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ダンボ・オクトパスとダイオウイカ ~深海のタコとイカ~

深海は変わった見た目の生き物が多いですよね。
グロテスクな姿の生き物が居る一方、可愛い生き物もいます。
その一つがダンボ・オクトパスです。

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インド洋の水深7000mの深海底で泳ぐダンボ・オクトパス(写真上部:https://www.cnn.co.jp/fringe/35154584.html)

大きな耳がついているように見えるため、ディズニーのキャラクター、ダンボから名前が付けられました。
深海は一般的に水深200m以下を指しますが、ダンボ・オクトパスは1000m以下の海域に生息し、滅多に見ることが出来ません。
上の写真のように、水深7000mで発見されたこともあります。
最も深いところに生息するタコです。

深海生物の観測は困難ですが、ダンボ・オクトパスはある程度生態が分かっています。
天敵から身を守るために体の大きさや色を変える一方で、ゴカイ類や甲殻類を捕食しているそうです。
そして、耳のように見える大きなヒレで自在に方向を変えながら泳ぎます。
名前の通り、ダンボのようですね。

下の動画では、身体の色を砂の色に合わせています。
途中で身体を隠すようにする姿は、タイトルのようにシャイに感じますねw

この真逆(?)の存在と言えるのがダイオウイカです。
記録によると最大のもので全長18m、体重は約1000kg。世界最大級の無脊椎動物です。日本で発見された中で最大のものは、触腕含めて6.5mです。
これでも十分すぎるくらい大きいですよね。
国立科学博物館で6mの標本をみたときは圧倒されました。
この倍以上の個体も居るのかと、信じられない気持ちになりましたね。

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イギリスのプリマス国立海洋水族館所蔵のダイオウイカの生物標本(触腕含め全長約7m、Wikipedia)

ダイオウイカはほとんどが死骸で見つかっているため、その生態は未だによく分かっていません。
実際に海中を泳いでいる姿を目撃された例は皆無に等しいです。
ダイオウイカは深海200~1000mの辺りに生息すると考えられています。
1000mより深いところにも居るという説もあります。
直径30cmにもなる巨大な目は、深海生物の発する僅かな光でも捕らえることが出来ます。
生きているダイオウイカの撮影が難しいのはこのためだと言われています。
潜水船やカメラの光を遠くからでも察知し、逃げてしまうんでしょうね。
ダイオウイカは筋肉に塩化アンモニウムを含んでいて、アンモニウム分の吸放出で浮力を調整していると考えられています。
以前は、ゆっくりと深海を泳いでいると考えられていましたが、2013年に小笠原沖で撮影されたダイオウイカは、ジェット水流を生み出すことで素早く動いていました。
ダイオウイカは高速で泳ぐことができるという事実は衝撃的でした。
ダイオウイカや他の深海生物は、衰弱すると浮力の調整能力を失い、海面に上がってきます。佐渡市で網にかかったダイオウイカが撮影されたことがありますが、これはかなり弱っている状態ですね。

このダイオウイカを好んで食べるのがマッコウクジラです。

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マッコウクジラ(抹香鯨、Wikipedia)

マッコウクジラは世界最大の肉食動物です。
胃の中からダイオウイカやダイオウホウズキイカが発見されています。なんと、丸飲みにするそうです。歯があるのに噛まないのは何故なんでしょうね?
マッコウクジラは深海沖に生息していることが多いようですが、海面にもよく姿を現します。
イカ類を好んで食べるのですが、1000m以上深いところまで潜ってダイオウイカなどの深海のイカを捕食します。
マッコウクジラには大きな吸盤跡が付いていることが多いため、ダイオウイカやダイオウホウズキイカをよく食べていると考えられています。
ダイオウイカが必死に抵抗した跡なのでしょうね。
1960年代に、ソ連でマッコウクジラとダイオウイカが組み合っている様子を発見したという記録が残っていますが、実際に撮影された例はなく、目撃例もこの一件のみです。
マッコウクジラはダイオウイカとほぼ同じくらいの大きさで、体長16~18mです(メスは12~14m)。こんな大きな生き物どうしが格闘する様子はどんなものなんでしょうか。怪獣映画を想像してしまいます。
潜水するときには肺を空にし、酸素を筋肉のミオグロビンに貯めるそうです。肺を空にすることで水圧の影響を受けないようにしているんですね。
しかし、急速に1000m以上潜り、再び上昇するには浮力の調整が必要です。どうやっているのかは未だによく分かっていません。

ちなみに、マッコウクジラは音も立てずに急速潜行するそうです。僅かな光にも反応して俊敏に動くダイオウイカも、急襲されれば逃げることは不可能なのかもしれません。
また、マッコウクジラがなぜ深海のイカ、特にダイオウイカを好んで食べるのかは謎だと言われています。わざわざ生き物の少ない深いところに潜らなくても、食べ物の豊富な場所はたくさんあります。
マッコウクジラは子供に深く潜る練習をさせ、徐々に1000m以上潜れるようにするそうです。深海でエサを取らなければいけない何らかの理由があるんでしょうね。

先ほどから何度か名前を出しているダイオウホウズキイカは、ダイオウイカと同じくらい大きな深海生物です。ただし、ダイオウイカ以上に謎に包まれています。
体長は20mを超えるものも存在すると推測されており、ダイオウイカよりも巨大な無脊椎動物の可能性があります。
とても重い種で、過去に捕獲された未成熟の個体でも450kgあったというから驚きです。

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ダイオウホウズキイカと人のスケール比較(Wikipedia)

ダイオウイカよりも重いためか、水中から引き上げると体形が崩れてしまうそうです。腐敗も早く、標本にすること自体が困難なようです。
また、これまでに捕獲されたのはメスのみで、なぜオスが発見されていないのかも分かっていません。そもそも、捕獲自体が困難です。
どんな生態なのか、興味は尽きません。


水深1000mの水温は2~4℃、水圧は101気圧です。これは、1cm2に約101Kgの力がかかっている状態です。つまり、人差し指の先に体重50Kgの人が二人乗っているようなものです。物凄い圧力ですね。水深3000mならその3倍、10000mだと10倍の圧力がかかります。想像すら出来ませんね。
深海生物はその過酷な環境に適応できるように様々な形態や機能を持っています。
軟体生物は身体が柔らかいため、圧力を上手く受け流していると言われています。さらに、ダイオウイカのように塩化アンモニウムなどを大量に含み、浸透圧を調整することで水圧の影響を受けないようにしています。
要するに、周囲の水圧と体内の圧力を同じにしているんですね。
これは深海魚も同様です。深海魚をいきなり陸にあげると目玉が飛び出すのはこのためです。
また、甲殻類は強固な外骨格によって水圧から身を守っています。
ダイオウグソクムシやタカアシガニなんかはそうですね。

ゲルで身を守っている生き物もいるんですよね。
イカやタコ、クラゲはゲルそのものですが、よく潰れないなと思います。
深海生物を詳しく調査・研究することで、ゲルの可能性をさらに広げることが出来るかもしれません。
これまでに投稿した深海生物関連の記事をピックアップしておきます。


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ゲルの研究をやっています。ゲルを使った人工筋肉、スライム、こんにゃく等、ゲルに関する様々なテーマを扱っています。学会・イベントで研究成果の発表もしています。 1人でも多くの人にゲルと化学の面白さを伝えられたらと思います。 ☆高分子学会正会員、仕事は化学研究職。ゲル研究は趣味です。

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