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植物を育てる(25)by立花吉茂

ドングリを育てる
 本紙93号、植物を育てる(24)でドングリの発芽のタイプについての実験
データをご紹介した。ここでは温度と発芽の関係をご紹介しよう。
 ドングリには常緑生のシイの仲間とマテバシイの仲間とがあり、カシの仲
間には落葉性と常緑性の種類がある。日本語のカシ(樫)は紛らわしいので、落葉性はナラ(楢)、常緑性はカシ(樫)と呼ぶことにする。
 ナラの方は熟して落ちたらすぐに発芽するが、カシの方は春まで発芽しな
い。そこで人工的にいろいろな温度条件を作って発芽させてみた。

実験の結果
 [5℃±3℃]ではナラグループだけが発芽し、カシグループは翌年になっても発芽しなかった。常緑性のカシ類はやはり暖かいところの植物だけに5℃という低温では生きていけないもののようである(図1)。


 [10℃±2℃]ではナラグループは調子よく高率で発芽したが、カシグル
ープは50 %以下しか生えなかった(図2)。


 [20℃±2℃]ではナラグループは素早く発芽したが、カシグループは
30%以下しか生えなかった(図3)。


 [30℃±2℃]ではカシグループはほとんどが腐敗して生えなかった(図4)。


 [夜間10℃~昼間20℃]の変温区ではいずれもよく発芽し、ナラグループは年内に、またカシグループは翌春に生え、自然状態と同じ結果になった(図5)。


考察
 ナラ類は自然状態では、落下したらすぐに発芽するが、カシ類は翌春に発
芽する習性がある。この実験でもすぐに発芽するナラ類は温度には関係なく
生え、春まで休むカシ類は温度の低い冬に高温であると腐ってしまうことを
示唆した。夜間低温で昼間高温になる条件は、20℃程度なら両グループとも
に発芽に具合がよいらしい。
*ドングリ類は、乾燥すると死んでしまうので最後まで保湿が必要である。
(「緑の地球」94号 2003年11月掲載)


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