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TDL二次創作「A twinkle of Mouse」番外編:機長見習い時代のデイビス
雰囲気も形式も大分違いますが、立ち位置的には、『番外編:訓練生時代のデイビス』の続き。
二年近く放置していた下書きを見つけたので、こっそり投下します。
「俺たちストームライダーコンビの歴史は、深く、長い」
「いきなり何さ」
神妙に胸に手を当てて呟くデイビスに、冷静に訊き返すミッキー。また変なことでも語り始めようとしているのだろうか。
「海よりも深く、川のように長いんだ。そんじょそこらのア
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」第二章のあらすじ
諸事情により、しばらく第二章が書けなさそうなので、申し訳ありませんがあらすじだけ置いておきます。。
ダイジェストではありますが、今後の展開を知ることができますので、それで問題ないという方のみ、お読みくだされば幸いです。
あらすじ以降のエピソード〜最終話までは、ストックがあるので、先にそちらを公開するかもしれません。
あらすじで書かれているエピソードは、着手できるようになったら公開します。
それ
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」幕間劇:生きる者、死ぬ者
『おい、スコット。これ全部、俺が食っていいのか!?』
『フフフ、お前のために、一流の食材を用意したんだ。思う存分食ってくれ』
爽やかな風の吹き抜ける草原に、白いテーブルクロスだけが、妙に鮮やかにはためく。不思議な響きを立ててぼうぼうと草は波打ち、彼らの髪も掬いあげては、柔らかな動きで散らしてゆく。草原の只中の、大きなテーブルの前に腰掛けたデイビスの隣で、なぜかコックコートに身を包んだスコット
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」 19.スプラッシュ・マウンテン③
(ディズニーを、頼んだよ)
(僕は、ディズニー家の一員じゃないよ)
(うん、でも僕自身はもうディズニーじゃない。昔はディズニーだったけど。
いまは、ディズニーという名前は、長いあいだに僕らが大衆の心の中に育ててきたものを指してるんだ。分かるかい?)
(うん)
(僕もそばにいて助けるから、
何か困ったときは、僕がここにいるからね)
(うん)
(約束できるかい?)
(うん)
(僕、
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」番外編:訓練生時代のデイビス/あの男
前作『空の上の物語』の前日譚。……ですが、どちらかというと、今作(『A twinkle of Mouse』)との結びつきの方が強いです。
天空都市を目指して進歩してゆくポートディスカバリーの夜明けと、その裏腹に、夢破れてゆくうら若きパイロットたち。ちと暗めの話になりますが、スコットと出会う前のデイビスが、どういう人間だったのかが伝われば幸いです。
轟音の中で、薄汚れた海鳥の羽根がひとつ、潮混
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」 18.スプラッシュ・マウンテン②
ディズニーランドは、鏡の中に入りこんだアリスのようなものだ。ひとたびその入場門をくぐれば、そこは別世界なのだ。
———ウォルト・ディズニー
「じゃーん。これがリーマスおじさんの水車小屋です」
「ほえー」
「本当にこんなところから辿り着けるのか?」
「もっちろん。ロビン・フッドの名に賭けて、これこそが正真正銘、スプラッシュ・マウンテンへの入り口だよ」
自信満々に示すロビン
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」17.スプラッシュ・マウンテン①
「スコットーーー! スコット、スコット、スコット!!」
「なんだよ、やかましいな。ずっと蛙になって飛び跳ねていたせいで、足が痛いんだ」
ホーンテッドマンションを後にした面々は、ようやく、溢れ返る眩ゆい朝の光の中に網膜を洗った。全員徹夜である。怠い体、ぼーっとする脳、目がシパシパする……と瞼をこするメンバーの中で、デイビスだけは自分が最も傷だらけということも忘れ、ニヤニヤとほくそ笑みながら、ス
