見出し画像

【4月号】芸人リレーコラム/ダイヤモンド・野澤輸出

「この春、新しく始めたいこと」

春は、4月とも重なり、新年度ということで、いろいろ新しいことを始めるのにちょうどいい季節だ。みなさんの中にも、何か新しいことを始めようと思っている方も多いと思う。

自分も一応10年お笑い芸人をやっているので、たまにテレビ番組のオーディションに行くことがある。そこでは「変わった趣味やスゴく語れるような好きなこと、一芸的な特技はありませんか?」などを聞かれきた。

だから自分もこの春、せっかくだからテレビに出れるような何か新しい趣味や、変わった特技の練習を始めようと考えていた。

ん、いやいやちょっと待った。本当にそんなこと必要なのだろうか? そんなこと必要なのだろうか? そんなことをやってテレビに出る芸人になりたかったのか? そんな本当に好きでもないことを勉強して語ることが果たして正解なのだろうか。

自分が新しく始めたいことなんて、新しいお笑い以外ないだろう。誰も見たことない新しいお笑い。新しい漫才。新しいコント。漫才やコントでもない新しいお笑い。新しい発明。それらをやってこそ、自分がなりたかったお笑い芸人なのだ。

以前の話だが、特技などを活かしたネタで営業に行ったりして、芸人としての生活費をしっかりと稼いでいる同期と飲んだときに、そいつが「10年もお笑いやってて、新しいことやろうとするのが恥ずかしいよ。ある程度の技術は身に付いてるんだから、分かりやすいことをして、目の前のお客さんを確実に笑わせたほうがいいよ」と言ってきた。

確かに10年もやっていたら、ある程度のパターンさえ押さえていればそこそこの笑いはとれるはずだし、目の前のお客さんを笑わすこと自体は、とても素晴らしいことだ。自分だってお客さんを笑わせたい。当たり前だ。
でも定番の型のようなお笑いだけやっていても、お笑いは進化していかない。新しいお笑いとは、最初は誰も見たことないから笑うタイミングを逃しやすく、万人にウケづらい。しかし何だかよくわからないけどおもしろいお笑いは、いつかスタンダードなお笑いになる可能性も秘めている。

もちろん今までの形式や伝統に沿った、優れたお笑い芸人も必要だ。しかしお笑い芸人のうちの誰かが新しい笑いを追求していかなければ、お笑い界は長い目でみたとき、どんどん廃れていってしまうだろう。

自分はまだ新しいお笑いに辿り着いていないけれど、そこに挑戦していきたいし、簡単なお笑いをやるくらいなら、まだまだ泥水だってすすりたい。今は毎日、激安のカップラーメンに3玉100円のうどんを替玉して食べる生活を送っている。こんな地獄のような生活だけど、ともに新しい笑いを追求するお笑い芸人が増えていってくれれば、と思っている。

今日は、こんな文章を最後まで読んでくれた未来のお笑い第八世代、第九世代に向けて書いたのだ。よろしく頼むよ。

ちなみに僕は以前、目隠しをして口の中に小銭を入れていくらかを当てるという特技でテレビに出たことがあります。

ダイヤモンド野澤

ダイヤモンド・野澤輸出 
東京NSC15期生。1986年12月24日生まれ。栃木県塩谷郡出身。明治大学政治経済学部政治学科卒業。明治大学お笑いサークル木曜会Z出身。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?