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2020年ノーベル物理学賞(ブラックホールの発見)

今年のノーベル物理学賞は「ブラックホールの発見(宇宙の暗黒の謎)」に対して贈られました。
受賞したのは
イギリス・オックスフォード大学のロジャー・ペンローズ氏、
ドイツ・マックスプランク研究所のラインハルト・ゲンツェル氏、
アメリカ・カリフォルニア大学のアンドレア・ゲッズ氏
以上の三人の研究者に贈られました。

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向かって左からロジャー・ペンローズ氏、ラインハルト・ゲンツェル氏、
アンドレア・ゲッズ氏(ノーベル賞公式サイトより)

宇宙で最もエキゾチックな現象の一つであるブラックホールの発見。
遂に、この研究が選ばれたと言うべきでしょうね。
ロジャー・ペンローズは、一般相対性理論がブラックホールの形成につながることを示しました。
ラインハルト・ゲンツェルアンドレア・ゲッズは、目に見えない非常に重い物体が、銀河系の中心にある星の軌道を支配していることを発見しました。
ロジャー・ペンローズは有名なので、宇宙が好きな方なら聞いたことがあるのではないでしょうか。

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ロジャー・ペンローズ (2011年撮影)、今年で89歳です。ー Wikipediaより引用

ロジャー・ペンローズは、ブラックホールがアルバート・アインシュタインの一般相対性理論を直接示すものであることを証明するために、独創性のある数学的方法を用いました。
アインシュタイン自身は、ブラックホールが本当に存在するとは信じていませんでした。ブラックホールからは、どんな物も逃れることはできません。光でさえも...。
アインシュタインの死から10年後の1965年1月、ロジャー・ペンローズは、ブラックホールが本当に形成されうることを証明し、ブラックホールについて詳しく説明します。彼の画期的な論文は、一般相対性理論への重要な貢献と見なされています。

ラインハルト・ゲンツェルとアンドレア・ゲッズは、それぞれ天文学者のグループを率いて、1990年代初頭から、銀河の中心にある「射手座A*(いてざAスター)」と呼ばれる領域に注目してきました。
天の川銀河の中心部に最も近い、最も明るい星の軌道をマッピングしてきました。

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いて座A*(SgrA*)と最近の超新星爆発による2つの光のこだま(丸で囲んだ部分)ー Wikipediaより引用

この2つのグループの測定結果は一致していた上、どちらも非常に重くて目に見えない物体を発見していました。それが寄せ集めの星々を引っ張り、目もくらむようなスピードで動かしていました。
なんと、私たちの太陽系よりも小さい領域に、約400万個分の太陽の質量が詰め込まれていたのです。

ゲンツェルとゲッズは、世界最大の望遠鏡を使って、星間ガスと塵の巨大な雲の中から天の川の中心までを見通す方法を開発します。技術の改良を重ねてユニークな装置を作り、長期的な研究を行いました。
二人の先駆的な研究によって、天の川の中心に超巨大ブラックホールが存在するという証拠が示されたのでした。

ブラックホールの発見は、コンパクトで超巨大(とても重い)な天体の研究に新境地を開きました。しかし、このような天体(ブラックホール)にはまだ多くの謎があります。

今回受賞したアンドレア・ゲッズさんは、女性として史上4人目となるノーベル物理学賞受賞者となりました(これまでの受賞者は、1903年のマリー・キュリー、1963年のマリア・ゲッパート=マイヤー、2018年のドナ・ストリックランド)。
受賞インタビューでは
「もっと多くの若い女性に、科学に興味を持ってほしい」
「(研究について)まだ分からない事がたくさんありますが、分からない事が魅力なんです。分からないからこそ、私たちはもっと知りたいと思うんです。」
と述べられていました。

もし興味のある方は、アンドレア・ゲッズさんのTED動画をご覧ください。
日本語字幕付きです。

宇宙の謎に挑戦した今回のノーベル物理学賞。
さらにその先を解明した研究が、未来のノーベル物理学賞かもしれません。

読んでいただけるだけでも嬉しいです。もしご支援頂いた場合は、研究費に使わせて頂きます。