「宙船」っていい曲。

その船を漕いでゆけ。
の歌い出しは強烈だけど、その次がとても良い。
「おまえの手で漕いでゆけ」

大きくて強い、安全な船に「乗せてもらう」んじゃない。
ボロボロで痛んだ船でも、
おまえの手で漕いでゆくことに意味があるんだと、
改めて歌詞を眺めてみると、これはなかなか背中を押される。

先日、会社の先輩からひとつ、仕事を紹介された。
それは僕が好きなジャンルの、
スーパースターが集結したような、
業界的にも、世間的にも大きく話題になるであろう案件で、
僕が喜ぶだろうと気を利かせてくれて、
プロデューサーとして参加しないかと声をかけてくれたのだと思う。

業務のことなのであんまり詳しくは書かないけど、
代理店やプランナー、ディレクターが関わっている大きな案件は、
プロダクションのプロデューサーが参加しても、
その制作物の中身、クオリティに直接影響を与えられることは
ほとんどない。(そもそも発言権がないともいえる)

そんなことを踏まえて僕は考えた。
この案件に参加すれば、
そこまで大きな苦労をすることもなく、
そこそこスムーズに仕事をこなして、
「この仕事に関われた!」というそこそこの満足感を得て、
また次の仕事に移っていくだろう。

そこまで思い至ったとき、
ぼくは迷いなく、その誘いを断った。

安全と満足が約束されている、
豪華で大型の船に乗って満足している場合ではないのだ。
そんな満足は誰かに預けて、
僕は、倒れてもいいから、豪華でも大型でもなくていいから、
この、未熟だけど本気の言葉と頭を使って、
とぼとぼと船を漕ぎたい。

いまはもう、満足も名誉も敬意も嫉妬も、
そんなものはいらない。
オールを漕いだときの、その手応えだけが、
次のひと漕ぎをするための唯一の活力なのだと思う。


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東京都中央区在住、30歳の男です。 2013年〜2019年 広告制作プロデューサー。 2019年3月〜 WEB編集者。
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