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息子はユニコーンガンダムを見て「密だね」と呟いた

 自粛期間中に子供とユニコーンガンダムを見ていた。そこで、子供がぼそっといったのは「密だね」だった。そう言われてみると確かにそうだ。ガンダムの世界では、いつも密だ。ラプラス事件も、ダカール演説も、ジオン共和国独立宣言も、スィートウォーターのリニアカーの中も、いつも密だった。息子がいかに精神的にきつい状態であるかを察して心が痛んだが、興味深いなぁと思ったのだ。

 私の職場では既に対面の会議やゼミは行われていない。全てオンラインだ。使用し始めてみれば便利なもので、もう今後もずっとコレでいいんじゃない?とすら思う。なにより移動時間の短縮というのは有り難い。一方、ガンダムの世界でもオンラインでの会話は常に使用している。艦内やモビルスーツ同士で顔を見ながら会話しているから、そんな技術は既存の世界のはずだ。実際にユニコーンガンダムでもブライト艦長とカイ・シデンがミーティングをしている。なのに、である。描かれる会議は対面で「密」だ。マーサ・ビスト・カーバインが乗り込んだシーンでもタバコの煙がモクモクの部屋で「密」な会議が行われていた。というわけで、今まで全く気にもしなかったが、息子の「密だね」の言葉でハッとさせられて、コロニーが乱立し、モビルスーツが闊歩するような時代において、なおも対面で「密」な会議をする理由というのを、ちょっと考えてみた。

1)ミノフスキー粒子による妨害
 一つ目の可能性としてガンダム世界の架空物質、ミノフスキー粒子が挙げられる。これによって電波通信が遮断されてしまえば通信が出来なくなって会議が成立しなくなるだろう。なので会議は対面で、ということだろうか?
 不思議なのは、ミノフスキー粒子のコストだ。ガンダム世界では、べらぼうに使用されているが、あくまでも戦争のためだ。戦場(の現場)ではコストなんていってられないので、撒きまくる。それは分かる。しかし、わざわざ会議を邪魔するためにミノフスキー粒子を使用することのコストパフォーマンスというのが分からない。「妨害」するだけなら他にも手段はあるようにも思うし、妨害よりも「傍受」の方が価値がありそう、というのは私の間違った考え方だろうか?また、もしミノフスキー粒子が低コストで誰にでも使用できるものであったとするならば、この粒子の特性からすると、使用して良い条件(=戦時中)というのが法として決まっているのではないだろうか?

2)老害による老害のための対面会議
 文字通りである。新しい技術についていけない、新しい技術を信用しない、自分が培ってきたものが素晴らしいに決まっている、新しい技術は便利そうだが覚えるのが面倒くさい、新しい技術を勉強するのも試すのも忙しくて出来ないと言い訳する、という「ザ☆老害」思考によるものだ。ガンダム世界でのオンライン会議がいつぐらいに出てきたのか分からないのだが、デキン・ソド・ザビがオンライン会議で政策を決めていく姿はあまり想像が出来ない。一方でレビル将軍はバリバリとオンライン会議をしてそうなイメージを勝手にもつのだがなんでだろう?私の心の中にある偏見を映し出しているのかもしれない。

3)ハッキングによる被害からのオンライン会議の信憑性問題
 コロニーがあればコロニー間通信だってあるだろう。でも戦時中。しかもコロニーの中には(地球側からみたら)反乱分子であるジオンがどこに隠れているか分からない。そういう怪しいやつを探し出すためには盗聴とハッキングだ。新兵器などの情報も欲しい。また高度に技術が発達すれば、声や姿形をオンライン上で偽ることも可能だろう。そうなると電子データの信用性が失われ、オンライン上での会議の信憑性が乏しくなる事態に陥った可能性はないだろうか?法律として対面会議の必要性が謳われているのかもしれない。重要事項を決めるには対面会議を開かねばならないと。電子署名から一周回って印鑑やサインの時代に戻ることになった世界みたいな感じだろうか。

4)オンライン化のあとにやってきたファッショとしての対面会議
 世界の人口の半分を失った世界で「対面」することの見かけ上の重要性が増したという可能性は考えられないだろうか?シャア曰く「魂を重力に縛られた」人達が、戦争により多くの仲間を失い、クソみたいにこじらせた軍組織を作り上げていく結果として、オンラインでも出来ることをわざわざ対面会議でやると。懐古主義的な。それによって自分たちの権力や魂の引っ張られ具合(あるいはスペースノイドとしての自意識)に高揚感、優越感、満足感を得ている可能性である。要するにややこしい組織としての「こじらせ」だ。

 実をいうと個人的には(4)が最初に頭に浮かんだのだ。でも、その後に考えれば色々あるよねーとも思うのだが、なぜかガンダムの世界ならば(4)だろうと思ったのだ。彼らはオンラインも出来る中で、わざわざ「対面」を選んでやっているのではないか?と。そして、それにタダならぬ価値を見いだしているのではないかと思ったのだ。妄想だけど。

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