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【現役フリーランスに聞いてみた#04】10年探し続けた、納得できる“自分なりの”働き方

※本記事は、ギークスマガジンにて2017/04/10に公開した記事です。

読者の皆さんは、“フリーランスエンジニア”という言葉からどんな働き方をイメージするでしょうか?今「フリーランス」の働き方が注目されています。中でも、専門技術職であるエンジニアは、この働き方がマッチする職種です。

しかし、まだ実態を知れる情報は少ないのが現状です。フリーランスを目指すエンジニア、悩んでいるフリーランスエンジニアにとっては、リアルでもネット上でも「先輩」を探すのは難しいですよね。

今回は、現役フリーランスエンジニアにインタビュー。なぜフリーランスを選んだのか?何を乗り越え、何に気付いたのか?そして、この先何を目指すのか? 「先輩」たちの生の声をお届けします。

今回紹介するフリーランスエンジニア Kさん

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大阪のソフトウェア開発会社のシステムエンジニアとしてキャリアをスタート。その後スキルチェンジを求めて東京へ転居・転職。文化の違う企業をいくつか経験し、会社を通してではなく自分の好きなことで自己実現をしようと想い、2015年フリーランスになります。現在は開発業務と趣味のバンド活動を両立されるなど、ワークライフバランスを重視した働き方を実践。

やりたいことは?あるべき姿は?模索し続けた20代

Kさんは大阪のソフトウェア開発会社からエンジニアとしてのキャリアをスタートさせました。当時、世間で注目を集めていた楽天やライブドアへの憧れもあり、Webサービスの開発に携わることを希望していましたが、Kさんの配属はサーバーのオペレーション。プログラミングに関係ない、この業務は2年続きました。

「年がたつほどにプログラミング経験も積めず時間だけが過ぎていくことに焦りを感じていました。上司に相談すると別の案件を紹介してくれたのですが、またもやWebとは関連の無い、さらに片道1時間半かかる隣の県の現場。もう待ったなしだと思い、見切り発車ではありましたが、翌日には会社を辞める意思を伝えました。」

次の仕事を決めず会社を辞め、当時金銭的にも厳しい状態だったKさん。振り返るとまさに「命懸け」だったそうです。そんな中見つけた「未経験でも研修をしWebエンジニアに育てる」という転職情報誌の魅力的な言葉に、上京を決意しました。

上京後就職した開発会社で4年経験を積んだのち、大手ポータルサイト会社に転職。ここでの経験はKさんの大きな財産になりました。

「携わったのは、ソーシャルアプリの立ち上げ。ただプログラミングをするだけでなく、事業とリンクする方法を模索する必要があり、事業目線を持ちながらビジネスをする楽しさを経験させてもらいました。」

この時期のKさんは、しゃかりきに頑張り、昇格したり裁量権が増えたりと評価されることを「ここにいて良かった」と思う理由にしていました。仕事の時間は1日の大半を占めます。だから「仕事の時間を自分が楽しい、良いと思える時間にしたい。」その思いから会社に貢献し評価されるべきだと、ひたすらに頑張っていたようです。

帳尻を合わせる生き方はやめる! 価値観の変化

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Kさんの努力は報われ、会社での立場も上がっていきます。順調に築かれる社内評価の一方でKさんは違和感を抱えていました。

「経験と年収を積むほどに、会社の目指す方向と、自分の意思のギャップが大きくなってきたんです。今までは“会社での評価”=“自己実現”だと、無理にリンクさせようとてきました。でも、会社が自分に求める姿と自分自身のありたい姿のバランスが取れなくなるにつれ苦しくなってきてしまい・・・。」

役割などが比較的明確でない規模の小さい企業であれば、しがらみは解消されるのでは?と、ベンチャー企業へ転職します。しかし、既に確立された強烈な文化になじむことができませんでした。

「ここまでの経験で、キャリアによる自己実現と会社が求めるアウトプットをあわせようとしていた自分の価値観が崩れました。このとき、IT業界で生きる人間として、どんなライフスタイルが一番自分に合うのかゼロから見つめ直すようになったのが、今フリーランスとして踏み出すきっかけになりました。」

会社員ではなくITエンジニアとして生き残るには、起業するかフリーランスになるかだと考えたKさん。自分でサービスを作りたいという想いも、アイディアも無かったためとった最良の選択がフリーランスでした。

自分が納得して生きていくために選んだフリーランス

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自分が納得して生活したい、その想いからフリーランスになりました。フリーランスでの経験を積むうちに自分はITビジネスの中にアイデンティティを見出すタイプではないと自覚できたんです。そのときフラットな感覚で自分を見つめることができて、自己実現は趣味のバンドで出来ると、きちんと区別することができました。」

