植物を育てる(17)by立花吉茂
種の多様性
前号で種の多様性を作り出す植物の巧妙な作戦のうち、雌雄異熟や異型蘂について書いた。今回は雌花・雄花や間性花、退化オシベなどをもつ植物に登場願うことにした。
花の雌雄
人間のように雌雄が別々の植物を雌雄異株といい、一株の中に雌花雄花が混在するものを雌雄異花という。また一花中に雌雄があるものが完全花で、これが一番多い。完全花は両性花ともいう。両性花はいいが完全花というのは、前号で述べたような雌雄異熟などあって決して完全とは思えない。このほかに間性花がある。雌とも雄とも言い難い花で、細かく観察すると雌性間
性花と雄性間性花とがみられる。ホウレンソウのようにもともと雌雄異株
だが、雌性間性株と雄性間性株をもつものもある。
雌性間性花
この花は通常は雌花と思われているが、花をよく観察すると退化した雄花の痕跡が残っており、まれには花粉の出る場合がある。その花粉が生きていれば受精能力がでてくるわけだが、無能花粉の場合もある。
シナヒイラギモチという植物はわが国には雌株しか渡来していないにもかかわらず、結実して発芽する種子をわずかながら産出するので不審に思って調べたら、まれに有能花粉ができることがわかった。
柿には800もの品種があるが、一般の品種は雌花だけをもつものが多い。しかし、野生のヤマガキ(山柿)は、両方もつ株が多く、まれに雄花だけしかもたない株も見られる。面白いことに雌雄の花をもち、間性花もあわせもつ株があって、さらに雄性間性花と雌性間性花とがあり(図)、
雌花には大きい果実が実り、雌性間性花が小さい実をつけ、大小2つならんで結実するので夫婦柿と呼ばれるものがある。雌性間性花の果実は種子が発芽しないが、雌の果実の種子は発芽して変化のある子孫を残した。これも進化と多様性にからんだ現象と思われる。
(「緑の地球」86号 2002年7月掲載)
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