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研究現場で着るものは?

化学の研究と言えば、フラスコ、ビーカー、試験管、そして白衣を思い浮かべる人が多いんじゃないでしょうか?
大学の研究室では白衣を着ている事が多いですし、化学系の学部は入学時に購入必須となっています。

では、企業の研究ではどうでしょうか?

実は、白衣を着ることはありません。
着るのは作業着です。
製造現場などで着用されるものと同じです。

なぜかというと、白衣はヒラヒラしているので、
器具を巻き込んだり、機械に巻き込まれる危険性があります。
さらに、作業着の方が体全体を防護出来る上、帯電防止機能が付いています。
帯電防止は極めて重要です。
化学の実験や工場などで起きる火災や事故の多くは静電気によるものです。
多くの有機溶剤は、ちょっとした火花放電で簡単に着火します。
しかも湿度が低いと、有機溶剤とガラス器具との間で起きる摩擦だけで静電気が起きます。
実際、ヘプタンを使って化合物のろ過をしているとき、青白い炎が出たことがありました(ヘプタンは危険物第4類第1石油類に指定されています)。
笑えませんね...
この経験をしてからは、冬の実験作業ではアースに工夫をするようになりました(ブフナーロートや吸引瓶に濡れた布などを巻くetc.)。
有機溶剤をホースなどで送液するときも摩擦で静電気が起き、一歩間違うと大きな火災になります。
そのため、送液速度や作業前の除電などに注意を払う必要があります。
ガソリンスタンドで働いたことがある方はご存知かと思います。
乙種危険物第四類で勉強しているはずです(ほとんどの人は忘れていると思いますw)。
僕は仕事柄、全ての危険物を扱える甲種危険物取扱者を持っていて、保安講習を3年毎に受けています。
講習では最新の事故事例も示され、原因と対策について話をしてくれます。
過去の事例も含めて、静電気による事故の多さを痛感しますね。

作業着に話を戻します。
カッチリとした作業服と安全靴(もちろん帯電防止)、これが企業研究者のユニフォームです。
ただ、医療関係になると話は別です。白衣を着ている方が多いですね。
僕は白衣着るの好きなんですが、もう長い間着てないです。
保護メガネと白衣を着用すると、研究者という感じがしますよね。
さあ、実験しようという気になります。
長い間着てないですが......

白衣にメリットが無いわけではありません。
さっと上から着れるので、すぐに実験作業に移ることができます。
また、白いので、ビーカーなどに入った溶液の色や色の変化をその場で正確に見ることが出来ます(白衣を通して見る)。
これは白いボードなどを背景にすれば良いので、白衣である必要はないんですが、直ぐにチェックできるというメリットはありますね。

大学の研究室でも、巻き込まれたら危険な機械などを扱うところでは白衣を着ません。

仕事で長く研究をやっていると、化学=白衣のイメージは薄れます......
今では、作業着で実験するイメージが定着してしまいました。
ただ、僕は自宅でも長く研究をやっているので、私服のイメージも定着しました。しかも、台所で実験するイメージのおまけ付きですw

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