そんな雰囲気で有機化学 #1
Ⅰ. アルケン 前編
○アルケンのかたち
アルケンは基本的にこんな形をしています。
σ結合とπ結合をもち電子がいっぱいです。
???「密です」
○π結合
エチレンとエタンを見比べてみます。
このように、一般にはアルケンの方が短くなるようです。
それぞれの結合エネルギーは
のようになっており、π結合の解離エネルギーを
と見積もることができます。
○幾何異性体
アルケンの二重結合部分に注目すると
回転できないことが分かります。すなわち
この二種は別の化合物であり、このような異性体をシス-トランス異性体といいます。
トランス体とシス体の区別は
のようにつけます。
○水素化
アルケンは水素と反応してアルカンを生じます。
以下の二つの反応を見てみます。
シス体の方が1mol あたり5kj 多くエネルギーを排出しているのがわかります。ゆえに、トランス体の方が安定だと考えられます。
これはなぜなのか考察してみると、
このようにシス体の方が立体的に混みあっており、立体的反発をしていると予想されます。そのためトランス体の方が安定といえるでしょう。
あと、なんでだか分からないんですけど、アルケンは置換基が多いほど安定らしいです。
まとめると
・トランス体はシス体より安定
・置換基Rが多いほど安定
○アルケンの合成
【アルコールの脱水】
アルコールに酸触媒をつかって加熱すると水が脱離しアルケンが生成します
反応機構を見てみると、
まず酸素上の非共有電子対がプロトンにちょっかいをだします。
次に水がはずれカルボカチオン中間体を生成し、プロトンがさらにはずれて
アルケンになります。
【ハロゲン化アルキルの脱ハロゲン化水素反応】
ハロゲン化アルキルに塩基を作用させるとアルケンになります。
まず塩基がプロトンを引き抜き遷移状態になります。
次にハロゲン化水素が脱離してアルケンになります。
○アルケンの反応
前述のとおりアルケンには電子がいっぱいです。かつ平面の上(もしくは下)にπ電子雲がひろがっています。
求電付加反応が起こると
こんなふうに混成軌道が変化します。
【マルコニコフ付加】
アルケンにハロゲン化水素を反応させてみると
どっちかの生成物になると予想されます。
つまり以下の反応中間体A、Bのどっちかを経ることでしょう。
どっちになるんでしょうね。
【カルボカチオン中間体の安定性】
アルキル基には電子を供与する性質があります。
ゆえに正電荷に隣接するアルキル基が多いAの方がより安定であり、中間体としてAをたどるように反応するでしょう。この効果を誘起効果といいます。
また、カルボカチオンの空のp軌道に隣接しているメチル基の炭素‐水素間のσ結合の軌道が重なり合い、p軌道に電子が流れそうな気がします。
ゆえにメチル基が多いほど正電荷の逃げ道がおおく、より安定します。
なんか共役みたいですよね。そんなわけでかは知りませんが、これを超共役といいます。
【級数】
注目する炭素にくっついている置換基の数について
とします。
まとめるとカルボカチオンの級数が高い方がより安定であるため、カルボカチオンの級数が高くなるように反応が進行します。
反応の前後だけで見れば、置換基の多い方にハロゲンがつき、水素が多い方に水素がつきます。
【逆マルコニコフ付加】
置換基の多い方にハロゲンがくっつくといったな。あれは嘘だ。
まあ嘘ではないんですが例外があり、アルケンを酸素もしくは過酸化物の存在下で臭化水素HBrを反応させると逆の結果になります。すなわち置換基の多い方に水素がくっつきます。
この反応はラジカル反応です。
○まとめ
・アルケンはシス体よりトランス体の方が安定で、また置換基の多い方があんていです。
・アルケンはアルコールの脱水、ハロゲン化アルキルの脱ハロゲン化水素反応などにより作ることができます。
・アルケンにハロゲン化水素を反応させると水素の多い方に水素がくっつき、置換基の多い方にハロゲンがくっつきます(マルコニコフ付加)。
・アルケンに過酸化物もしくは酸素の存在下で臭化水素HBrを反応させると、ラジカル反応により水素が多い方に臭素がくっつきます(逆マルコニコフ付加)。
・カルボカチオンは誘起効果、超共役により級数が高い方が安定です。
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