母になるとは?命とは?静かに問いかけるドラマ『透明なゆりかご』

※作品の内容に触れる記述があります(いわゆるネタバレです)。ネタバレが苦手な方は、作品を先に是非ご覧下さい。

映画でなくTVドラマの話である。
子供の頃からTVドラマはあまり見ない方だったが、気になる番組は時折見ていた。『透明なゆりかご』(NHK、2018年)もその一つで、リアルタイムで放送してた時は1話目を録画し損ねて見れなかったが、番組の名前はずっと記憶に残ってた。それが今年5月、主演の清原果耶出演(主演)の朝ドラ放送直前に、一挙再放送されたので「今度は逃すか!」と全話(10話)録画、時間をかけながら全部見た次第。

漫画が原作のドラマ、というと「また漫画原作かよ」と思われる方も多いかもしれない(私もそのクチである)。でもこの作品はひと味どころか随分違う。そもそもの原作(同名の漫画)が、作者自身の看護師見習い時代の経験を元にしたそうで、特に産婦人科医院でアルバイトした時の話を中心に描かれている。その漫画をベースに脚色を加えながら出来上がったのが、ドラマ『透明なゆりかご』との事。

内容はこうだ。看護部のある高校に通い、看護師を目指す主人公・青田アオイは、夏休みに地元の産婦人科医院でアルバイトをする。そこで働きながら、病院に通う妊婦さんたちやその家族、ともに働く医師・看護師たちとの交流、様々な出産・中絶の現場を経る中で、「命とは何か」「母になるとは何か」について考え続ける。
次第に主人公のアオイや医師・看護師たちの話も描かれ、アオイと母との関係や、子供を持つ事と看護師として働き続ける事との間で揺れる同僚の姿など、職業問わず多くの人がぶち当たる問題も丁寧に描かれる。

どの話も選びがたいほど真剣で、私たちに訴えかけるものが強く、でもどこか軽やかに、時にはユーモアも(脚本だけでなく俳優陣の存在や演技も大きい)交えて描かれたのが良かったと思う。何より、妊娠=すぐ母になれる・子供を愛せる訳ではない事を、しっかり捉えていた事が大きかった(原作者のこの作品の執筆動機もそこにあったようだ)。
主人公のアオイ自身も母親と長年上手く行かず、アルバイト先の病院に来る人たちの姿を見ながら自身の過去を思い出して、自分の突発的な言動で母親をずっと悩ませてきたと同僚の看護師に吐露する(制服を着る年になって、注意欠陥多動性障害と診断される場面が出てくる)。アオイのかつての同級生の妊娠や、アオイの知り合いの女の子に起きた事件をきっかけに、アオイと母親が互いの苦しみに触れていき、そして「何があってもあなたの事を絶対に見捨てない」と母親に抱きしめられたアオイが涙する。その場面を見た時、かつての自分を思い出して目に熱いものがこみ上げた。

この作品の根本にあるのは、人間は独りでに生まれたり生きる事は出来ない、という事。生きる中で、周りの人たちとの関係に悩み苦しみ、怒ったり涙したり、そして時に喜んだりする。性別も年齢も関係なく、誰にとっても通ずる普遍的なテーマを真正面から描いたこの作品を、一人でも多くの人に見てほしいと強く思う。これは私たちの物語だから。
(番組HP) https://www.nhk.or.jp/drama10/yurikago/

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