七五三は阿鼻叫喚

今日はなんだか涼しいな、
あなたの暇つぶしのお供あゆガミです。

初回「黒いランドセル」を投稿し、
あの時の自分の気持ちが成仏されたような清々しい気持ちがたまらなく良かったので
引き続きクソガキ幼少期の思い出をツラツラと書いていこうと思います。

母親に関して毒づいている部分が結構ありますが、大人になった今は適度な距離感でまあまあうまくバランス取れてる?かな?と思うので、
そのへんは読み流していただけたらと思います。


あれは私が3歳の時。
当時は奈良県に住んでおり、
ある日の日曜日に山陰地方に住んでいるはずの祖母がなぜかいきなり来訪。

ん?なんで?
夏休みでも冬休みでもないのに、
なんでおばあちゃんがウチに??

これから何かが起こるような嫌な雰囲気を察知をしたし、
何やらおばあちゃんと母親がちょいちょいヒソヒソ話をしているのも気付いていた。
耳をダンボにしながら
気付いてないフリをして情報収集を行なうという生粋のキショ体質は今も変わっていない。

「何時に?」
「…そうね、うん、それがええわ」
何か私にとっての良からぬことが計画されている。
大人の内緒話ってのは、
大人が思ってる程、内緒になっていない。

「じゃあちょっと、お出かけしてきま〜す」
そう言って母親は私の手を取った。
お出かけするにしては、いつものお出かけ用カバンを持っていない母親。
その代わりに持っていたのは意味アリアリのどでかい紙袋。
お出かけしてきますって、なんで二人きり?
「おばあちゃんは?
お兄ちゃんは?
お父さんは?
どこ行くん、どこ行くん??」

「ちょっとそこまで」
としか答えてくれないラジカセメイちゃんと化した母親。

そもそも私は小さい頃、
人と手を繋ぐのが嫌いだった。
歩幅は大人と合わせなきゃで
常に小走り状態になるし、
大人の汗ばんだ暑い手の感じが
不快感でしかなかったので、
大人に手を繋がれたらいつも全力で振り解いていた。
しかし今日はどんだけ力を込めて振り解こうとしてもガッチリ痛いほどに母親は手を離さない。
や、実際結構痛かったんよな。
まあそれほど気合いの程が半端なかった。

(本気やん。
尚のこと嫌な予感しかせーへん。。)

さて、クソガキの手も鬱血し半ベソになった頃に到着したのは黒いモダンな建物。
今思えば、中々小洒落た設計だなーと思うくらい割とオシャンなとこ。
そう、そこは着付けもやってる美容室だったのだ。

「今日はよろしくお願いしますー
予約していた○○ですぅ〜」
母親の他所行き用の声。
ここは自分にとってはヤバイ所フラグが
バシバシに立ってる。

若干3歳のクソガキは
ありったけの声で叫んだ。
「かーえーるうぅーー!」
母親の表情がガラリと変わる。
(チッ、しまった、勘づかれたか)

残念、こちとら自宅におばあちゃんが来た時点で既に臨戦態勢に入っていたのだよ。
しかし、自宅にいる時に駄々をこねても
何も希望は通らないので
他所行き顔+声の時の母親だったら、周りの目もあるから私の駄々を受け入れるしかなくなるのだ。
カードを切るのは今しかねぇ!!!!
クソガキは結構賢かったし判断も素早かった。

美容師さんの「うわぁ…」
母親の
(こいつ、、やりやがったな…)
な表情。






母親「すみませぇん、多分アレなんでぇ、
鍵閉めちゃってください」

えっ
…えっ?!?!
美容師は母親に言われるがまま玄関の鍵を
カッチャ…
と閉めた。
クソガキには到底届かない上の鍵。

ギイヤアアアアア
迷惑極まりない腹の底からの泣き叫び。
走り出し、開きもしないドアをガチャガチャ狂った様に引っ張りまくる幼児。
美容院からしたら
「勘弁してぇー。゚(゚´Д`゚)゚。」でしょ。
シャンプー係の若いお姉さんがドン引き顔してたの、今も忘れない。

なだめる母親
「ね、何もしないから、ここに座ろう、飴ちゃん食べよう」

(いや、飴ちゃん好きちゃうし
普段からそれ知ってるやろ
何をご機嫌取りに必死なってんやい
ほんなら最初っから店ん中入れんなや)

幼児期にここまでの互換力はなかったが、今あの時の自分の気持ちを言葉にしてあげたらホンマこれ。

母親「ね、すわって、すわって。座るだけ。
何もせーへんから。
○○ちゃん、お願い、ね。
オッチンしよ、ね。


…座りなさぁああい!!!!!」

母親、ぶち切れる。
一瞬で萎縮し、スンッとなるクソガキ。
涙は引っ込まないが、お利口に口は閉じた。
素直にイスに座る。
が、やはり嫌なものは嫌で。
「何もしないから」なわけがない。
警戒心ビンビン、肩も攣っちゃう一歩手前くらいまで上がってる。

「もう、本当にすいませぇん。
いっつもこの子、美容院とかって苦手でえ〜。
聞き分けのない、末っ子だから
ワガママ放題で育っちゃって。
ごめんなさいね、じゃあ、お願いします〜」

