいませんでした。

ひょっとしたら強面キャラが災いして、周りの人たちも否定的なアドバイスがしにくかったのかもしれません。

相手が傷つくかもしれない直言は容易にはできませんが、自分でダメ出しができないとしたら、周りにそんな直言をしてくれる人がいないとダメだと思います。

「頑張れ」「いまが辛抱だぞ」という応援の声はかけてもらえる機会は多いのですが、勇気を持って「このままじゃいかん。もう切り替えていかないと次のステージへ行けないぞ」と否定的な助言をくれる人はまずいません。

もしそんな声をかけてくれたとしたら、それはあなたを心から思ってくれている証拠。「良薬は口に苦し」でネガティブな助言は胸にチクッと来るものですが、それをあえて指摘してくれるのは根底に愛情があるからです。

チクッと来るアドバイスをもらったら、まっさらな気持ちで自らを見つめて考え直してみてください。そうすれば進むべき道が見えてくるかもしれません。

◇  ◇  ◇

連載一覧はこちら↓
第二の人生 前園真聖

画像3


紙書籍はこちらから

電子書籍はこちらから

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!