中国発イノベーションの「スピード」にどう向き合うか?

モバイル決済、無人店舗、信用経済など、中国がイノベーションの最先端を行く領域は多く、スピードは加速している。これらはアリババ・テンセントをはじめとする巨大企業+スタートアップからなるエコシステムが、新しい価値を創造しては淘汰を高速で繰り返し、社会全体として進化する様相だ。専門家2人の話を聞ける会(2019/12/9@横浜)の主な内容をまとめる。

<登壇者>
匠新(ジャンシン) CEO 田中年一氏
北京国能環科環保科技有限公司 海外主管 佐野史郎氏

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■田中氏:中国の「スピード」は圧倒的。日系企業は強みを活かしWin-Winの姿勢で

・1日1500社登記される国。競争激しい。中国はビジネスとしての賢さを優先、0→1より1→10~のイメージ。スピード優先で良いものはすぐ取込む。
圧倒的スピードの事例3つ
①シェアバイク:サービス乱立→淘汰の時期。大手のofoも経営不振。バイク自体も色々な形状あったが、2種類ほどに収斂してきた。乗りやすさなどユーザーのフィードバックから。社会全体として利用しやすくなっている。
②ラッキンコーヒー:創業1.5年でナスダックIPO。今年、中国スタバ店舗数を超える見込み。注文~受取をアプリで完結させ待ち時間をなくし、ピックアップ・デリバリー中心の小型店舗として効率的運営を実現する革新。
③モバイル決済:アリババとテンセントの2強。この3年で取引総額5倍の2500億元に成長見込み。
中国エコシステムと共創する際の日系企業の強み6つと、Win-Winの姿勢が重要と述べられていた。
1. グローバルネットワーク(中国以外への販路など)
2. 非デジタル分野のテクノロジー(素材、精密機器、ロボット等)
3. ライフスタイル関連
4. 安全・安心のブランド
5. コンテンツ(アニメ、キャラクター)
6. オフラインのリアル店舗
6については、中国では日系コンビニも多く、リアル店舗ノウハウの評価は高いということか。イオンディライトが中国AIテック企業とJV設立、無人店舗運営事業ローンチを事例に説明されていた。

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■佐野氏:巨大企業CVC「投資」によるエコシステム。日系企業は橋渡し役確保を

・北京が投資、人材の中心。ベンチャー投資の30%が北京(2位上海17%)。ユニコーン企業も北京が1位(グローバルではシリコンバレーの次)。北京大学、清華大学などトップ校の存在大きい。ムラ社会で、特定エリアに居て中国語話せないとインサイダーになれない。
北京のCVC事例2つ
①百度(バイドゥ):アクセラレーションプログラムを運営、AI/自動運転/スマートホーム領域に投資。1000社応募→73社選抜。うちトップ約10%のスタートアップへ出資検討、エコシステム化
②小米(シャオミ)。シャオミ・エコシステムとして、スマホをハブに、連動する機器・サービスを広げる構想。CVCは本体から切出し自由度高く運用。少額出資によるエコシステム化で、スタートアップのスピード・自由度は確保しつつ、シャオミ統一のデザインやサプライチェーンなど共通アセットを活用。スマート家電(掃除ロボや炊飯器)は日本市場参入もリリースされ、日系企業の脅威になりうると述べられていた
https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0525006_01.pdf
・日系企業が中国スタートアップと直接向き合うのは、言語・文化の面でハードルが高い。匠新などの橋渡し役企業の活用がおすすめ。グローバルでサービス提供するPlug&Playなどは、日系企業と肌感覚合うのでは。

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■Q&A

Q:北京の資金調達環境は直近でもいいのか?
佐野氏:2年前までが一番良かった。直近はシリコンバレー同様、選別する向きあるが、事業が強固な企業のバリュエーションは伸びている。健全な環境の認識。
Q:ラッキンコーヒーが好例とすれば、Nextラッキンが出てきておかしくない。ラッキンの成功のポイントは?Nextプレイヤーはいるのか?
田中氏:Nextラッキンのプレイヤーは、現在見当たらない。それはラッキンが圧倒的なスピードと投資で広げたから。スターバックスは間隙を突かれた。引っくり返す投資をスタートアップにはできないのでは。
佐野氏:相当な先行投資で資金を燃やし続けている。収益モデルは後からついてくるとしているが、懐疑的な見方もある。

<まとめ>
中国イノベーションエコシステムの直近動向が、「スピード」と「投資」の点で語られていた。日系企業の向き合い方として、「スピード」ある中国スタートアップと共創するには、強みを活かしてWin-Winの姿勢で臨むこと。「投資」に関しては、橋渡し役企業の活用で言語・文化の壁を越え、中国スタートアップと向き合うこと、などが語られていた。

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