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100_昔話⑩

昔話⑩振られた話
普段自分語りする機会ってあまりないと思う。語ったとしても話がバラバラになっちゃったり、聞いてもらえなかったりしますよね。なので興味がある人だけ読んでくれればいいし、長いから飽きちゃうかもしれないけど興味を持ってくれる方のために一生懸命伝えていきます。

大学2年生の頃、私は恋をして、付き合って、2ヶ月で振られた。もはや付き合っていたのかも怪しくなるくらいの期間だな。そこには、何もなかった。


私の大学は、宮城県南三陸町との深いつながりがある。南三陸町にエリアキャンパスを持っている。そこは研修施設兼宿泊施設になっていて、毎年夏と冬に1回ずつ、授業で研修ツアーに使ったり、サークルでの合宿に使ったりする。


大学2年次、私はもともと南三陸町や被災地、復興などに興味があり授業のツアー研修で訪れた。1年次にも同じような研修ツアーで訪れたことがあったので、今回で2回目だ。そこには、その後彼女になるAさんも参加していた。
Aさんは学科が違うが同じ2年生で、身長が171cmあり美人でディズニーが大好きで、ちょっと背が高い普通の女子大生だ。ツアーで出会う前は全く意識していなかった。学科が違えば取る授業も違うし、2年生の夏のツアーで初めて出会った。
なのになぜ私は意識し始めたのか。それは、私のくだらない話題にも面白がってついてきてくれたからだ。


授業で行くツアーと言っても夜は自由な時間になる。みんな解散し次第お風呂に入ったり、寝たり、本を読んだり、飲んだりとまあ大学生らしく過ごしていた。
私はいろんな人と飲んでいた。ツアーには約30人の学生が参加していて、比較的仲が良かったので多くの人と関わることができた。いろんな人と飲み、最終的にAさんと私と、他に男の子と女の子の計4人で談笑していた。ちょうど飲み食いできるものがなくなったので、宿から徒歩5分ほど離れたローソンに4人で向かった。4人で宿から出たが、先に2人が歩いていき、私とAさんで後ろから付いて行く形になった。「将来の夢ってなに?」その時私はAさんとほぼ初対面だったため、自然な話ができなかった。当たり障りなく私が膨らませることができそうな話題を提供した。多分Aさんもなにを話して良いかわからなかったんだと思う。その話を2人で膨らませていった。そこで2人の共通点を見つけた。どちらも兄弟構成で真ん中にいたのだ。私は次男でAさんは次女だった。それから次男次女と呼び合うようになった。普通の女の子ならその時限りで終わるノリかもしれないが、Aさんはそれからもずっと私のことを次男と呼んできた。他にも、私の様々なふざけに対して笑っているだけでなく、ふざけで返してきてくれるところにどんどん惹かれていった。何だかネジが一本抜けているようなおかしな子だったが、そんなところが魅力だったんだろうな。
私は恋に落ちた。

私は好きになったら真っ直ぐなので、連絡先を交換することやデートに誘うことなどすぐアプローチをかけた。当時Aさんには付き合っている人がいたが、あまりうまくいっていないと言っていた。チャンスでしかない。そう思っていたが最初に誘ったデートは断られてしまった。付き合っている人がいるという理由で。
それならと思い待ち続けた。うまくいっていないなら秒読みだろうと待っていたら、ある日友人からAさんが別れたという話を聞いた。速攻連絡してデートにこぎつけた。必死だったんだね。
2回目のデートで帰り際に私は思いを伝えた。その時すでに私の終電1本前だった。告白をするのに予定より時間がかかってしまいこんなことになってしまった。でもさ、緊張するじゃん。頭真っ白になってわけわからなくなってたよ。
「〇〇先輩じゃないの?」
ツアーに行ったときに同じ班だった女性の先輩に想いを寄せているんだと勘違いをされていた。そもそも先輩には恋人がいるし、私はAさんのことめちゃくちゃデート誘っているし。逆にびっくりした。
終電1本前の静かなお台場。返事を聞くまでのお互いの確認作業。
「じゃあよろしくお願いします。」
飛び跳ねて喜んだ。返事を聞いたあとの答え合わせ。彼女との時間は一瞬だった。走って終電に乗り込んだ。最寄りに着くまで心拍数は上がったまま、指先にめぐる血まで意識を持っているようだった。

