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山水郷チャンネル #08 ゲスト:馬場未織さん(建築ライター/NPO法人南房総リパブリック)[後編]

山水郷チャンネル第8回目は、馬場未織さん後編です。

Profile: 馬場未織 ライター/NPO法人南房総リパブリック理事長
1973年東京生まれ。日本女子大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2007年より「平日は東京、週末は南房総」という二地域居住を家族で実践。2012年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市職員らとNPO法人南房総リパブリックを設立。里山学校、空き家・空き公共施設活用事業、農ボラ事業などを手がける。著書に『週末は田舎暮らし』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く住まいの金融と税制』(学芸出版社)など。
南房総市公認プロモーター。関東学院大学、宮城大学非常勤講師。

後編では、南房総リパブリックの活動について更に詳しくお聞きしていきます。

南房総DIYエコリノベワークショップ

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毎年力を注いでいるのが、"エコリノベ"という古民家リノベーションのワークショップ。写真は2017年のメンバーです。
毎年、1日だいたい20人で4日間、メンバーを少しずつ変えながら、100人程度の方々が参加しています。
古民家を暖かくしたいという気持ちがあって始めたものです。
うちが築120年の古民家で、それがいいと思って手を入れないで住んでたんです。でも、冬は氷点下。中山間地なのでマイナス6度くらいまでになって、鼻筋が凍るほど寒いんです。
暖かくなるのが早いので、みんな冬場をモコモコに着て凌いでしまう。手には文明の利器スマホを持っていながら、モコモコを着ながら、ヒートショックで亡くなる方がいるって、どうなんだろうと。そのギャップは現代にどうやったら埋められるか。
一棟の断熱改修って700万円するって聞いて、普通に住んでる人にはそこに使うそんなお金はないはずだけど、もうちょっと暖かく住めないかなと。
竹内(昌義)さんという"みかんぐみ"の設計者の方が断熱性の高い家をよく造っていて、内覧会に行った時に、古民家で心地良く住まうためのリノベーションを自分達でできる方法ありますかね?とお尋ねしました。そしたらしばらく考えて、あると思うよって言ってくださって。やってみようか、実験ですよね、っていう形ではじめたのが、2016年です。
お金がない人達でもやれるという事、温度も検証して、絶対暖かくなろうっていう、この2つをちゃんと掲げて始めました。
一番寒い時にやろうって言うことになり、1月に開催しました。最初は地元の方にお声がけと思って募集をかけたら、意外と全国から同じ悩みを抱える方達が訪れてくださって。
最初は座学をするんですね。突然手を動かすんじゃなくて、今から私達がやる事にどんな意味があって、それがどういう影響を地域にもたらすか、っていうのを頭で理解して手で働くと、全然定着が違うって事がわかって。みんなで作るとはなんだろう、断熱ってどんな効果があるだろうっていうのをわかりながらやっていくんですね。
ここで4日間やるとみんなスキルが上がるのと、仲良くなるんですよね。今でも毎年コミュニティが大きくなっている状態で、だんだん私達の手元を離れて、自分達のDIY集団を各地で作り始めたりしている。それはすごく嬉しい事で。

私がいつももどかしく思っていたのが、「里山いいよ」とか「里山暮らしいいよ」って言っても、共感してくださるのは実際にそれをしている人達だということです。したことがない人達にどうしても到達しないんですよね。いいねって言うんですけど、本当に届いていないっていうのがわかるんです。なんでなんだろうってずっと思ってて。言葉を尽くしても映像を見せてもなかなか伝わらないと。
でも、こうやって一緒に手を動かすと突然わかってくれるんですね、住んでなくても。作業を一緒にする事で地域と関わるってすごく大きな事で、当事者意識ってそこで芽生えるんだなっていう事がわかって。
これをやり始めてから、一緒に作業する、ともにつくるって事を大事にしようって我々は考えるようになりました。

