施光恒 国民生活の根幹が破壊されている
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施光恒 国民生活の根幹が破壊されている

厚労副大臣が外資系製薬会社の御用聞きをする異常さ

── 安倍政権は、対日直接投資推進会議の枠組みを利用して、規制改革を加速させようとしています。

 投資拡大の名のもとに、あからさまにグローバル投資家や企業にすり寄る姿勢を見せています。日本国民ではなく、グローバルな資本が、日本の政策を決めてしまう事態が進行しているのです。

 対日直接投資推進会議が昨年3月に発表した「外国企業の日本への誘致に向けた5つの約束」には、重大な問題点が含まれています。「一番ビジネスしやすい環境を整えますから、日本にぜひ投資してください」と、グローバル投資家、企業に露骨に阿る内容です。

 どの「約束」にも疑問を感じるのですが、特にひどいのは五つ目の約束です。そこには、「日本に大きな投資を実施した企業が政府と相談しやすい体制を整えます」と書かれています。この約束にしたがって設けられた制度が「企業担当制」です。多額の投資をする外資系企業の相談相手として各省庁のナンバー2クラス、つまり副大臣や政務官をつけるのです。まさにこれは、日本の政権幹部と海外の大企業との結託です。「外資系企業サマに様々な便宜を図れるように御用聞きをさせていただきます」ということです。

 そして、外資系企業の要望に沿って規制改革を断行しようとしています。すでに今年5月には、規制・行政手続の簡素化について検討するための「規制・行政手続見直しワーキング・グループ」の設置が決まり、8月17日にその第1回会合が開かれました。

 しかも、規制改革について、早期に結論が得られるものについては先行的な取り組みとして年内に具体策を決定し、速やかに着手するとしています。

 すでに、副大臣を担当者、つまり相談窓口としてつける外資系企業として、IBM、ジョンソン・エンド・ジョンソン、デュポン、ファイザー、フィリップス、マイクロンテクノロジー、メルクなどが選定されました。このうち、ファイザーとメルクが製薬会社、ジョンソン・エンド・ジョンソンとフィリップスが医療機器メーカーで、厚生労働省の副大臣が担当者になることが決まっています。

 外資系企業は、日本でビジネスがしやすいように、日本の規制やルールを撤廃するよう、担当者である副大臣に対して要求することになるでしょう。担当者が経産省の副大臣ならばまだ理解できますが、製薬会社や医療機器メーカーの担当者に厚労省の副大臣が就くのは問題でしょう。医療や労働など国民の健康や生活に直結する問題を扱い、国民生活を守る役割を担うはずの厚労省が、国民一般ではなく、外資系企業の要望を直接聞く立場に転落してしまっているのですから。

 子宮頸がんワクチン「ガーダシル」を製造しているメルクは、厚労省の副大臣に対し直接、ワクチン接種を推進してほしいという要望を突きつけてくるかもしれません。あるいは、外資系企業が一斉に、解雇規制の緩和など労働法制の変更を厚労副大臣に迫ってくるのではないでしょうか。

 四つ目の約束にある「海外から来た子弟の充実した教育環境の整備を図る」という政策も大きな問題を含んでいます。すでに、国家戦略特区では公設民営学校の設置が認められており、日本の公立学校の校舎を利用して、アメリカなどの団体が英語で教育を行う学校を作ることが可能となっています。日本の税金を使って外国人が望む教育環境を整えようとしているのです。

 例えば、対日直接投資推進会議には、日本貿易振興機構が4月に、在日外資系企業・外国人材の要望をまとめた文書が提出されており、その冒頭に「インターナショナルスクールは学費が高すぎるので、日本の公立学校を国際化するほうが良いのではないか」という意見が挙げられています。

 本来、外国人子弟の教育は、外国人自身、あるいは彼らを雇用している外資系企業が負担すべきものです。それを日本の税金で賄おうとしているのです。日本の公立学校の在り方を外国人に合わせる必要などありません。

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