幸せな日々を送った。彼女との時間は特別で楽しくて、この世の全てがどうでも良くなる。彼女の仕草のひとつひとつが私に語りかけてくる。「次男」と呼ぶ声でときめいた。他にも大勢の人がいるのに彼女の存在だけが輝いていて、離れているのに感じられるときがあった。学内で不意にすれ違うときだって私にとっては特別で、彼女の笑顔に何度も口元が緩み笑顔が溢れる。ふたりでいるときも、彼女や友人たちと大勢でいるときも口角が上がっていたんだろうな。
付き合い始めはお互いの関係は隠していた。なんだか恥ずかしいからだ。あと、ふたりだけの秘密があるって感じでなんだかワクワクした。ツアーに参加した友人や先輩たちにバレたときは沢山からかわれた。でもそれも嬉しかった。ふたりで飲みに行ったときに悩み事を聞いた。彼女が初めて行く場所に一緒に行った。彼女が誕生日を迎えてプレゼントをあげた。新しいギャグが生まれた日もあった。ふたりでずっと笑っている日もあった。時間を忘れてうちでダラダラしていた。終電を逃しそうな彼女と一緒に走って駅まで向かった。
どこまで行ってもなにをしていても笑顔は終わらなかった。

しかし、そんな幸せは突然終わりを迎えた。

夏同様、冬にもツアーがある。冬のツアーは夏よりも勉強中心のツアーになっている。彼女は他の授業でも忙しい日々を送っていたが、なんとか時間を見つけてくれていた。冬のツアーの前々日に彼女と会った。冬のツアーの話や授業大変とか、私が明日美容院に行くとかたわいもない話をしていた。

そしてツアー当日。学校の最寄りの駅のホームで友人や彼女など数人でばったり会ったとき、なんだか私にだけおはようを言ってくれていない気がした。目が合ってないだけでそんな思い込みは大袈裟かと思っていたが、髪を切ったことに関して一言も触れられない。私は当時パーマをかけていて、髪を切ったけれど整える程度で見た目はあまり変わっていなかった。美容院に行ったことを知っているのは彼女だけだったが、髪型についてなにも触れられなかった。その時から私の心はどんより曇り始めた。

ツアー中会話はほぼなかった。宿の廊下でふたりきり、目が合っても素通りされていた。夕食の際隣の席になってもなぜか気まずい空気が流れているようだった。私は鏡を見なくても笑顔がないことはわかっていた。ほうれい線がどんどん濃くなって行くような感覚。今まではふたりでの行動が当たり前だったのに今回は一切なかった。私から話しかけたり近付いたりはするものの、彼女からは全くなかった。3日目夜、彼女と部屋にふたりきりになった。と言っても、彼女は寝ていて友人たちもそれぞれ自分の部屋に帰っていっただけの状況だ。起こすことは可哀想だし、かと言ってこの状況でなにもしないのはなんだか嫌だったのでとりあえず彼女に話しかけた。ツアー楽しいか?とか。私はなんかしたのか?とか元気ない?とか。寝ているから返事がないのは当たり前か。
「キスしていい?」柄にもなくそんなことを聞いた。仰向けに寝ている彼女は向こう側を向くように寝返りをうった。寝ぼけ眼かそれとも起きているのか、寝ているのか。どの場合でも悲しかった。私は静かに立ち上がり自分のベッドへ行った。

翌朝、朝食は喉を通らず、活動中もボーッとしていた。昼食はギリギリ流し込んだ。体に鉛が入っている感覚で、一歩歩くのもやっとだった。景色が真っ黒で嫌な汗もかいた。変に心臓が動いた。バクバクと動く心臓は、幸せだったあの時の心臓と少し似ていた。心臓の動きは同じなくせにこんなに違う感情になるとは。

