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おおかみと7ひきのこやぎ

がらくた宝物殿

こどもの頃好きだったお話はいくつかありますが、なぜだか時々絵が鮮明に浮かぶのがグリム童話「おおかみと7ひきのこやぎ」です。そんなにたくさんの回数読みきかせてもらったのか、覚えていませんが、こやぎの1匹が柱時計の中に隠れる場面をよく思い出します。

さて、こどもはオチのわかった話を繰り返し見たり聞いたりするのを好むといいますが、大人も心に余裕さえ保てていれば好きだと思うんです、オチの見える話。そこで、今回はこんなお話を。

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おおかみと7ひきのこやぎ

むかしむかしあるところ、7ひきこやぎが母さんやぎと仲良く暮らした。母さんやぎは、こどもが大切。大切なこにゃ、とびきりめでたい名前が必要。そして調べた、この世でうんとめでたい名前。優劣つくのが嫌いな母さん、7ひきみんな、おんなじ名前。

寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに 住むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命の長助、っていうのがその名前。

あるとき、母さんやぎに大事な用事。こどもたちは、連れてけない。そこで母さん、こどもたちにいい聞かす。

「いいかい、外には悪いおおかみ、うろついています。決して出てはいけないよ。扉を開けてはいけないよ」

うん、わかったとこやぎたち。元気に母さん送り出す。さあ、それからは、パーティだ。おかしにゲーム、おもちゃに大声、何をやっても叱られない。やりたい放題こやぎたち。だけど偉いぞいいつけ守った。決して扉は開けないよ。

そこへ参上悪いおおかみ。とってもお腹が空いていた。耳に届いたこやぎのパーティ。

「いきのよさそな元気な声だな」

慎重おおかみ、すぐには行かない。こやぎたちのこと、よおく調べた。準備は万端！さあ、昼メシだ。


なんにも知らないこやぎたち。ノックの音で扉に集まる。

「あれれ、母さん、もう帰ったの？」

「そうよ、母さんもう帰ったのよ」

もちろんウソウソ。悪いおおかみのなりすまし。

「鍵を落としたのよ、開けとくれ」

だけど賢いこやぎたち。すぐに扉は開けなかった。

「母さん母さん、ほんもの母さん。それなら僕の名前を言って」

長男こやぎが機転を利かす。だけども慎重悪いおおかみ。準備はしっかりやってきていた。こやぎの名前？お安いごようさ！

「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに 住むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命の長助」

お見事正解、悪いおおかみ！だけどもこやぎは安心しない。「今度は僕の」と2番目こやぎ。お安いごよう！と悪いおおかみ。なんたって名前は一緒なんだから簡単簡単。

「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに 住むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命の長助」

お見事正解、悪いおおかみ！だけどもこやぎは安心しない。おんなじように3番目こやぎ。よおしまたか、と悪いおおかみ。昼メシまではもうひと踏ん張り。

「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに 住むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命の長助」

お見事正解、悪いおおかみ！だけどもこやぎは安心しない。おんなじように4番目こやぎ。待て待てまたか、と呆れたおおかみ。

「他のこもまとめて言ってやる」

「だめだめ、ほんとに母さんならば、僕らをまとめて呼びはしない！1ぴき1ぴきそれぞれ大切」

しょうがないので腹ペコおおかみ、4番目こやぎの名前をいった。

「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに 住むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命の長助」

お見事正解、悪いおおかみ！だけどもこやぎは安心しない。「今度は僕の」と5番目こやぎ。こうなりゃヤケだと悪いおおかみ。どうせ最後は豪華なメシさ。

「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに 住むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命の長助」

お見事正解、悪いおおかみ！だけどもこやぎは安心しない。おんなじように6番目こやぎ。お腹がペコペコおおかみさん。お腹が空いて力がでないよ。

「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに 住むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命の長助」

だんだん声が弱まるけれど、お見事正解、悪いおおかみ！だけどもこやぎは安心しない。おんなじように7番目こやぎ。よおし、最後だ。待っていろ。

「寿限無 寿限無 五劫のすりきれ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに 住むところ やぶらこうじの ぶらこうじ パイポ パイポ パイポの シューリンガン シューリンガンの グーリンダイ グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナの 長久命の長助」

お見事正解、悪いおおかみ！だけども限界！もうヘトヘト。

「こいつは母さんに違いない！」

こやぎたちは扉を開けた。そこにはヘトヘト動けぬおおかみ。最後の力も残っていない。あんまり名前が長いから、全員呼ぶだけで力尽きたのさ。

先人たちの知恵に倣って、こやぎはおおかみ煮込んだよ。スープをお皿に盛り付けて、並べてみてからようやく気づいた。

「僕らが食べるの、草だけだ！」

しかたがないからそのまま捨てた。

メシを逃した悪いおおかみ、最期はメシにもなれなかったよ！


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あとがき

どうでしょう。ちょっと悪ふざけがすぎましたかね。下敷きになった作品は、ご存知グリムの「おおかみと7ひきのこやぎ」それから古典落語の「寿限無」です。

この手のお話気に入った方にはカフカの「変身」パロディもあるよ。短いですから、どうぞよしなに。

そのほかいろいろやっていますので、そちらもよければどうぞよろしく。


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