エコリノベワークショップは、参加費2万円(材料代と講師費)。補助金は取らず、みんなで手を動かし知見を共有することにしている。DIYでの断熱改修は、材料費20万円、手間代0円。

平群小学校群の再生・活用事業

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空き家の改修をしていたところ、市役所の方から空き公共施設も結構あるんだよってうかがって、始めたのが平群(へぐり)小学校群の再生・活用事業。このロの字型の建物が全部空き家になっちゃったんですね。黙ってたら壊されちゃうんだよって話を聞いて。
奥の小学校棟が美しかったんです、とても。地平線が綺麗に通っていて、聳え立つ伊予ヶ岳の麓に建っている学校で、ここはぜひ残したいなと。再開発するイメージがむしろ無いなという所で。
2016年くらいから、何にも市の予算とかもついていないところから分け入って、市長に何度も会って、担当の方とかといっぱい話をする中で、使わせてもらえたらこんな風にしたいねっていう、まずは絵を描いてみたというのがこれです。

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飲食を入れたりして、最低限の設備のホステルを作ろうと思っていて。融資もたくさんは受けられないので、教室をそのまま使う。お風呂もドラム缶風呂とかを駆使して。
後はキャンプをしたり、平日使われていない時は塾として子供達が使ってもいいなと。ここが廃校になったので、この辺に住んでる子達は遠くの学校に行ってるんですよ。なので家に帰る前に一回ここに寄って、勉強したり遊んだりして帰る、みたいな拠点に。例えば子供達とツーリストが交わる事ができるんじゃないかとか。今まで動線が交わらなかった人達を交わらせるような仕掛け作りをしようという風に考えていました。
地元の人と、移住した人と、二地域居住する人と、何度も来るリピーターと、一見さんの観光客とみたいなのが、意外と混ざり合う場所がないので、混ざり合う場所ができたら、新しい田舎のひとつの形になるんじゃないかと。
地元の商店や、酪農をやっている人達と一緒に、マルシェの実行委員会を作って、「へぐりマルシェ」を何度も開催するようになりました。
冷え切って血の気の通っていなかった小学校の校庭に、まずは血の気を戻そうという事で、人の気を戻していったら、こんなにたくさんの人がこの辺に住んでるんだねって事がわかったりとか。

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ナイトマルシェ。地元外の人たちも一緒に地元のお祭りに参加できる。

地元のお祭りって入りにくいんですよね。とっても楽しそうに身内でやっているものに外から入るって結構ドキドキするもので、誰に話していいのかもわからないし、とっかかりがないんですけど、都市の方も出店できますっていう体裁にしてみたら、間口が広がりました。

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子供達と建築家協会の方と一緒に、見た事もない風景をつくってみたいなって、巨大な割り箸みたいなもので原寸大の建築を作ってみようと。
1時間くらいでできるんですけど、自分の家みたいにして遊んだりとか。実験する事に価値を見出していて。やったこともない事をダメかもしれないけどやってみようって。それがダメでも許される場所っていうのを作りたかったんですね。

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同じ場所を使って、合宿や企業研修をしたりもしました。一番印象深かったのは、近くにいた酪農家さんのところを訪れて、放牧したホルスタインの牛乳がこうやってできていて、こういう牛からこんな味のものがとれるんだって体験した翌日に、その素材を使って、料理家さんをお招きして、テーブルセッティングとか全部設えて、最高の朝食を最高の環境で地元と東京の人に体感してもらうっていう事をやりました。
酪農家さんは最終的にそれがどういう風になるかって追えないところを、とても美味しい料理になって出てくるのを実感してもらえるし、ここに来た事がない人達にも、こういうクオリティのところがあるんだ、定型とは違うもてなされ方があるっていうのも知ってもらいたかったんですね。ハイブリットができるんだよという事を一緒に体感したという時です。
地元の人の中には、この小学校に通ってた人もいるんですよ。もう一回母校でこんな事ができるなんてって喜んでいただく事ができました。それが何より嬉しかったかな。

