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他劇団公演観劇記「クニモリカンパニー第1回公演 十二人の怒れる男」@高田馬場プロトシアター

前書き

他劇団公演観劇記を書くことにしました。
他の劇団の公演を観ることは、自分たちの糧になります。
それは、予約、受付、装置、照明、音響効果、観やすさなど芝居の内容に限らず全般に渡ってです。プラス面はもちろん、そうではなかった面もです。
チケット代や交通費(大体の場合が東京での公演。神奈川県民としてはちょっと遠い)の都合もあるので、全てを観ることはできません。したがって、ねこのバロンと何かしらの関係者が関わっている公演が主になります。今回は初回として、クニモリカンパニーの第1回公演「十二人の怒れる男」について観劇記を書きます。

公演概要

クニモリカンパニー第1回公演「十二人の怒れる男」
 作:レジナルド・ローズ
 訳:額田やえ子(別書前)
 演出:川口典成(ドナルカ・パッカーン)
 日時:24年5月17日(金)、18日(土)、19日(日)(全6回公演)
 会場:高田馬場プロトシアター

フライヤー

感想

話は逸れますが、私はタイトルを「十二人の怒れる男たち」と思い込んでいました。改めてフライヤーを眺めて、「あれ?」となり、調べてみると「たち」が無いんですね。日本語的には「たち」がつくべきところだと思うんですけど・・。
きっと何か意図があるのでしょうね。

今回の公演には、ねこのバロン常連の長沢さん(さんちゃん)をはじめ、私(折笠)が過去に別の劇団の公演で共演したふたりの合計3人の仲間が参加しています。
「十二人の怒れる男」は、どこか忘れましたが、プロの劇団の公演を観て、そのドキドキ感にいたく感激した作品です。それを身近な人たちが出演して再度観ることができるので楽しみです。

会場は高田馬場駅から10分以上歩いたところにある「高田馬場プロトシアター」という場所。初めて行く場所で、住宅地の中にありちょっとわかりにくい場所でした。
工場跡地の建物らしく、客席中央に鉄骨の柱があったり、妙に薄暗く、何を作っていたのかわかりませんが、雰囲気のある場所です。個人的に好みでした。
陪審員が集まって秘密の議論するには雰囲気が良いです。中央のテーブルにはペットボトルの水が並んでいます。飲んでいいのかな?と思いましたが、もちろん小道具ですね。

まずは、気になった点から。
・十二人がとても怒っているんです。タイトルがそうですからそうなんですけど。
十一人が有罪を主張し有罪に傾きかけているのに、ひとりだけ合理的疑い有りと異を唱え、流れを作っていく8号陪審員も声を荒げて怒っているんです。差別的な思想からまともな審議をしない他の十一人に怒っているのかちょっと見えない部分がありました。
・時代設定がわかりにくく、恐らく現代ではないと思われるのに、ペットボトルで水を飲むとかプロジェクターが出てくるのは何だろう?というのがちょっと疑問でした。
・時々、椅子や机を並べ替えたりして、場面転換をしていました。本来は陪審員室の場面だけのワンシチュエーションなので、もしかしたら飽きを防止する目的なのかもしれませんが、その動きが特別な意味があるように思われ、集中する気持ちを切らせていました。

素晴らしかった点です。
そんな気になった点はあるのですが、薄暗い照明の独特の雰囲気の中で、ひとクセもふたクセもある男が激しく自分を主張しあっている姿は、引き込まれました。
以前プロ劇団の公演を観た時は、立派な部屋の舞台装置が作られていたのですが、ここの場はそんなものは微塵もなく、もしかしたら審判にかけられている少年が、拷問でも受けていたのではないかという想像を働かせるほどでした。
それを意識してこの会場を選ばれたのかわかりませんが、素晴らしかったです。

非常に難しい作品です。単に台詞の応酬で終えることはできません。その台詞量も役によってはものすごい量があり、気持ちの変化も激しい。人種差別という、今でも続いている時代背景もしっかり理解していないと役作りができません。
現代の表向きの基準では許されないであろう人種差別と思われるような台詞を、息をするように吐くのが、恐ろしいような、あるいは現代の人の心の奥を覗かれたような気分でした。
役者の都合で稽古もあまり稼げず、終盤の集中稽古はかなり大変だったと聞きました。そんな中でも、あそこまでの雰囲気を作られたのは素晴らしいと思いました。

自分も以前から一度は出てみたい(企画する側でなく)作品です。いつか機会があれば(無い可能性大)、出演してみたいと改めて思いました。

お疲れ様でした。

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