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読書雑報

言葉による残酷表現について

③ 亜乱散歩主宰『FGMに関する緊急通信』

 【厳重注意】本稿には残酷な表現や変態的な性表現、カニバリズム小説からの引用等が多数あります、苦手な方、また未成年の方は絶対に読まないでください。

 これまで、サド、マンディアルグと取り上げてきたが、それらを読んでいるという方もこれはご存知ないだろう。『FGMに関する緊急通信』とは2000年代に存在したカニバリズム小説の創作サイトである。私がそのサイトを知ったのは、当時アフリカの一部で伝統的に続けられていた女性の性器切除(Female Genital Mutilation)について調べていた時であった。タイトルを一見するとその悪しき風習を廃止するように訴えている団体のサイトとも見えたので不用意に踏んでしまったのだが、そこは踏んだ足を上げれば爆発する地雷原のような場所であった。
 確かに何か妙なものは感じた、サイトのトップに「警告---(一部略)そうした理不尽な不幸で投げやりになっている大人のためのページである。元気な者、 希望に満ちている者、18歳以下の者は読んではならない。」などと記されている。今ならこの警告を「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」(ダンテ、そして「アメリカン・サイコ」)と同義と捉えられるわけだが、その時は扱う問題の残虐さに対する注意くらいに受け止め、さっさとそのブログの最も古い投稿から読み始めた。しかし私は程なく動悸が速くなるほどの衝撃を受け、慌てて退散することとなる。充分心の準備をしてからじっくり読もうと思ったわけなのだが、この時すでにこのサイトは閉鎖されており、私はwayback-machineを使って訪れていたのだった。この、再訪の際にサルベージしておいたいくつかの小説の断片が今回の出典となる。また、2chにおいて「FGM緊急通信」「FGM緊急通信2」というスレッドがあり、より多くの小説の断片がサルベージされている。本稿の最後に、リンクを貼っておくので、参考にしていただきたい。
 まず、私がそのサイトを訪れ、衝撃を受けた文章、それは前述のように人権系のサイトと思って読み始めたのだが、まずその部分を引用し、なんとかその時の私の感じた衝撃を追体験していただこうと思う。

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