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【vol.025・本紙未掲載インタビュー:01】

【偏見を感じた場面】


g:竹内さんが感じられた偏見というのは、具体的にどんなものでしょうか。

竹内:印象的に残っているのは、ハローワークの支援員の方ですね。就労移行支援事業所に通っている中で、今後どういった形でお仕事についていくのかを考えていた時期に相談に行ったんですけれども、言われて印象に残ってるのが「障害者雇用でなんて働くもんじゃないよ」という風に言われまして。 「そんなところで働いてしまうと、もう一般雇用に戻ることはできない」と言われてしまったんです。それは偏見だと思っていて。
「一般雇用で働きたくなってもその時に戻れない」というのが、障害者雇用は比較的業務内容が優しかったりして、それに慣れてしまうと一般雇用に戻る時にハードだよ、という意味でのことなのか、あるいは障害者雇用で一度働くと障害者というレッテルがついてしまうので、 そうなると職歴的にもう障害者なんだということで、一般雇用で働くときに弾かれてしまうよ、という意味なのかも意図として不明瞭な部分はあるんですけれども、いずれにせよかなり障害者雇用、障害者に対する偏見のある発言だな、と感じたのと同時に、ハローワークは国で運営している施設なのに、そこで働いてる方、職を求めている人に対してサポートする立場の方が、そういった偏見を持っているのは割とショックだったんですよね。 本当に大きな偏見を持ってる人もいるんだなという、結構自分の中でも印象的なひとつのエピソードになりますね。

g:時期的にはいつごろの話ですか?

竹内:就労移行に通っている時期ですね。就労移行の方に勧められて障害者手帳を取ったんですけど、手帳を持つメリットであったり、手帳を持っていると障害者雇用があって、障害者雇用にはこういうメリットがあってとか、諸々聞いた上で自身の判断で「取っておいていいものなのかな」と考えて手帳を取りました。その段階ではまだ障害者雇用でいくのか、あるいは一般雇用で行くのかは完全には決めきれていなかったので、ハローワークで「一般雇用と障害者雇用それぞれで見てるんです」というお話をしたところ、そういった反応が支援員の方からあったと記憶してます。

g:その他にも、偏見を感じる場面は何かありましたか?

竹内:より過去に遡ると、うつ病の診断が下された当時、大学卒業して間もなかったので、まだ繋がっていた大学時代、高校時代の友達に「今仕事に行けてないんだ、うつ病なんだ」と話した時には「うつ病になったらもう治んないんでしょ」「もう詰んじゃってるよね」と言われましたね。「そんな面倒な病気になって、お前は人生の遠回りをしている」とも言われました。結構心ない言葉をいろいろ言われて、そういった友人とはもう関係を絶っちゃってるんですけれども。
「うつ病は1度なったら治らない」というのは、確かに理解としてはうつ病とか心の病気には完治というものがない、寛解という表現で、長期的に安定している状態を目指していく、というのが医療の方針としてあると思うんですけど、ただ彼らの発言は「完治じゃなくて寛解なんだよね」というニュアンスではなくて、「もうずっと一生苦しんでいくものなんでしょ」みたいなニュアンスで言われたので、それもひとつの偏見だと思います。
当時自分が病気になったので、いろいろとうつ病になった人の予後というか、今後一体どうなるんだろう、みたいなことをいろいろ調べていたので、しっかり向き合って安定した状態になって、一般雇用や障害者雇用で仕事復帰されている方がたくさんいる、と知っていたので。やっぱり病気について知らないからこそなのかもしれないですけど、同世代の当時の友達とかはやっぱり偏見を持っているんだなと思いましたね。

g:自分なりに病気について調べ、病気になっても寛解を目指していけばいい、何も思うようにならないということはない、という認識を持っていたのに、病気について知らない人から心ない言葉をかけられて、偏見を持たれていると感じたんですね。

竹内:そうですね。私自身も病気になる前は精神の病気について、 深く考えたことはあまりなかったんです。実は身近な人の中にも強いストレスで体調を崩してしまった人がいたので、難しい病気だなという印象は持っていましたけど。
(次回に続きます)


確かに自分がそうなってみないと、なかなか具体的に考える人はあまりいないかもしれません。誰がなってもおかしくないと言われているにも関わらず「うつは他人事」だという人の方がやはり多いでしょう。
ハローワークの支援員ですらも偏見を持っている状況の中、ご自分が当事者になってみて、偏見を解消したい、病気について皆に幅広く知ってほしいという思いで、竹内さんはこの取材を受けてくださいました。竹内さんの経験や思いをこの記事を通して知ることで、きっと役に立つ時があるだろうと思います。


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