ラーメン4.0@開業日記#89 STP分析

今日はマーケティングのフレームワークでSTP分析を取り上げます。
マーケティングでは比較的有名な分析手法で、商材・業種を問わず分析できるので、多くの会社やグループで採用されています。
今日はかなり長くなってしまいました。良ければ最後まで読んでもらえれば嬉しいです。

STP分析とは

STP分析は、ターゲットとなる市場や客層を絞り込み、自社の立ち位置を把握して競争優位を確保するという分析手法で、マーケティングにおける初期フェーズにサービス内容・価格などを決めるときに効果を発揮します。

市場を細分化する「セグメンテーション(Segmentation)」
セグメンテーション(Segmentation)は、「市場細分化」のことです。市場を地域・年齢・価値観などの変数で切り分けて細分化します。

コンビニエンスストアの場合は、市場を「オフィス街」と「住宅街」に分け、それぞれのセグメントによって商品を選別しています。

市場を決定する「ターゲティング(Targeting)」
ターゲティング(Targeting)は、「標的市場の選定」のことです。細分化した市場の中でどこが自社のターゲットにふさわしいかを決めます。

オフィス街のコンビニエンスストアの場合は、「ランチを買いに来る20~30代OL」などがターゲットとなります。

自社の立ち位置を決定する「ポジショニング(Positioning)」
ポジショニング(Positioning)は、「ターゲットとする標準市場内における、自社の商品・サービスの立ち位置を決定すること」です。競合他社と自社の立ち位置を明確にし、マーケティング戦略を考えます。

例えば、セブンイレブンが始めた「1杯100円で挽き立てのコーヒー」は、「低価格で手軽に飲める本格的なコーヒー」としてポジショニングしています。

STP分析により自社に有利なポジションを見つける

STP分析の目的は、自社の優位性を確保できる有利なポジションを見つけ出すことです。

消費者のライフスタイルや志向の変化はもちろん、競合他社の新技術開発や業界内での大きな吸収合併など、さまざまな要因によって市場は変化しています。このようにビジネスの環境が変化する中では、継続して同じマーケティング戦略を実行していても売上は伸びません。

そこで、環境の変化に応じて自社の商品・サービスの強みやターゲット層を把握し、新たなアプローチを考えることが必要になります。

その際にSTP分析をすれば、競争環境が変化する中でも常に自社の優位性を確保できるポジションを見つけ出し、最適なマーケティング戦略を立案できます。


STP分析を実施する手順

STP分析では「セグメンテーション」・「ターゲティング」・「ポジショニング」の3つの作業をおこないます。

ステップ1.セグメンテーション
最初は「セグメンテーション」です。これは市場を細分化するという作業です。市場を細分化する基準としては主に以下の4つの軸があります。

地理的軸:地理的変数(地域、都市規模、人口規模など)
人口統計的軸:人口動態変数(年齢、性別、家族の人数、所得、職業など)
心理的軸:心理的変数(ライフスタイル、性格など)
行動面の軸:行動変数(新規かリピーターか、使用頻度、購買意欲の程度など)
これらのうち複数の基準を組み合わせてユニークな基準でセグメンテーションをすることが、他社との差別化に効果的です。

ステップ2.ターゲティング
次に「ターゲティング」です。複数のセグメントで切り分けられた市場に対して、自社がどの市場をターゲットとしてマーケティングするのかを決めます。ターゲティングには3パターンあります。

1.無差別マーケティング
無差別マーケティングはセグメントで分けられた複数の市場を単一の同質的なものとみなし、単一の製品・サービスを提供する方法です。単一の製品を大量に生産することで低価格を実現できます。
例えば、フォード社はT型フォードのみを大量生産して幅広い顧客層を対象に販売、成功しました。

2.分化型マーケティング
分化型マーケティングはセグメントで分けられた各市場に、異なる製品・サービスを提供する方法です。GMやトヨタはこの方式で、多様な車種をそろえて各市場に個別に対応することで成功しました。

3. 集中型マーケティング
集中マーケティングは小規模な市場に絞り込み、特定の顧客に働きかける方法です。フェラーリやポルシェはスポーツカーに特化して強みを発揮し、成功しました。

