大同にみる太陽光発電 by 高見邦雄(GEN副代表)
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中国のエネルギーといえば石炭のイメージが強いのですが、再生可能エネルギーの開発にも力を入れています。今回は以前の協力地、大同の太陽光発電をみることにいたします。
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2024年8月25日付けの日本経済新聞・日曜版が、「中国、脱炭素で『一帯一路』」というミニ特集を組みました。中国企業の太陽光パネルの生産能力は21年で世界の75%、風力発電機のメーカーでも、23年の世界の上位10社のうち6社(5位までの4社)を中国企業が占めたというのです。
風力発電の現場がどうなっているか、私は緑化協力の現場近くでみるようすをこれまで報告してきました。今回は太陽光発電のそれをみてみましょう。
大同市大同県(現雲州区)の党留庄郷のあたりは塩害の厳しいところです。十数万年前まで大同湖という大きな湖があったそうで、一帯のなかで低いのです。低地に水が集まり、そこで蒸発すると、だんだん塩がたまり、春先は土地の表面が白くなります。塩といっても塩化ナトリウムではなく、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの炭酸塩が中心で、なめてみるとなんともイヤな味がしたものです。
ふつうに作物を植えても育ちません。ポプラよりは塩害に強いといわれるヤナギを街路樹として何度も植えましたが、成功しません。わずかに生える草を放牧のウシやウマが食べています。農業には適さないのです。
20年余り前、ここは交通の難所でした。大同から渾源に抜ける交通の要所ですけど、資金と技術の関係で舗装が弱く、石炭を満載した大型トレーラーがそれを破ってしまいます。グジャグジャになったところで、私たちのバスもタイヤをとられ、みんなバスを降りて、後ろから押したものです。
地下水位が高く、すぐ下に伏流水があるため、こんなことになってしまいます。工業用地としても従来は役に立たなかったのです。
そのうちに基礎にしっかり鉄筋を埋め込み、コンクリートを厚く打って丈夫な道路に改良されました。並行して高速道路が開通し、私たちもこの地道を通うことはなくなりました。
10年ほど前、私の気まぐれで地道を走ってもらうと、道路近くに光るものがあります。車を近づけてもらうと、なんとメガソーラー。ものすごい数です。なるほどこれはここの塩害地にもってこいですね。地盤のゆるさは問題になりません。草もさして伸びず、ジャマになりません。雨が少なく、雲もかからず、高緯度で(夏は)日照時間も長い。太陽光発電にはもってこいでしょう。
日中経済協会の元理事長、清川佑二さんとそれをみながら、「こういう荒れ地や貧しい地域をかかえていることが中国の伸びシロかもしれませんね」などと話しました。
日本に帰ってから、その場所をGoogleEarthで探してみました。えーっ、私たちが現場でみたのは、公道のすぐそばだったんですけど、それは一帯のメガソーラーのほんの一部で、しかも小さな固まり。大きな一角は250ha以上もあり、それは道路から少し離れています。
そこから少し東に大きな絵が見えます。ソーラーパネルには黒いものと白いものとがあるようです。黒と白とで描けるものはなにか、パンダです。そう、パンダの大きな絵が描かれているのです。それにしても、いったい誰に見せようというのでしょう。
これについて日本経済新聞のウエブサイトに記事が掲載されていることを前中久行さんに教えていただきました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO18961350Y7A710C1000000/
大同は煤都(煤は石炭)と呼ばれ、石炭の一大産地で、大同第二発電所(火力)は発電した電力全量を北京に送り出していました。いまこの党留庄郷で大きな発電所を建設中で、やがては第二発電所に代わるものになるようです。