ツアー終了後すぐに彼女のもとへ行き今後の話をしようと2日後に約束を取り付けた。その時久しぶりに話したような気がした。私は笑って話していた。ふたりの気まずい空間に耐えきれなかったんだろう。
ツアー中の気持ちは私の心をグラグラさせた。話さずにはいられなかった。

私も話したいことある。
                       それって良い話悪い話どっち?
普通のはなし!
                       そうかよかった。
ううん、りくは悪い話?
                       わからん、悪くない。
                       結局はいい話にしたい。

彼女とのLINEはいつも通りでなにも変わらなかった。私の勘違い、何かしてしまって気付いてないだけ、誠心誠意謝ろう。ツアー中の出来事全てに勘違いというレッテルを貼り、妄想の世界の出来事だったということにした。


話し合い当日はいつものデートよりフラットな始まりだ。もちろん心拍数は上がっていた。それ以外はなにも変わらない日常だった。
ツアー中の気持ちの変化や、私が何かしてしまったのかとか私の話したいことを話した。しかしそこでも日常が流れただけだった。
「そんな気持ちにさせててごめん。つい友達といるのが楽しくなっちゃって。それと、りくはなにもしてないよ。だから謝ることなんてない。」
取り繕ってない、いつも通りの彼女に驚いた気持ちもあったが、それよりも嬉しい気持ちで溢れていた。変わってないあの時のままで、これからもいつも通りの生活を送れると信じていた。不安になって神経質になっていただけだ。私は臆病になっていただけなんだ。
私は全て話して気が済んだ。いや、気が晴れた。楽しい話をしたい。冬休みの話とか趣味の話とか今後の話とかいろいろなワクワクする話でもっと幸せな気持ちになりたい。


なんて油断しなかったらよかったな。まさか私がそんなに舞い上がっていることなんて知らずに言ったんだろうな。

「友達に戻ってください」

なんていきなり言われたら私がどれだけ苦しくなるかなんてAさんには想像ができなかったんだろう。
頭が真っ白になって、涙がこぼれそうになった。かっこ悪い、ばれたら恥ずかしい。涙を隠すのと同時にその場にうずくまった。
それのどこが普通の話なんだよって。

その後の話はあまり覚えていない。覚えているところと言えば、Aさんが言った「好きってなに?」のセリフ。あとは、「別れたことはみんなには内緒」ということ。
それ以外はさっぱり。

その後、2ヶ月間くらいは連絡を取っていた。いつチャンスが来るかわからない。私は諦めきれなかった。でもそんなチャンスは来なかった。

「好きってなに?」
これを考えることが好きだった。もしAさんと分かり合える日がきたら昔みたいに笑える日が来ると思っていたから。
「別れたことはみんなには内緒」
誰にも言わないことがふたりだけの秘密になっている、そんな感じがして少し心地よかった。

2ヶ月間、途切れ途切れにアプローチをしながら考えていたら気付いたことがある。
AさんはずっとAさんだった。
出会った時からずっと変わらなかった。話す時もすれ違う時もLINEしている時も。付き合う前も彼女だった時も別れた後も。

だから期待してしまった。ツアー後に話し合った時も変わらない時間を共有していた。彼女ではなくAさんとして。
変わらず接していた。あの時の笑顔は、「楽しい」は「嬉しい」は「好き」は全部嘘だったのかな。真面目なAさんは、彼女として振る舞わなければいけないという義務感だったのかな。
いや、情けだったんだな
好きもキスも笑顔も全部が情け。最初から私のことはなんとも思わず彼女と思っていた時もAさんだった。

今ではもう思い出すことなんてないけど、いい経験したとは思う。
マイナスな感情で考えることが多くなった。表現の幅が広がった。私は悪いことが起こったときに、より表現が湧いてくる。それはいいこと。
昔より言葉や行動に責任を感じるようになったかな。されて嫌だったことは他人にはしない的なやつ。


私たちふたりの間には何も生まれなかったけど、この経験で得るものはあったよ。

これからは何かが生まれるような、生み出せるような関係を作りたいと思った100日目。


noteは、普段考えていることを文字で吐き出す
Instagramは、普段考えていることを形にして表現する

写真撮ってるので見てください
https://www.instagram.com/ganometherapics/?hl=ja

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