食物アレルギー 主要論文ピックアップ

最近、救急外来や総合診療科より、
「原因不明のアナフィラキシーで受診し、その後の抗原精査や方針決定依頼」
という方の紹介をしばしば受けています。

丁寧にお話を伺うとほとんどの場合では原因抗原を同定することができます。
やはり食物が原因としては最も多いですが、患者さんのその後の食生活に関して不安が軽減されるとよいなと思っております。

食物アレルギーについての最近の報告や、古典的ではあるが重要な(主に本邦からの)報告概要をまとめました。私が診療している対象が成人ですので、取り上げた文献も偏ってしまっておりますがご容赦ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33616048/
雑草アレルゲンに対するIgE抗体が小麦と交差反応する表現型をgrass pollen-related wheat allergy(GPWA)と呼称し、解析した。GPWA患者6人全員が水溶性小麦タンパク質に感作があり、ペルオキシダーゼ-1とβ-グルコシダーゼが特異的なIgE結合小麦タンパク質として同定された(島根大学)
Allergol Int. 2021 Apr

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33863479/
黒人やヒスパニック系の子どもが最も高い確率で食物アレルギーを発症していると推定される。医療利用、心理社会的転帰、経済的負担なども人種や民族によって大きく異なる(米国)
Immunol Allergy Clin North Am. 2021 May

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33579526/
米国では約460万人の成人がピーナッツアレルギー(PA)に罹患しており、うち80万人以上が18歳以降にPAを発症している。小児期発症PAと成人発症PAとの違いを検討する必要がある。
J Allergy Clin Immunol. 2021 Feb 3

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33753218/
小児発症食物アレルギー(COFA)と成人発症食物アレルギー(AOFA)の表現型とQOLの違いの調査:80人のCOFAと122人のAOFAを比較したところ、AOFAは貝類への反応が最多(28%)でCOFAは木の実への反応が最多(55%)。QOLは、COFAがAOFAに比べて有意に低い(3.0 vs 3.6、P=0.003)(米国)
Ann Allergy Asthma Immunol. 2021 Mar 19

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33597169/
英国の1998 年から 2018 年の間にアナフィラキシーで入院した101,891人のデータの解析。食物アレルギーによるアナフィラキシーでの入院は増加しているが、死亡率は減少している。学齢児での致死的なアナフィラキシーの原因としては牛乳が最多
BMJ. 2021 Feb 17

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33545347/
急性食物蛋白誘導性腸炎症候群(FPIES)についてのレター。主に乳児に発症し摂取後1~4時間後に大量の嘔吐を起こす、IgEを介さない食物アレルギー。バイオマーカーは存在せず、診断は病歴に基づいており困難。鑑別には、敗血症、急性胃腸炎、アナフィラキシー、発作、周期性嘔吐、腸捻転などがあり、QOLに大きな影響を与える。
Ann Allergy Asthma Immunol. 2021 Feb 2

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33757808/
新生児・乳児消化管アレルギー(FPIES)の患児は、不適切な経口摂取や、食事選択、摂食に関連する知識の欠損により、栄養不良のリスクがある。特に、3つ以上のFPIESの誘因のある患児は、体重増加不良や食思不振症を発症するリスクが高い(米国)
Ann Allergy Asthma Immunol. 2021 Mar 20

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31866098/
抗原同士が同じ科に属する(例、ウルシ科のカシューナッツとピスタチオ)ことがなければ 2Sアルブミンファミリーのコンポーネント内での臨床的交差反応が起こる可能性は1/3程度(英国、スペイン、イタリア、スイス)
J Allergy Clin Immunol. 2020 Apr

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31053502/
セツキシマブにはその構造にα-1,3-ガラクトース(α-Gal)が含まれるため、獣肉アレルギーの患者は同薬の投与にあたりアナフィラキシーの発症リスクがある(島根大学)
Allergol Int. 2019 Jul

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31376490/
花粉ー食物アレルギー症候群(PFAS)の成人での有病率は13%から58%であり、地域差が大きい。PFAS患者の39%に喘息が合併した(米国)
Ann Allergy Asthma Immunol 2019;123(4):359

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30306747/
韓国での花粉症患者648人を対象にしたPFAS全国調査:41.7%にPFASあり。PFAS 270人 vs 非PFAS 378人で喘息有病率を比較。前者は43.3%, 後者は36.2% (p=0.082)
Allergy Asthma Immunol Res 2018;10(6):648

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29175280/
サーフィンなどクラゲ刺傷のリスクがある行為は、クラゲ触手中のポリガンマグルタミン酸への感作を介して、納豆アレルギーの原因となる(横浜市大)
Allergol Int. 2018 Jul

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28888250/
ラテックスアレルギーのレビュー:ゴム製品製造業者、アトピー素因、食物アレルギーがある者はラテックスアレルギーのハイリスクグループ
J Allergy Clin Immunol Pract. Sep-Oct 2017

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26551325/
α-1,3-ガラクトース(α-Gal)への感作は獣肉アレルギーの原因となるが、マダニの唾液腺中にはα-Galが含まれ、マダニ咬傷によって獣肉アレルギーが発症しうる(島根大学)
Allergy. 2016 Mar

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22285279/
大豆Gly m 4は加熱や消化酵素に不安定であり、Gly m 4が関与する大豆アレルギーでは加熱や加工の少ない豆乳、豆腐、枝豆、もやしで症状が誘発されやすく、油あげ、煮豆、納豆、醤油、味噌で症状が誘発されることは稀(国立相模原病院)
J Allergy Clin Immunol. 2012 Mar

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19207436/
カレーライスを食べた後の蕁麻疹・呼吸困難を繰り返す22歳女性:カレースパイスを抗原とした即時型アナフィラキシーと診断。樹木花粉・雑草花粉・ラテックスへのプロフィリンの感作があり、これらの影響が考えられた(藤田医科大学)
J Dermatol. 2009 Jan

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19454841/
医療従事者の職業性ラテックスアレルギーの診断にHev b 6.02特異的IgEの測定(保険での測定可能)が有用(国立成育医療センター)
Allergol Int. 2009 Sep

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18588555/
花粉や植物性食品中の交差反応性炭水化物決定因子(CCD)への感作があっても臨床的にアレルギー症状が出ることはほとんどなく、CCDへの感作はこれらの抗原特異的IgEの偽陽性の原因となる(イタリア)
Allergy. 2008 Jul

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12897752/
プロフィリンファミリーは抗原性は高くないが、一部ではシラカバ花粉、ブタクサ花粉、ヨモギ花粉中のプロフィリン感作を通じてウリ科野菜、柑橘類、トマト、バナナなどの口腔アレルギー症状の原因となることがある(イタリア)
J Allergy Clin Immunol. 2003 Aug

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1969043/
サバ摂取後に蕁麻疹を発症した11人と健常者11人に対してサバとアニサキスの皮膚テストを行った。アニサキスへの陽性反応は前者では全員、後者は1人。サバへの陽性反応は前者でなし、後者で1人(岐阜大学)
Lancet. 1990 Mar 17


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