爆発した速度で永遠に飛ぶ

とてもやりきれない。自分の中のわだかまったどす黒いものを少しでも晴らそうとひたすらに部屋を掃除した。
とても天気が良く、気持ち悪いとすら思った。自分一人残された部屋で、今まで私が注いできた時間と恋が、無駄だったと、意味のないものだったのだと信じたくなかった。
彼の良心に賭けた私の必死の思いはことごとく裏切られ続けてきた。どうして彼に平気でこんな芸当ができてしまうのか、全く分からなかった。私の一番大事であり、弱い部分はことあるごとに粉々にされ、その度に少しずつまた直してやっと元通りになったかと思えば、またハンマーでぶち壊された。

全然分からないと思っていた。晴れた日なんて嫌いだ。日に焼けるし、一人では明るすぎて外になんか出たくない。それなのに彼と歩いている時は「晴れた日の散歩は気持ちいいね」などと平気で言えてしまう。それも言っている時は本心なのだ。
好いている人といることで、自分の思いが変に浮かれて、感情や価値観や意識なんかがこんなにも簡単に捻じ曲げられてしまうなんて恥ずかしいことだと今でも思う。これは恋愛への嫌悪でもある。
恋をすることによって自分が作りかえられてしまう。それまで知らなかった自分を知ってしまう。それが恋愛の醍醐味であり一番楽しい部分なのだと人は呆れたように笑う。
私はそんなに簡単に自分が全く別のものに作り変えられてしまうのが恐ろしい。恐怖でしかない。自分が恋愛をしていることについてはもう仕方がないと諦めているけれど、意思が無意識に自分の思いで制御できないうちにまったく別の方向に走り始めてしまうことが怖い。自分のことくらい自分の意識の元に置いておきたい。
恋人のためになんだってする、付き合い始めて今までの人間像とは全く異なった様相を見せるようになる人間を嫌悪していた。それなのに、彼に完全に作り変えられてしまった自分を、どうしても受け入れたくなかった。
私は昔より外に出るようになったし、海にも行くようになったし、今まで私のしなかったようなことを進んでするようになった。晴れの日でも進んで出かけようと思うようになった。今更気付いたって、変わってしまったことはもう変えられないのだ。嫌いだと思っていたことも、全部全部楽しかった。彼と一緒だったらなんだって楽しかった。

宇宙では、ピストルを打ったら銃弾は、天体の影響を受けない限り、そのエネルギーを保って永遠に飛び続けるという。
私の恋が、そのようならばいい。
他のものにぶち当たらず、永遠にどこかも分からないほど遠くまで行ければいい。揺らぐことなく、一定の速度で、エネルギーを保ったまま飛び続ける銃弾のように、どこまでもまっすぐに進んでいくことができたらいい。いつまで私がこの熱を保っていられるかは分からないけれど、彼への恋心だけは、せめて、疑いたくない。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

2
作りごと、ほんとうのこと、そのあわいleaveamessageforar5enik@gmail.com