読み終わってからも時々思い出してしまう本について

「さよならを待つふたりのために」
ジョン・グリーン著

ヘイゼルは16歳.甲状腺がんが肺に転移して,酸素ボンベが手放せないまま,もう三年も闘病をつづけている.骨肉腫で片足を失った少年オーガスタスと出会い,互いにひかれあうが….生きて人を愛することのおかしみや喜びをまっすぐに描き,死をみつめながら日々を送る若者の生々しい感情をとらえた,傑作青春小説.

面白かった。読んでよかった。あらすじを読むだけではよくあるタイプの本かと思うかもしれないけど、このたった数行には押し込められない、ヘイゼルとオーガスタスやほかの人々の魅力があふれている。

不思議なことに読み終わってしばらくたった後も、ふとした瞬間にこの本を思い出した。最後の手紙の部分が浮かんできて、頭のなかでもう一回読んで、泣く、というのを何回か繰り返してから「なんでこんなに思い出すんだろう、この本のどこが刺さったんだろう?」と考えた末

ようやく納得できたのでそれを書いておこうと思う、すっきりできたので…
忘れないように。

以下ネタバレを含むので、これから読むつもりの方はここで引き返してください。









オーガスタスは、自分がいた証を残したい。
ヘイゼルは、自分がいた証は残らなくてもいいと思っている。

オガースタスはヘイゼルのそんなところをまぶしく感じている。

オーガスタスの最後の手紙。

だけどヴァン・ホーテン。人間が残す証は、ほとんどが傷になる。悪趣味なショッピングモールを建てたり、クーデターを起こしたり、ロックスターになったりして、「これでみんなに覚えていてもらえる」って思う。だけど、①そのうち忘れ去られる、②残してきたもののほとんどが傷になる。クーデータの後に独裁国家が生まれたり、ショッピングモールが街の景観を壊したり。

傷跡でしか、生きた証を残せない。

と、その結論にいたるまでに、自分に残された時間が少しずつ少なくなる中で、オーガスタスが繰り返した思考。その孤独、冷たさ。

ヘイゼルは違う。軽やかに歩いて、地面に足跡さえ残さない。ヘイゼルはわかってるんだ。人は宇宙を傷つけるときもあれば、救うときもある。どちらでもないときもある。
ヘイゼルを愛せておれは運がいい、ヴァン・ホーテン。この世界で生きる以上、傷つくかどうかは選べないんです。でも自分を傷つける人を選ぶことはできる。おれはいい選択をした。ヘイゼルもそう思っているといい。

……………………。

この部分を読むと絶対泣いてしまう

人間の命を礼賛しているわけじゃない。どこか少し遠いところから冷たいまなざしで見ている。でもその冷たさは嫌な感じの温度じゃなくて、冬の夜空みたいなすがすがしくてちょっと寂しい感じの温度。

私は小説の中でオーガスタスが亡くなってしまったことが、そしてそのうち遠からずヘイゼルも同じようにいなくなってしまうことが、悲しすぎて、涙がでるから、この本を時々思い出していたわけではなく

オーガスタスのこの生きることについての思想が胸に刺さっていたようなんです。

そうわかった時、めちゃくちゃうれしくてすっきりした。

だからこの本は、「青春、病、感動、涙。」って感じのありふれたストーリーじゃなくて、すごい思想が1本通ってるんですよ~~~……そこなんですよ、そこが琴線ガンガン殴ってくる本でした。ありがとう本

余談ですけど原題がThe Fault in Our Starsなのに
映画版の日本語タイトルが「きっと星のせいじゃない」
って(たぶん)逆になってるのすごい気になる。
(まだ映画観てないからなんとも言えないけど)




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