布良ハウスと房総半島を襲った台風

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こういう活動をしていると、二地域居住したいって言ってくださる方がたくさん出てきました。3年前くらいからすごく多くなってきて。
2019年に、リクルートホールディングスのトレンド予測キーワードで"デュアラー"っていう言葉があって、デュアルライフが今後来ます、みたいな潮流もできたりしたんですが、それより少し先んじて、1年限定で住めるトライアルシェアハウスを作りました。
これは房総半島の南端の布良(めら)という地域の海際に作ったんです。2年くらい稼働していたんですね、大学を出て働きながら二拠点をしている若い人と、ご夫妻で二地域居住の場所を探している方とが住んでくださっていたんですけど、去年の9月に台風が15号、19号、21号と三連発でこの半島を襲って。

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ブルーシートの集落に変わってしまいました。布良ハウスも夜に瓦が全部飛ばされて、住んでた人達が命の危険があるので、車の中に一回避難したら車のリアガラスが割れて。
一回雨がバーっと入っちゃったお家って、こうなるんですよね。

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躯体にカビがどんどん生えてきてしまって。通風が確保されているともう少しマシかもしれないですけれども、湿気がこもって白いカビの花がばーっと。
床が反り返った状態になっている所に住めないよねという事で、集落が穴ぼこだらけになっていくプロセスに入ってしまっています。
次の台風で飛ばされちゃうから解体をして。もう戻ってこないですよね、そこに住んでた人達は。残って留まっている人達は火災保険に入ってた人達がほとんどです。昔からの人は保険に入るって考えがなくて、修理が立ち行かずに離れていく人達がすごく多くなりました。
みんなで関わっていた地域だったので、9月9日に最初の台風が来て、どうしよう、私達に何ができるだろうって考えた時に、サポートセンターとかボランティアセンターをやろうよって話が持ち上がったんですよね。
ボランティアをやった事がないし、何かあった時に保証の問題とか大変だと。お金を扱うと後で厄介だとかは聞いていたので、プロでもない私達がやるか?って思ったんですけれど、二地域居住もしていないうちのメンバー達が、我々がやらなくて誰がやるの?って言ってくれて。そんな風に愛着を持っていてくれた事に熱くなって、始めました。

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UDSが運営するインバウンドリーグっていう新宿のシェアスペースの一階を借りて、物資の集荷とそれを地元に送るっていうのを毎日毎日やってたんですね、ローテーションで。今までNPOに関わってくれていた方がボランティアで入ってくれて、仕分けしたり、送り届けたりっていうのをしてくれていました。

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一方で、物資を届ける先がこんな状態で、瓦礫がめちゃくちゃになっているのを一つ一つ片付けたり、海岸線が汚くなっているのを片付けたり、ボランティアをする半年になりました。他の活動を一切停止して、ボランティアに徹していました。

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今年に入って、家を失った人達のボランティアはあるけれども農業に対してのボランティアは手薄だなって気がついて、ボランティアに行きませんかって言ったところ、来てくれた人達が、自分達が元気になって帰っていくんですよね。そこで働いて、農家さんに喜ばれて、顔の見える農家さんができたっていう事、そしてファンになっていくっていうプロセスがあって、ただのボランティアじゃないなと。
ボランティアっていう言葉の限界も感じて、で、「ボランティアのその先へ」プロジェクトっていう、ファンになっていくプロセスをみんなで共有しようっていう事業を立ち上げて、やっているところです。農業体験と何が違うかって言うと、私達が決まったプログラムをやるんじゃなくて、その時に農家さんが困っている事をその日に聞いてやるっていうのが違うかな。


後編ではこの他、14年間続く二地域居住のモチベーション、ボランティアで消えない支援者になるといったお話や、馬場さんにとっての10年後20年後こうなったらいいなという生活スタイルもお聞きしました。
ぜひYouTubeでご覧ください。

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