仕事は手段で、プライベートで自己実現をする。それがKさんの見つけた自分が納得できる生き方です。正社員であれば、ある程度会社の状況を理解し、企業の求めるものにコミットすることが求められます。それは、開発業務だけでなく、社内イベントやメンバー間のメンタルフォローアップなどに至るまで。Kさんにとって、それらは違和感のあること。フリーランスになることで、あらゆるしがらみから開放されました。

「自分にとっての仕事の意味が明確になることで、“稼ぐ”ということに注力して仕事をするようになり、エネルギーの使い方がとても効率的になりました。会社のアイデンティティへの気遣いにエネルギーを消耗させるのではなく、ビジネスとして重要な要所要所を押さえた仕事をしています。」

今の武器は、しゃかりきだったあの頃得たビジネススキル

フリーランスとなった今、Kさんの武器は企業の中で奮闘していた時期に得たスキルです。外注先との窓口を任され、「言った言わない」の論争や発注単価交渉、納期の遅延など修羅場になりそうな場面を乗り越えてきました。そこで得た“交渉力”は、Kさんのフリーランスとしての働き方を下支えするものとなっています。

「例えば、これまで20時間掛かっていた作業が自分の働きかけによって2時間になれば、その削減した18時間は、自分の交渉材料になります。そうした感覚を鍛える経験を出来たことは、今にとても生きていますね。どのようにビジネスが成り立っているかを知ることで、会社に都合よく使われたり、立場が弱くなったりすることを防ぐことができます。」

Kさんいわくフリーランスエンジニアには、2つのパターンがあるそう。
ひとつは、ものづくりが好きなプロフェッショナルタイプ。技術に情熱を傾け、それによって自己実現をします。もうひとつは、戦略的にクライアントの需要の高い要求ポイントを見抜き、それに注力して応えることで効率的に報酬を得ていくビジネスマンタイプ。Kさんは後者でした。

「私はITビジネスで何か成し遂げたい野望はありませんが、IT業界そのものは大好きなので、これからもIT業界に身をおこうと考えています。子供の頃にアニメや漫画の中で見たハイテクメカを扱う登場人物たちへの純粋な憧れがいまだにあるし、ITによって世の中がどんどん便利になっていくことに未来を感じます。戦略的にみても、今後ITサービスはどんどんインフラとして根付いていき、無くなることはないと思っています。だからこそ、仕事の領域にIT業界を選んでいます。」

フリーランスだからできるバンド活動で自己実現

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そんなKさんが最もテンションが上がるのは、月に一度のライブの瞬間。ステージ上で演奏をしているときが一番の自己実現を実感するときだといいます。練習は休みの日と平日の昼休み。日中の練習時間が3時間ほど掛かるときもありますが、稼動現場を抜けたとしてもフリーランスであれば会社の手続きは不要です。

「休憩なども自由にとれますが、業務に差支えがあることはもってのほか。自由度が高い分、時間に対するシビアさは正社員のときに比べ強くなりました。私は30分単位で時間の価値を意識するようにしています。」

私流フリーランスエンジニア3つの教訓

Kさんのインタビューから3つの教訓を得ることができました。

■必ずしも「キャリア・会社での評価=生きがい・アイデンティティ」でなくてよい
Kさんは、キャリアによって自己実現しようと、働くことにプレッシャーをかけていました。「もし、その働くことへの違和感を解消しないままでいたら、メンタルが潰れてしまっていたかも知れない。」といいます。仕事が楽しめることはとても大切ですが、仕事だけが人生ではなく、自己実現の方法はいくつもあるのだとKさんの生き方は物語っています。
■高い技術力だけが武器じゃない。交渉力や提案力も武器になる。
フリーランスエンジニアにはいわゆる即戦力が求められます。しかし、それは一概に高い技術力を指すのではなく、経験やスキルに裏付けられた適切な提案なども該当します。Kさんは正社員であらゆる経験をしましたが、それをただの通過点にするのでなく、「この経験でどんなスキルが手に入るか、応用すると何が実現できるか」を考え、実践。成功体験に変えてきました。その意識的に身に着けたビジネススキルは、フリーランスエンジニアとしても多くの場面で活用できます。
■ITビジネスに自分の目標を見出せない、そんな人こそフリーランス。
「IT業界で自分の成し遂げたい目標や情熱があるのであれば、自分で起業したり、志を同じくする企業にジョインするといい。」とKさんは言います。なんとなく仕事に違和感があったり、転職を考えている人、IT業界に興味はあるけど自分で何がやりたいか見つけられない人は、フリーランスの働き方で納得のいく方法を見つけられるかもしれません。「会社・仕事に自己実現を投影させずに、市場評価を得続ける。私は、自分が掲げている“納得”の出来る生き方が実現できています。」そう最後に語るKさんの姿は充実しているように見えました。

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