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足し算の美学に満ちた未完成芸術!! 「君が君で君だ」感想


 「アズミ・ハルコは行方不明」「アイスと雨音」の松居大悟監督が、池松壮亮主演で描く異色の恋愛映画の特別試写会に参加させて頂きました!

とにかく特濃な”純愛”と”偏愛”がぎっしり詰まった作品でした。

最近、邦画は話題の「万引き家族」を筆頭にレベル高いですが、本作もなかなかの怪作にして快作で楽しめましたので、がっつり感想とおすすめポイントを皆さんにご紹介致します。

※試写会感想ですから、話の本筋や核心に触れるネタバレは一切致しません!

基本情報
監督・脚本・原作
松居大悟
出演者 **
**尾崎豊
:池松壮亮
姫(ソン):キム・コッピ
プラピ:満島真之介
坂本龍馬:大倉孝二
宗太:高杉真宙
友枝:向井理
星野:YOU
**
製作**
間宮登良松
吉崎圭一
前嶋宏
プロデュース
阿部広太郎
撮影
塩谷大樹
音楽
半野喜弘
美術・装飾
遠藤善人
制作会社 **
レスパスフィルム
**配給

ティ・ジョイ
**公開 **
2018年7月7日
**上映時間 **
104分

「あらすじ」
大好きな女の子の好きな男になりきり共に暮らす三人の男達。彼らは自分の名前すら捨て去り、10年間生きてきた。彼女のあとをつけて、こっそり写真を撮る。彼女と同じ時間に同じ食べものを食べる。向かい合うアパートの一室に身を潜め、決して、彼女にその存在をバレることもなく暮らしてきた。しかし、そんなある日、彼女への借金の取り立てが突如彼らの前に現れ、3人の歯車が狂い出し、物語は大いなる騒動へと発展していく——
(公式HPより引用)

シーンを重ねるごとに異なった”味”を楽しめる展開が素晴らしい!

 本当は、前評判なしで(こんな映画かなあ)と思いながら観るのが、良い意味で裏切られまくって最高にエンタテイメントなので、いきなり観て欲しい!そのくらい意外性は抜群だった。

※そっちの方が、楽しめる方はぜひここで読むのをやめ劇場へ!

 序盤のうちに、「ああこれはこういう映画なんだ」と観る方向性を整えてくれるのが親切な映画だと思う。

ホームアローンなら、子供ケビンが最初の鮮やかな罠で泥棒達を出し抜き間抜けな泥棒の姿を見て「これは勧善懲悪なコメディアクション」と理解し、素直に笑い、ハラハラする事が出来る。

 突然ケビンが別の組織にさらわれて警官隊が救出するサスペンススリラーアクションに変わったりはしない。
 家にドロボウとは別の何かが入り込んで恐怖のどん底に叩き込むホラーにもならない。

そうなってしまったら、巧妙で痛快な罠やセリフの良さがブレて素直に入り込めないだろう。

 色んな要素が詰まっている作品は時として、何にもならないのだ。
パスタを作ろうとして醤油味なら和風だが、そこにオリーブオイルとミートソースを投入してしまったらもはや何味でもないゲテモノに成り果ててしまうようなもの。

 はてさて本作は、その点で見ればひどく不親切な映画である。
「ああこういう映画なのか」の予想はことごとく裏切られる。
104分間通してずっとだ!だがゲテモノではない。

むしろめちゃくちゃ面白い!強烈で、上手い!!

一体何がどうして、こんなに幾つもの切り口から”良さ”が溢れでてくるのか。

 ”多くのテーマが混在してるのにゲテモノになっていないのはなぜか?”

 色んな要素が詰まっているのにゲテモノでないもののことを次は話そう。

例えば、白玉クリームあんみつ。
”和×洋×フルーツ”という欲張りさんアイテムだがこれは多数掛けの王道メニューである。
他にも、ゲームFGO(fate grand order-フェイトグランドオーダー-)。
数多の英霊達の節操のなさ!
(英霊とは現実世界で過去実在していた(あるいは有名な伝説的)偉人の事。彼らとマスター(主人)とのタッグドラマがとにかく燃えるのがフェイト)

多くの要素が詰まっていながら、成功しているものには特徴がある。
それは、足し算(掛け算)の美学であり、完成させない美学だ。

引き算の美学に、完成形として洗練された美しさが漂うなら、足し算品にあるのは意外性と、組み合わせと積み上げで生まれる科学変化だ。

次に何が出てくるのか分からないドキドキとワクワクは、癖になる。
そして、どんどんと積み上げていくと景色が変わっていく。

本作の主人公達(ただのストーカー)が、まるで途中から守護霊のように見えてくる。
幾重にも重なる想いと時間のレイヤード(層)がその変身を可能にするのだ。

映画「君が君で君だ」はそんな足し算の美学に満ちた作品。

まとめ(というか補足)

ネタバレ回避の意味もあり、構成的な面白さを語りましたが中身は冒頭書いた通り濃厚で型破りな「愛」「愛」「愛」のオンパレードです。
ぐちゃぐちゃで、無様、それでも「愛」というものを一言で語るな。

そう言われているような気がしました。

言葉にできない思いがたくさん出てくる作品だから、観たらぜひ
言葉にできる人はしてほしい作品。


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