成人発症好酸球性気道疾患の総説 Allergy 2020

日本のグループから、成人発症好酸球性気道疾患の総説が先月のAllergyに出ております。
Allergy 2020 Oct 11. doi: 10.1111/all.14620. Online ahead of print.
PMID: 33040364
Adult-onset eosinophilic airway diseases

<要旨>


小児期に発症する好酸球性気道疾患(アトピー型喘息やアレルギー性鼻炎)は、アレルゲンおよびアレルゲン特異的IgEを介している。また、食物アレルギーや湿疹などの他のアレルギー性疾患を伴うことが多い(アレルギーマーチ)。


一方、一部のフェノタイプの喘息、非ステロイド性抗炎症薬増悪性気道疾患(N-ERD)、鼻ポリープを伴う慢性鼻副鼻腔炎(CRSwNP)/好酸球性慢性副鼻腔炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症(ABPA/ABPM)は成人発症の気道疾患であり、顕著な末梢血好酸球増多が特徴となる。ABPA/ABPMを除くこれらの疾患のほとんどは非アトピー性であり,成人発症の好酸球性全身疾患である好酸球性肉芽腫症(EGPA)を含む複数の疾患が併存することが多い.

Table 1:成人発症重症喘息に関連したGWASで同定された遺伝子は、EGPAや鼻茸・副鼻腔炎にも関連したものがある(IL-33など)


Table 2:成人発症好酸球性気道炎症の特徴と治療一覧

・いずれの疾患も末梢血好酸球が上昇。特にABPM/ABPAとEGPAで顕著に上昇

・呼気中一酸化窒素も上昇する

・抗体医薬の反応性  

抗IgE抗体:成人発症好酸球性重症喘息+、N-ERD++、ABPA/ABPM+、好酸球性副鼻腔炎+、EGPA+  

抗IL-5(受容体)抗体:成人発症好酸球性重症喘息++、ABPA/ABPM++、好酸球性副鼻腔炎+、EGPA++  

抗IL-4受容体抗体:成人発症好酸球性重症喘息++、N-ERD+、好酸球性副鼻腔炎++  

抗TSLP抗体:成人発症好酸球性重症喘息++

<個人的コメント>

本総説では、成人の上気道・下気道の好酸球性疾患について、生物学的・遺伝学的、免疫学的、病理学的な見地からまとめられています。
「アレルギー性・アトピー性」という言葉は、かつては「好酸球性」と言う言葉と同義まで行かなくても同じ方向のものとして捉えられていました。
しかし、アレルゲンへの感作を介せずに好酸球性の炎症を誘導する経路である2型自然リンパ球(ILC2)が見つかってから、「非アトピー性好酸球性」という疾患の説明がつくようになり、実際にIL-5の阻害を行うことでTh2系だけでなくILC2からの好酸球性炎症を抑えることの重要性が臨床でも明らかになっています。

本論文中の図1の縦軸では「Allergen-Driven vs Eosinophilic」という軸が真逆に延びているのが印象的であり、獲得免疫(前者)がメインの疾患と自然免疫(後者)がメインの疾患が発症年齢ごとに色分けされ、かつお互いのオーバーラップを把握しやすくなっています。
Table 2の治療にはまだ上市されていない抗TSLP抗体の成人発症好酸球性重症喘息に対する効果が取り上げられていますが、つい先日にも抗TSLP抗体(Tezepelumab)の重症喘息に対する第3相試験であるNavigator試験の結果がプレスリリースされておりました。https://m.firstwordpharma.com/astrazeneca-amgens-tezepelumab-hits-main-goal-late-stage-asthma-study
好酸球数が150未満のサブグループでも増悪抑制の効果が確認されたとのことです。
(論文が出ているかを検索しましたが、まだ見当たりませんでした。試験のプロトコル論文は PMID: 33050934)
本総説で示されている成人発症好酸球性気道疾患という概念は、さまざまな疾患や臓器を跨いで使用される概念として、アレルギー専門医は臨床の中で意識していくべきと考えます。

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