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ねるねるねるねの化学 ~その2~

30年以上続くロングセラーの知育菓子「ねるねるねるね」
色が変わって膨らむ不思議なお菓子を、改めて掘り下げます。

今回は、色が変わって膨らむ過程をもう少し詳しく見てみます。
1番の粉と2番の粉には、それぞれクエン酸と炭酸水素ナトリウム(重曹)が入っています。
そのため、混ぜると酸と塩基の中和反応が起こり、二酸化炭素が発生します。
この二酸化炭素によって膨らむわけです。
ということは、pHを調べるとその変化が分かるはずです。
pH試験紙は研究でよく使われる、ADVANTECのお馴染みのものを使いました。

アドバンテックのものより安価なpH試験紙はたくさんありますが、色見本が見難く、精度も劣ります。
そのため、安物はお勧めしません。

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まずは、一番の粉を水と混ぜたペーストにpH試験紙を着けてみます。

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アルカリ性ですね。
pH9か、8と9の間くらいですね。

では、2番の粉を少量水に溶かし、pH試験紙を漬けてみます。

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こちらは酸性です。
pH2~3くらいですね。

ということは、1番の粉には炭酸水素ナトリウムが入っていて(アルカリ性)、2番の粉にはクエン酸(もしくはリンゴ酸など)が入っていることが分ります。
色が変わるのはアントシアニンによるものです。
アントシアニンは野菜や果物に入っているポリフェノールの一種で、アルカリ性(黄色)→酸性(青色)となります。
*今回はソーダ味を使っているので青くなっています。味が違うと変化する色も変わります。つまり、商品によって異なるポリフェノールが使用されているんですね。

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左が完成した「ねるねるねるね」に漬けた試験紙です。一部だけ淡い赤色ですが、全体的に黄色っぽくなっています。
pHは4と5の中間くらいに見えますね。

次に、2つの粉を混ぜた状態で水を加えてみましょう。

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中和反応が起きて泡が発生しました。

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そのまま混ぜてみます。説明書とは違う作り方ですが、しっかりと膨らみ、粘性も出てきます。
食べてみると、説明書通りに作ったものと変わった点はありません。
ただ、少し溶け難かったので、やはり説明書通りに作った方が良いですね。

続いて、乳酸カルシウムを混ぜて作ってみます。
「ねるねるねるね」には増粘多糖類が使われています。
おそらく、キサンタンガムかそれに似た性質の多糖類と考えられます。
ということは、カルシウムイオンによってゲル化 or 粘性が大きく上昇するはずです。
検証するため、人工イクラでゲル化剤として使われる乳酸カルシウムを試してみます。

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1番の粉と小さじ一杯の乳酸カルシウムを混合し、水を加えてよく混ぜます。

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乳酸カルシウムを加えないときよりも、少し粘性が上がったように感じます。
増粘多糖類以外にも、砂糖やでん粉などが混ざっているため、カルシウムイオンの効果は限定的なのかもしれません。
ただ、2番目の粉の方に多糖類が入っている可能性もあります。
もしくは、両方に入っているかもしれません。
そのため、結論を出すのは最後まで作ってからにしましょう。

2番目の粉を入れて混ぜると、だんだん膨らみ、粘性が出てきます。
よく練って伸ばしてみると、普通の「ねるねるねるね」よりも伸びます。

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やはり、カルシウムイオンの効果はあったようです。
カルシウムイオンの入っている「のびのびスライム」ほどではありませんが、よく伸びます。
普通の「ねるねるねるね」はこんな感じです。

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左側が乳酸カルシウムを入れたものです。
ちょっと光の加減で色が違うように見えますが、見た目に違いはありません。

よく伸びるようになったのは、カルシウムイオンがキサンタンガム(もしくは類似の多糖類)のカルボン酸を橋架けしているからだと考えられます。

スケッチ-100

何度も使っている図ですが、こんな風に橋架けされた網目構造が出来ていると思われます(多糖類の構造は簡略化しています)。

ちなみに、味は普通に作ったものと同じでした。
小さじ一杯程度では、乳酸カルシウムの影響はないようです。

今度は、ゲル化剤としても使われる多糖類、ローカストビーンガムを混ぜてみます。
薄茶色の粉末なので、分かり易いですね。
小さじ2杯のローカストビーンガムを入れて混ぜます。

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水1杯だと溶け難いので、1.3杯程度を加えます。少し多めに入れます。
ローカストビーンガムを入れた分、粘度が増加しています。

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ここに2番の粉を入れて混ぜます。
この辺りの変化は、普通の「ねるねるねるね」と変わりません。
色が変わりながら膨らむ、お馴染みの反応です。

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よく練って伸ばしてみると、こんな感じになりました。
ローカストビーンガムを添加した「ねるねるねるね」もよく伸びることが分ります。
増粘効果がよく出ていますね。

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右側は乳酸カルシウムを加えたものです。見た目の違いはありません。
粘性は伸び方もほぼ同じです。
そして、味も変わりません。普通の「ねるねるねるね」と同じです。

濃度が完全に同じではないので、普通に作った「ねるねるねるね」と対等に比較はできませんが、乳酸カルシウムやローカストビーンガムを加えた効果は確実に出ていますね。

食べてみると、よく伸びるものは粘りがあります。
普通の「ねるねるねるね」の方が軽くてふわふわした食感です。
やはり、普通に作ったものの方が食べ易いです。

変なことはせずに普通に作るのがお勧めですw




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