ウックウックなっているクソガキに美容師さんは本当に気の毒そうな表情で髪の毛にクシを入れた。
そう、何を隠そう七五三のヘアセット+着付けにクソガキは予告ないまま連れてこられたのである。

クソガキは髪の毛を触られるのも大嫌いだったし、女の子らしい髪型も大嫌い。
鏡の中の自分は女の子らしい結い髪にされていく。
途中、何度も何度も暴れた。
母親には肩を掴まれ、動けない様にされたりもし、それでもえびぞったり、なんやかんや必死の抵抗をした。

終盤、クソガキは体力の限界と自分の力ではもうどうにもならない、全員敵であるとようやく諦めの境地に入り、結構おとなしくなった。

「今が全てを終わらせる最大のチャンス」
と、母親は持参した どでかい紙袋をガサガサと開けた。和紙に包まれた物を取り出す。
出てきたのは真っ赤な着物。

クソガキは女の子らしいものが大嫌い。
これを今から着せられるのか。
絶対絶対嫌だ。
クソガキは椅子から転げ落ちる様にして走り出し、店内を逃げ回った。
イヤアアアアアーーーアーー

母親「すぐ終わるから!
ね、すぐ終わるから!!
痛いことはないから!!
みんなやってるから!!」

さっきから「何もしないから」だの「すぐ終わるから」だの、クズオブクズ男みたいな母親の言葉。恐怖でしかない。


ここで鶴(美容師さん)の一声
「もうこれ、無理ですよ」
「帰ってください」
た、助かった…ナイス美容師さん…

こうしてクソガキは解放され、鬼の形相の母親からの怒り圧をビシバシ感じながらも笑顔で帰路についた。


「ただいまぁー!」
と、元気に帰ってきた私を迎えた祖母は
「どういうこと???」な表情だった。
そりゃそうだ。
ヘアセットはされているものの、七五三用にとプレゼントしたはずの真っ赤な着物を着ずに孫が泣き腫らした顔で帰ってきたんだもんな。
母親は経緯を説明していた。
そして、またコショコショと内緒話を始めた。

結果、クソガキは家族(兄を除く)全員に押さえつけられ、母親の怒号が飛び交う中で真っ赤な着物を無理くり着せられた。
泣きすぎて呼吸困難になっていた。

後から聞いた話だが、
自分の着付けは出来るものの、
人に着せたこともない、
ましてや幼児の着付けをしたこともない、
そんなおばあちゃんが持っている知識や記憶を総動員させて、
それなりの形にやったらしい。


これを着て神社に行くらしい。
気づいたら父親はスーツ、
母親、おばあちゃんはフォーマルなお洋服を着ていたが表情はくたびれ切っていた。

「あっ、忘れてた」
と、母親が化粧ポーチから口紅と筆を取り出した。
口紅を筆にチョンチョンと付けて迫る母親。
半日にして信頼関係なんぞゼロ以下となっていたので再びクソガキは逃げ惑った。
そしてまた、大人全員に取り押さえられ口紅を塗られた。


(これまた余談ですが
クソガキは口紅が大嫌い。
正確に言うと、口紅の匂いが大嫌いだった。
ザ・化粧品な科学的な匂いは生理的に受け付けなくて、母親が口紅を付けたまま飲んだコップは使えなかった。
口紅を付けた母親には顔を近づけたくなかった。
今でこそ、無香料とか口紅は出ているが当時の物は本当にダメだったなー。)


「あー、可愛いわぁー。
やっぱり女の子やねぇ。
口紅付けるとお姉さんぽくなるわー!
いいわー、可愛い❤️」
母親、これでもかとべた褒め。
しかしクソガキは、やはりクソガキ。




着物の袖で
おもっくそ口紅を拭い取った。

「あーー?!何してんのよぉーー!!
着物が汚れたやないの!!!」
怒る母親。
無視を決め込むクソガキ。
クソガキの怒りは最高潮だった。
塗り直されても、また拭い取った。

「次、取ったら本当にお母さん怒るよ!!」
と言われた三度目も構うかと拭い取った。
もうずっと怒ってるくせに。

最終、クソガキには
神社での写真撮影の数秒だけ口紅を
付けるという謎ルールを設定された。

チョンチョン
パシャ
拭う
(母親の手元にはティッシュが備えられていた)

帰ってきた時の、着物を脱いで、
ヘアセットのピンを引っこ抜いて、
いつものズボン、トレーナーを着た
あの時の解放感たるや。

母親にあの当時のことを聞くと
「前もって日曜日には七五三するよって予告してたとしても、
アンタは絶対嫌って言うのが分かってたから、あえて何も知らせずに美容室に連れて行った」
とのことだった。


出来上がった七五三の写真は、
強要されたことに対する怒りと
助けてくれる人が誰もいない悲しみに満ちた
3歳の時の私の表情が
とても切なくなるけど、
主役がめっちゃ不貞腐れてて、
家族が疲れ切った表情で、
千年飴の入った袋をもらった時だけめっちゃ笑顔になってるのが笑ける。

中身が飴ちゃんということを知って
袋をすぐに神主さんに
「いらないよ〜」
と、突き返そうとしたクソガキをお許しください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?