感動した結婚式の余興。
私ね、基本的に、結婚式において、芸人を呼んだり歌手を呼んだりっていうのは好きではないんですね。
まあ、結婚する本人たちが呼びたいんだから、別に何をどうこう言うつもりもないわけですが、一生に1回(基本的に)の結婚式で、せいぜいが2、3時間しかない披露宴において、「赤の他人が入ってくるのってもったいないんじゃないの?」ってことを思うタイプであるわけです。
だったら、下手だとしても、新郎新婦の友人たちや、親戚のおっさんとかに歌でも歌ってもらったほうがいいんじゃないの?って。
で、たまたまYoutubeに流れてきた、「タクヤナガブチ」というモノマネ芸人が披露宴に呼ばれた動画を見てたんですね。
この人、歌もギターも喋りも、長渕に似すぎていて、逆に全然面白くもなんともないので、「テレビとかでは使いにくいだろうなあ・・・w」って思われる感じの人です。
で、チラッと見て、「やっぱ似ているよなあ・・・。」って思いつつ、時間を見たら30分くらいやっており、「いくらなんでも時間取り過ぎだろ?一体、最後、どうやって締めたんだ?」ってことが気になったので、最後だけ見ようと飛ばしたら、何故か絵の図柄が変わって、野郎たちがノリノリになっている。
え?なに?って思ってちゃんと見てみたら、新婦のお父さんが長渕の「桜島」という歌が好きだそうで、そのリクエストに応えて最後に歌ったわけですが、その披露宴が行われている場所が、鹿児島湾から桜島を一望できるザ・ベイスイート桜島テラスっていうホテルで行われていたそうなんですね。
で、その「桜島」という歌は
「錦江湾に陽が沈み 海が赤く血の色に燃え始める」
っていう歌詞で始まるわけですが、その瞬間に高砂の後ろのカーテンがバーっと引かれ、海の向こうの桜島が広がり、新婦のオヤジ(多分)が踊りだすw
これ、全く知らなかったんですが、「鹿児島湾」のことを地元の人は「錦江湾」と呼ぶそうなんですね。
でね、長渕がデビューしたのが1975年で、売れ始めたのが1980年くらいだそうなので、当時20才の人でも60才になっている計算になるわけです(というか、長渕自身が64才ってことにビビったw)。
なので、70才くらいまでの人には普通に長渕のファンはたくさんいて、鹿児島や桜島のことをたくさん歌っている長渕剛のファンは地元にはたくさんいることでしょう。
現状、日本のアーティストでメチャクチャに売れてトップにいるような人で、地元のことを頻繁に歌うのって、長渕とサザンくらいのものじゃないでしょうか?
他にいます?1曲、2曲ならまだしも、何曲も何曲も地元のことを歌う売れたアーティストってほとんどいないよね。
となると、鹿児島の人達にとっての長渕の歌は、かなり思い入れが違うものである可能性が高いし、元々、極めて熱狂的なファンが多い長渕ですから、盛り上がり方も別腹感があるのでしょう。
とにかくね、結婚式が2人のものでありその2人を多くの人にお披露目するものであるのと同時に、その2人を育てた家族や親戚の祝いとしての祭りの場であるのならば、この余興はとても素晴らしいものであると思ったんですね。
私がこの歌の余興に感動したのは、「桜島」という自分たちの故郷の象徴みたいな場所の前でかわいい娘を送り出し、そこで自分たちの故郷のことを歌った歌を、多くの人と共有できて、それを祝いの歌として歌えている、ってところです。
私は東京の江戸川区で生まれ育ったわけですが、1970年代、80年代の江戸川なんてクソ田舎もいいところで、高い建物なんてのは小学校・中学校が精一杯で、近所の川の堤防は舗装もされておらず、近づけばサワガニがザザザザザッッッと逃げる音がして、秋にはすすきが揺れ、トンボが飛び、服にはトゲトゲの植物の種が「嘘だろ?」ってくらいに付いていて、土手に登れば真っ赤な夕焼けが広がり、天気がよければ富士山や東京タワーが普通に見えていた場所でした。
「故郷」って意味では、美しい思い出しかないんです。実は。東京だけど。
でもね、私には、私達には、共通の歌なんてものがないんですね。
江戸川のことを歌った歌で、みんなが知っていて、みんなが好きで、それを大きな声で、歳の離れた人達ともいっしょに歌えるような楽曲なんて皆無なんです。
だからねえ、桜島を見ながら、桜島のことを歌った歌を娘の結婚式で歌えるのって、本当に素敵だなあ、って思ったんですね。
気にしない人は気にしないでしょうが、「生まれ育った場所の影響」というのは結構あって、私は、昔、ヨーロッパを回った時に、山や海や川なんかも行きましたが、「川にいる時」にやたらと落ち着くことに気づいたんですね。
ドナウ川を始め、テムズ川、セーヌ川、テヴェレ川など、主要な街のそばにも川が流れているわけですが、そこにいる時が1番落ち着くし、観光なんてしないで河原にいることも結構ありました。
ロンドンなんて10日くらいいたのに、大英博物館なんて1度も行かず、ほぼ毎日、ビッグベンを向こう岸に見渡す川の堤防でボーっとしてました。
海が嫌いなわけでもなく、山が嫌いなわけでもない。
ただ、川がゆっくりと流れている場所にいることが、なんとも心地よいんです。
そういう、「故郷が与える影響」というものは、多くの人が多分に持っているものであり、故郷をいつも抱えていられる人が、歌と共に祝を祝える、ってのは、本当に素敵で、羨ましいなあ・・・、って思ったんですね。
羨ましい。
海があって、山があって、歌がある。
羨ましい。
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