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」番外編:デイビスとスコットのクリスマス
「なあ、デイビス」
「なんだよ、スコット?」
「なぜ俺は、クリスマス真っ只中のディズニーランドに、わざわざ貴様といなければならない?」
ざわざわとさんざめく人だかり。華やかなリボンに、濃密に紅いクリスマスローズ。人々の顔の映りゆくオーナメント。翻るタペストリーは、紛れもなく、今日が聖夜であることを祝福している。
目を細めれば、睫毛に引っかかるほどに溢れ返る黄金のイルミネーションに、わあ、
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」16.ホーンテッドマンション④/VS. Dr.Facilier
天空を占める沈痛な色相は、ある一色を皮切りにして、まもなく反転しようとしていた。
Blue hour。
すべてが濃密な青に染まる。
重々しく澄み渡ってゆく紺碧の空は、いよいよ地の底から立ちのぼる光を察知して、じきに太陽が出るか、出ないかというところまで迫っている。大気は、旭が射し込んでくる瞬間に向けて、渺々たる風音の中で精神を張り詰めているようだった。無言の葬列と見紛う荘厳な棚雲の群れ
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」15.ホーンテッドマンション③/VS. Fantôme
「とにかく、この馬鹿騒ぎをなんとかしねえと!」
デイビスは不気味な呻き声をあげる甲冑を押しのけて叫んだ。薄暗い屋根裏部屋の奥底で、埃まみれになっていた楽器たちは、青い蛍を思わせるミュージック・ダストの燐光に触れられて、ふたたび、往年の輝きを取り戻すかのようであった——しかも今度は、演奏者の手を借りず、自分自身の力で。水を得た魚のよう、彼らは重厚な四拍子に乗せて、妖しい短調のメロディを奏で始めた
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」14.ホーンテッドマンション②/VS. Oogie Boogie
「デイビス。ねえ、デイビス、起きてったら」
「あ、あれ?」
鳴り響く雷がガラスを震わせる不吉な夜も、窓のない密室の天井には、何らの光も閃きはしない。
深い暗闇の中で、呼び声に応じてうっすらと目を開くと、自分の肩を揺さぶりながら、心配そうに覗き込んでいるミッキーの顔が見えてくる。デイビスは口許のよだれを拭いた。身動ぎをしたせいで、広がっていた髪と床が、じりり、と擦れる音がした。
「うー。
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」13.ホーンテッドマンション①
「ぜ〜〜〜〜〜〜ったい嫌だ!!!!!」
反抗期の子どものように主張するデイビスを、今度ばかりは、誰も馬鹿にする者はなかった。みな、どんよりと表情を曇らせながら、なるべく目の前に佇むそれを視界に入れまいと、無言のままに顔を逸らしている。
「こういうところは虫の巣窟だって、俺は知ってる。死ぬほど知ってる。クリスタル・スカルの魔宮で、しこたま学んだ」
親指を噛んでブツブツという呟きにつづけて
TDL二次創作「A twinkle of Mouse」12.白雪姫と七人のこびと/VS. Evil Queen
(ペラリ)
昔、白雪姫というとても可愛いお姫様がいました。しかし白雪姫にとっては継母の女王はうぬぼれが強くて、いつかは姫が、自分より美しくなるのではないかと恐れていました。
そして毎日、魔法の鏡に訊きます。
「魔法の鏡よ、この世で最高に美しい女は誰か」
そして鏡が、「あなたが最高です」と答えると、白雪姫は、女王の酷いやきもちを受けずに済んでいました。
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TDL二次創作「A twinkle of Mouse」11.ミッキーマウス・レビュー/あのころ
「……やっぱり、二日酔いで潰れているんじゃないか」
赤えび亭に宿を取ったミッキーが、たっぷりと鼻ちょうちんを膨らませて眠った翌朝、とん、とんと足音を響かせて階段を降りてゆくと、そこには爽やかな鳥のさえずりの下、窓から降りそそいでくる朝陽に照らされて、ゾンビの如くソファに身を投げだすデイビスとスコットが待ち構えていた。早朝から嫌なものを見たな、とミッキーは眉間に皺を寄せて、部屋の隅にあるフリーリ