見出し画像

庭の荒野を開墾する

なぜ庭が荒野に

過去10年ほど母を介護していた。そのうち最後の5年は、母が尾骶骨付近を骨折して、寝たきりになった。母の生活空間は2階で、介護士が来たとしても階段を降りて入れることができない。もちろん、介護や調理もできない。間が悪いことに、コロナの流行が始まったばかりで、病院に入れても養老院に入れても、母の顔さえ見にいけない。しかも認知症が進み始めているので、誰も話しかけなかったら僕のことも忘れてしまうかもしれない。極め付けは、病院の医者が母の入院中は何の治療もしないし、リハビリもないと言う。食事をさせてたまに検査をするだけなのだ。僕にとってはたった一人の親なのだからと抗議したら、僕が介護士の力を借りながら家で介護をしたらなんとかなると言われたので、結局母の家に泊まり込んで介護することにした。寝たきりといっても、トイレに立つことはできないことはない。でも、廊下で転んだら立ち上がることができないと言う都合悪く中途半端な状態だ。自由に運動したり外に出たりもできなくなり、朝も晩も寝室に母の様子を見にいく生活が5年ほど続いた。

骨折する前も、母の腰の矯正をしに頻繁に通っていたし、ほぼ十年間庭が放置されることになった。庭師に見積もりを頼んだらとんでもない金額になったので、とりあえず庭は僕ができる限り回復させて、伸び過ぎた木々は枝だけを僕が切り落としてあとは切り倒してもらうことにした。

僕たちにとっての庭

母が若い頃は、忙しい中で見事なまでに庭をきれいにしていた。でも土が硬くそのままでは何も植えられない。花を植える場所には鶏糞や牛糞、腐葉土などをあしらい、肥料も与えながら大きくする。草を全部刈り取って、土が痩せる原因を作っておいて、足らなくなったものを全て園芸店から買ってきて補うのはどうにも理解できなかった。

アメリカから帰国して、この家に住ませてもらってからというもの、草は表面だけを刈り取って、地上で腐らせて土に戻すようにしてみた。また仕事の関連で植物の共生菌で根圏を大幅に拡張してくれる菌根菌と出会ったので、庭に入れてみたら、何を植えても死ななくなった。おそらくうちの庭の土は山や野原のような土質になっていたのではないかと思う。

この10年間の間にも、その土質が保たれたのか、雑草の勢いにはものすごいものがある。菌根菌を増殖していた科学者の言では、雑草とは菌根菌がなくても繁殖できる植物なので、荒れた土地にも真っ先に根付き、土が豊かになるとともに、菌根菌で豊かな土が出来上がるそうだ。土中の有機質の大半が、菌根菌の菌根からできているらしい。この菌根菌は農薬にも化学肥料にも弱く、都会の庭の土が肥料などのケアが必要になるのはそのせいもあるようだ。

電動草刈機で、地面から5センチぐらいまで草を刈って雑草はとりあえず倒すだけにしている。木質の茎は、葉が腐食してから、刻んでみる。伸び放題に伸びた木の細枝も同様に細かく切って地面に加えてみる。

そこまでできたら、庭師に再び連絡して木を切り倒してもらう。




サポートしていただいたお金は、Noteでより密接な人の輪を作るきっかけに使わせていただこうと思います。よろしくお願いします。