以上の3パターンから、自社のサービスに最適なパターンを選びましょう。

ステップ3.ポジショニング
最後に「ポジショニング」です。ターゲットの市場における自社の製品・サービスの立ち位置を明らかにし、製品・サービスで差別化すべきポイントを見つけましょう。

ポジショニングを考える際には「ポジショニングマップ」を作成すると分かりやすくなります。ポジショニングマップとは2つの軸をもとに作られるマップで、その中に自社と競合他社を位置づけることで完成します。

画像1

2つの軸の要素としては、いくつかの購買決定要因の中から、できるだけ関連性の薄い2つの要素を選びます。例えばこの図のポジショニングマップのように「高価格⇔低価格」と「派手⇔シンプル」という2軸は、価格とデザインの相関性は強くないためOKです。

例えば「高価格⇔低価格」と「高級感⇔庶民的」の2軸にすると、高価格であることと、高級感があることは関連性が高いと考えられるため、選定する2軸としては不適切であるといえます。

自社の製品・サービスの購買決定要因の中から適切な2軸を選んでポジショニングマップを作成し、自社・競合他社をマップ上に配置しましょう。競合他社が進出していない分野や差別化につながる要因を見つけられます。

STP分析をおこなう際の注意点

STP分析をおこなう際によくあるミスは、正確なデータに基づいた分析をおこなわなかったために、間違った分析結果を出してしまうことです。

特に、そのサービス・業界に関わっている期間が長い人ほど思い込みで分析をしてしまいがちです。感覚や経験に頼らず、しっかりと統計的リサーチに基づいた分析をおこないましょう。


STP分析で成功した3つの事例

事例1.ユニクロ
ユニクロは他のアパレルメーカーが気づかないようなユニークなセグメンテーションをおこない、差別化に成功しています。

セグメンテーション
顧客を性別や年齢で分けるのではなく、「カジュアル志向かフォーマル志向か」「トレンド志向かベーシック志向か」という2つのセグメントで分けました。

ターゲティング
セグメンテーションをもとに、「カジュアル志向かつベーシック志向」の顧客層をターゲットとしました。

ポジショニング
「低価格かつ高品質な衣料品を提供する企業」としてポジショニングしました。

参考:ユニクロのマーケティングから学ぶ!セグメンテーションが重要??|SONIDO

事例2.すき家
吉野家との差別化をはかったことで2008年以降に店舗数を伸ばし、現在は最大手の牛丼チェーン店となりました。

セグメンテーション
すき家は「牛丼市場」ではなく、「外食・中食・内食」というセグメントで市場を細分化しました。「外食」に対して、「中食」とは外部で調理されたものを自宅で食べること、「内食」とは自宅で手作りの料理を食べることです。

ターゲティング
「外食・中食市場全体」にターゲットを設定することですき家は顧客層の幅を広げました。さらに、それまでの牛丼チェーン店の顧客層のメインは男性一人客でしたが、すき家では「ファミリー層・女性層」をメインのターゲットとしました。

ポジショニング
すき家は「メニューが豊富でテーブル席もある、家族連れ・女性も入りやすい飲食店」としてポジショニングしました。

参考:牛丼「すき家」のマーケティング戦略 | 経営コンサルタント 戸塚友康 の推進力ブログ!

事例3.スターバックス
「家でも職場でもないくつろぎの空間」という「サードプレイス(家と職場の中間地点、第3の居場所)」と呼ばれるコンセプトは昨今では定番になっていますが、スターバックスは先駆けて、このサードプレイスのニーズに気が付き、成功したと言えます。

セグメンテーション
スターバックスは「大都市か地方都市か」、「経済的な地位が高いか低いか」などのセグメントで市場を細分化しました。

ターゲティング
セグメンテーションをもとに、「大都市で金銭面に余裕のあるオフィスワーカー」を主なターゲットとして設定しました。

ポジショニング
スターバックスは「高くて美味しいコーヒーをおしゃれで高級感のある空間で提供する」という、独自の路線を確立しました。

単純なフレームワークですがすごく重要なので、ぜひ一度試してください。

それではまた明日!!

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