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禅に学ぶ「美しい人」をつくるモーニングルーティン

禅僧、庭園デザイナー、多摩美術大学教授などの肩書を持ち、『ニューズウィーク』日本版の「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれた枡野俊明さん。『禅が教えてくれる美しい人をつくる「所作」の基本』は、姿勢、呼吸、言葉、朝の時間、感謝など、枡野さんの勧めるちょっとした心がけが詰まった一冊です。実践すればきっと「いいこと」が起こり出す、そんな本書の一部をご紹介します。

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少しでも「掃除」をする

「一掃除二信心」。読んで字のごとし、まず、最初にやるべきことは掃除である、信心はそれがすんでからのことだ、という意味です。これは禅の思想を象徴する考え方です。仏様に手を合わせたり、坐禅をしたり、お経をあげたりすることよりも、掃除をすることがいちばんだなんて、不思議な気がするかもしれません。

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しかし、掃除をすることはじつは深い意味を持っているのです。みなさんも掃除をしたあと、綺麗になった部屋のなかに立って、「ああ、気持ちがいい」と感じたことがあるでしょう。

塵や埃がすっかり拭われて、身辺が整うことは、心を整えることに直結しています。心にも塵や埃がつもります。その代表的なものが悩みや迷い、不安や欲望といったもの。ひと言でいえば煩悩ということになりますが、美しい生き方を邪魔するのがこの煩悩なのです。

一心に掃除をしていると、心の塵や埃が剥がれていきます。やり終えたときの爽快感やさっぱりした気分は、塵や埃が消え去ったからこそ、もたらされるものです。

朝にもっともふさわしいのが、そんな整った心の状態。そこで、朝、五分でいいので掃除をすることを奨めたいのです。その日ごとに掃除をする場所を決めて、今日はキッチンの流し台、明日はレンジ、明後日はトイレ、その次は玄関……というふうにすれば、五分でも十分綺麗にすることができますね。

掃除をしている間は、拭くこと、磨くこと、掃き清めることに専念して、何も考えないことです。一週間とか一〇日単位で主だった箇所の掃除が終わるローテーションを組めば、ひとめぐりすると部屋全体が綺麗になります。

この“五分掃除”は続けることが大事です。部屋を綺麗に保つことは、いつも整った心でいること。怠ったら、塵や埃はどこからともなく心に舞い降りてきます。ぜひ、綺麗な習慣を身につけましょう。

テレビをつけずに過ごしてみる

朝めざめて布団やベッドから起きたら、最初に何をしますか?「真っ先にテレビをつける」という回答が、かなりを占めるのではないか、と私は思っています。

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ほとんどの人が、番組を観るというより、時計代わりにテレビをつけているのではないでしょうか。画面の隅に表示されている時間をチラチラ確認して、「そろそろ食事をすませなきゃ」「着替えを急がなくちゃ」「あと二分で出ないといつものバスに乗り遅れる」……。毎朝、そんな光景が繰り返されているのではありませんか?

その結果、食事も着替えも、何もかもが“ながら”になってしまう。食事を考えてみてください。「喫茶喫飯」という禅語を紹介しましたが、テレビを観ながらの食事では、食事とひとつになるどころか、間断なく送られてくるきれぎれの情報を、せわしなく“つまみ食い”することになる。これでは、ただ機械的に料理を口に運ぶだけの、心ここにあらずの味気ない朝食です。

朝の時間はテレビをオフにしましょう。そして、食事も、着替えも、準備も、朝やるべきことのすべてを丁寧に、心を込めてやってください。

すでに早起きが習慣になっていて、時間に余裕があったら、簡単な体操やエクササイズで体を動かしたらどうでしょう。一日の活動の絶好のウォームアップになりますし、いい汗をシャワーで流せば、仕事に向けた完璧な臨戦態勢が整います。どうしても観たい番組がある人は、それらすべてをすませてから、と決めて行動すれば、朝のリズムが乱れることはありません。

実際、テレビを消して一連の朝の行動をしてみると、テレビをつけたまましているときより、格段に時間が短縮されることに気づくはずです。

朝の時間がひときわ忙しく感じるのは、ついテレビに意識がとられ、一つひとつの動き、所作が無駄の多い、緩慢なものになっているから。朝は、ダラダラではなく、キビキビが美しい……ですね。


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