
AIと知財の戦い
と、まぁ題名は大きく出てはみましたが、
毎月、私が参加している経営のデザイン研究会という、知的資産経営をテーマにしている勉強会があるのですが、こちらのテーマがAIで作ったものの取り扱いということで興味深かったので、取り上げてみました。
AIと言えば、ChatGPTが話題になっていますが、1年ぐらい前まではイラストAIが結構話題になっていました。キーワードをいくつか入力するとそれに関連したイラストをAIが書いてくれるというやつです。最近ではイラストで有名なイラスト屋さんがAIサービスを提供し始めたことも話題ですね。
では、このAIで書かれたイラストの著作権はどうなるのでしょうか?
というのが、研究会のテーマでした。これ、業界によっては実は結構問題になっているのです。例えばイラストレーターの方々は、自分の作品を知ってもらうことで仕事を取っています。そのため、彼らはSNSやHPなどに自分の作品を掲載することで、それが宣伝がわりになるのです。また、掲載されたイラスト自体は著作権で保護されていますし、商用利用などについての制限等も自分のサイトに明記したり、クリエイティブ・コモンズのルールに従って提示することで、勝手にその方のイラストが利用されることを防止できるわけです。
イラストという、人の経験と感性に依存するものは、真似して制作されることはあまりなく(超有名人の場合は贋作が出回ることがないとは言えませんが)逆に多くの人に作品を見てもらうことを目的に積極的にWEB活用することが有効でした。
ところが、AIの登場で問題が出てきたのです。
AIの仕組みのお話にちょっとなりますが、AI自体は学習をしてインプットから解答を導くモデルというものを作っていきます。
例えば「猫」という単語と猫のイラストを大量にAIの学習モデルに入力していくわけです。そうすると、入力された絵の特徴と「猫」と言う単語を結びつけて猫のイラストを作成できるようにしていきます。
この例では「猫」だけですが、例えば「あくび」「ひげ」「青空」「宇宙」などそれぞれの単語と絵を大量に覚えさせることで、「青空のしたであくびをする猫のイラスト」をAIが生成していくことができます。
私の友人のアーティストの方が、AIに欠かせた333枚の「黄色」「ドラえもん」の絵を羅列した作品を作っていました。そのコンセプトが、「この作品は、私がAIを使って作ったが、絵自体はAIが作ったので、誰が作ったのか曖昧な作品で、誰の作品といえばいいのか?」と言った内容でした。
最近会った時に話をしていたら、当時はアート作品にできるぐらい面白い絵がAIで作れたが、今は学習が進みすぎてみんな同じような絵で正確すぎて面白みがないと話していたので、アートとして使うには学習しすぎないくらいの方がいいのかもしれませんね。
で、イラストレーターの方々にとって問題となっているのが、WEB上でイラストを公開することで、そのイラストがAIに勝手に使われてしまうと言うことでした。稀に、特定のイラストレーターの絵に類似したAIが作成したと言う絵も存在するそうです。AIサービスが無料な場合、イラストを使いたい人にとっては、ものすごく便利なツールになります。本来であれば人に頼んでイラストを描いてもらうべきところが、AIが作ってくれるのですからね。ただ、その作ってもらった絵が、特定のイラストレーターを元に作られていたとしたらどうでしょうか?ある日突然イラストレーターから苦情を言われても、「そんなの知らない」となりますね。イラストレーターの立場から見れば「無断で使われた」となります。
でも、AIの学習自体はシステムが勝手にWEBから拾ってしてしまうので防ぐことがなかなか難しいです。この辺りは、法律で保護していかないといけない分野にはなりますが。その整備が追いついていないのが日本の実情みたいですね。
今回は、イラストを例にしましたが、音楽やパフォーマンス、写真に文章とWEB上でクリエイターと言われる人々が公開しているものは全てにこのリスクがあります。AIに対して知財権に敏感な欧州では早くもルール作り(規制)の動きがでてきています。この数年でこの分野の利用のルールは大きく変わっていくでしょうし、そのためのシステム作りも進んでいく分野だと思います。
クリエイターの方々の中にはWEB公開をやめた方もいると言う話を聞きます。
いずれにせよ、AI周りではさまざまなビジネスが生まれていくことになると思います。