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明日、僕のエヴァが新宿で終わる

祖父から「村上春樹とエヴァだけはnoteで語っちゃいけない」
と教えられたんだけど、明日シンエヴァが公開される
ここしかないってタイミングなので
思い出話と備忘録として、ちょっとだけ書こうと思います。

先日、金曜ロードショーでエヴァQが放送されている夜、
母からLINEが届いた。
「エヴァ懐かしいね。小学校のとき一緒に新宿に観に行ったよね。周りは大人ばっかりで、子どもに見せていいのか当時悩んだんだよね」

『Air/まごころを、君に』公開当時、
新宿ピカデリー(改装される前の古い建物)に母と観に行ったのだ。
当時、映画といえば地元のちっちゃい映画館でドラえもんを観るぐらいだったので、
新宿まで映画を観にいくというのは、かなり印象に残るイベントだった。
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エヴァTVシリーズをはじめて観たのは小学校高学年ぐらいだった。
レンタルビデオ屋で一気借りして、母と一緒にビデオを観ていた。

ガンダムなどロボットアニメに全く興味がなく、
そもそもアニメすらそんなに観なかった小学生の僕が
なんでエヴァを観はじめたのか、もう全然思い出せない。
だけど、意味深に繰り出されるテロップや、セリフのひとつひとつ、
シンジのキャラクターに圧倒的に心を奪われて、
人生で生まれてはじめて「ハマった」のだった。

なんでハマってしまったのか、いま少し考えてみた。
もうめちゃめちゃベタな話で申し訳ないんだけど、
たぶんシンジに自分を重ねていたんだなと思う。

当時の僕は、中学受験のために毎日塾に通っていて、
毎週のテストと「志望校合格率」のプレッシャーで
いま考えるとなかなかに参っていた。
僕が通っていた塾は毎週のテストの結果順に席替えがあって、
さらに数ヶ月に一回、成績順にクラス替えがあった。

塾での成績と「合格率」は微妙なところだったけど、
学校での成績はめちゃくちゃ良くて、周りから
「あいつは受験して私立にいく」と当然のように思われていた。
(最近はそんなことないらしいけど、当時は中学受験をするのはクラスで2、3人だった)
それもまたプレッシャーで、受験前、僕はよく母親に
「これで受験に落ちてしまったら情けなくてみんなに会えない。今から引っ越して小学校を変えたい」と相談したこともあった。
受験への親の期待や思い入れもわかっていたので、とにかく合格しなきゃ生きていけないような気がしていた。

そんな時に現れたシンジくんは、安い言葉を使ってしまうけど
やっぱり救い、だったんだと思う。
彼は繊細で、弱くて、居場所がなくて、情けなかったけどどこかかっこよかった。
彼がどうなっていくのか、目が離せなかった。

そして、TVシリーズの最後「僕はここにいてもいいんだ」
という言葉に辿り着いた時、
もう訳もわからずめちゃくちゃ泣いた。
アニメを観て泣いたのは『さようならドラえもん』以来2度目だった。
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大学生になった頃、新劇場版がスタートした。
『序』は公開初日にイクスピアリで観た。
『破』はバルト9でたぶん初日に観た。
『Q』は公開前日の深夜最速上映で観た。
Qのラスト「つづく」の文字が出た時、隣の席のおじさんが
「えっ!」と声を出した。

そして、明日。シンエヴァの公開で新劇場版は一旦終わるらしい。

僕が初めてエヴァを観てから、もう20年ぐらい経った。
その間にエヴァはモンストやパズドラとコラボして、
キャラクターが揃ってカミソリのCMに出た。
ゲンドウは笑顔で髭を剃っていた。
なんか違うな、と思っていた。

僕にしても、この20年で
相変わらず脆さや逃げ癖みたいのはあるものの
多少は大人になって、居場所を築いて、
もうシンジに感情移入はできなくなっていた。
Qは、ミサトさんやゲンドウを見て
「もっとシンジのことフォローしないと!」
とか思って観ていた。

それに加えて、この20年で、映画とアニメを観まくった。
いまはアニメと縁深い仕事に就いている。
もう、素直に中身だけを見ることはできなくて
「庵野監督はやっぱり…」とか「鶴巻さんのインタビューが」
とか、どうしても作り手のことを想ってしまう。
あとは時代だったり、批評だったり、世の反応だったり、
そういうものを含めての「鑑賞」になっている。

もうTVシリーズを見届けて涙を流した時の情熱は全然ない。
それでも、シンエヴァだけは一刻も早く観ないといけない!
と駆られて、
チケット販売日の0:00からチケット争奪戦に参加して、
TOHOシネマズは全然サイトにつながらなかったので
バルト9でチケットを取った。
僕にとってのエヴァは、どうしても新宿と縁があるらしい。

僕は、なんでこんな必死になってチケットを取って、
仕事まで休んで数時間でも早く観に行きたいんだろう。
と、いまもよくわからない。

正直、ラストがどうなるとか、あんまり興味はない。(どうせモヤモヤして終わると思っている)
謎解きに参加する気もない。
ただ、エヴァに救われたり、心が離れたり、やっぱり気になったり、
なんやかんやで自分の半生に関わってきた作品が
やっと、本当にやっと終わった時、
自分がどういう気持ちになっているのか。
それにはすごく興味がある。

「まあこんなもんだよな笑」な大人になってるのか、
「うおーやっぱりヤバい!」と小学生の自分が帰ってくるのか、
両方が入り混じるのか。
どうなるにせよ、観る前の僕とは何かが変わるだろうなと思う。

そもそも映画を観るというのはそういうことだし、
20年以上も付き合っている作品が終わるというのは、
間違いなく自分の中の何かが終わって、
また新しく何かが始まることなのだ。

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