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これからの計画論の条件(12)参加型デザイン論:デザインシンキング・リビングラボ

12.参加型デザインとしてのデザインシンキング
 これまでどちらかというと、一般的な参加型計画論を述べてきましたが、もちろん、イノベーションを強調した参加型デザインとしての、アメリカのIDEOによるデザインシンキングや、北欧型のリビングラボも、こうした新しい計画論の重要なツールとして役立てることができます。これらに蓄積された、様々なノウハウによる、参加者を巻き込んでプラン・デザインを作って集約していくプラグマティックな方法論は大いに学ぶところがあります。(むしろ、この参加型デザインのルーツというか共通の土台を議論をするためにこの「これからの計画論の条件」をまとめてきたというのが、本当のところです。)
 こうした類のメソッドや教材、はてはアプリまで、とにかく世にあふれているので、いちいちここで説明はしません。(グーグルのアプリでDesign Sprintというのがあって5日間で高速プロトタイピング+検証を行うものがありました。1日ごと時間ごとに10分単位で何をやって何を決めるかが細かく決まっていて、なかなか面白かったですが、外人がそんなグループセッションをまじめにやっているところを想像すると、なんかアプリの開発者のシニカルなジョークのようにも見えてきました。)
 ただ、これらのイノベーション系参加型デザインは、課題に対してとにかくイノベーションや、新しいアイディアを出すことに重点が置かれているようですが、実際の社会課題の解決は、イノベーションというより、施設の削減とか辛気臭いテーマが多いので、それに対して、各ステークホルダーの妥協と納得のうえでじりじりと合意形成をはかっていくという、まあ組合交渉のようなしんどい方法論を必要とするということだけは言っておきたいと思います。
 そして、そんなにイノベーションが存在するのか、そもそもそんなにイノベーションが必要なのか、みんな頭を少し冷やしたほうがいいのではないでしょうか。「毎週月曜日ごとに革命はおきないよ。」とミース・ファンデルローエは言ったそうであります。


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