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【序章公開中】高卒のフリーターが会員150万人のIT企業をつくった話 #高卒IT

幻冬舎より『高卒IT 〜高卒のフリーターが会員150万人のIT企業をつくった話』を電子書籍にて発売いたします。

EXODUS限定で、紙と電子を合わせて4,000部を販売した書籍ですが、沢山のご要望をいただいたため、電子書籍での一般発売を決定いたしました。既にAmazonなどでの予約が開始されております。

noteで序章と第一章を公開させていただくことになりました。ぜひご覧になっていただけますと幸いです。

【以下より、序章と第1章の一部を公開します】

序章

 本書の内容はタイトルのとおり、「高卒のフリーターが会員150万人のIT企業をつくった話」である。

 2019年12月現在、僕たちが運営する駐車場のシェアリングサービス「akippa」は、全国に3万ヵ所以上の登録駐車場拠点をかまえ、会員は150万人以上へと急増を続けている。akippaの特徴は、これまでは一日単位で借りることが難しかった月極駐車場や個人宅などの駐車場をスマホのアプリで簡単に予約、決済できることだ。

 通常のコインパーキングに比べて価格が安く、事前予約が可能で、「目的地についたのにどこも満車で車が駐められない」という不便を解消したことから、爆発的にユーザーが広がった。

 akippaが始まったのは2014年4月。それから5年半の間に成長を続け、複数の大手企業の参入にも負けずに市場シェア一位を走っている。これまでにakippaは、損保ホールディングスや日本郵政グループといった大企業などから総額35億円の出資を集めた。

 またセレッソ大阪や名古屋グランパス、FC琉球などのJリーグのクラブ、茨城ロボッツや西宮ストークスなどのBリーグのクラブとも提携を結び、スタジアム周辺の渋滞問題の解決にも貢献している。

 そんな急成長のITサービスを運営する僕たちだが、たった6〜7年前は、資金難から倒産寸前の状態にまで追い込まれたこともあった。

 なにを隠そう僕たちの会社は、
・営業しか知らない
・役員が高卒だらけ
・資金がほとんどない
・IT業界に知り合いがほとんどいない
という、「ないないづくし」の弱小ベンチャーだったのである。

 最近は、初めてお会いした人に、「最先端のことをやっているスタートアップですね」と言っていただく。そこで僕が会社の歴史を正直に話すと、みんなびっくりする。

 そもそも、akippaというサービスを立ち上げた頃は、社員全員が日米のIT業界で大きな話題になっていた「シェアリングエコノミー」はもちろん、ITサービスの「民泊」の最大手Airbnbや「ライドシェア」で交通革命を起こしたUberさえも知らなかった。

 僕自身、22歳までは「世界一のサッカー選手」を目指して大学にも進学せず、お正月の元日を除いた年間364日、サッカーだけを続けてきた男である。

 ビジネスで「世界一」を目指そうと決めてからも、大阪でひたすら社員とともに携帯電話や求人広告を営業してまわっていた。

 だが、「営業しか知らない会社」だった僕たちが運営するakippaは、2018年の国内における訪問ユニークユーザー数で、Airbnbを超えるまでに成長を果たした。

 僕たちが変わり始めたのは、2013年に僕に起こったある出来事をヒントに、「〝なくてはならぬ〟をつくる」という理念が生まれたことがきっかけだった。

 「〝なくてはならぬ〟もの」とはつまり、「困りごとを解決すること」である。akippaのアイデアも、社員全員で会社の壁に200個の困りごとを書いていったなかの一つだった。

 この本は、「世界一のサッカー選手」を目指した僕の22歳までの人生に始まる。そこからビジネスの面白さを知って会社を創業したものの、資金難に苦しみ、「理念」がないまま経営を続けたことが原因で、方向を見失いそうになった過去もありのままに記している。

 その苦闘の歴史には、どんなに会社が大きくなっても自分たちが決して忘れてはいけない「原点」があると思うからだ。そんなただただ苦しかった日々も、みんなで乗り越えてきた。

 会社が急拡大してからも、全員が一丸となってakippaの成長のために、一心不乱に仕事に取り組む姿勢は変わらなかった。これまでどんな困難が訪れても、組織が崩壊せずにやってこれたのは、メンバー全員がお互いをリスペクトし、一人ひとりが「自分のため」を超えて「チームの勝利」を目指して、懸命に努力を続けてきたからだと考えている。

 本書の行間から、そんな「何者でもない」「IT素人」の僕たちが、どうやって3兆円の市場規模の駐車場ビジネスに新規参入し、イノベーションを起こす「チーム」を作り上げることができたのか、感じ取っていただければありがたく思う。

 僕たちの会社は今でもまだまだ成功しているとは言えないが、確実に目標である「世界一」へと前進を続けている。

 この本を読んでいただけることで、
「こんな奴らにもできるなら、私たちにも何かできそう」
「学歴がなくても何か大きなことをできるかもしれない」
「資金がなくても諦めなければどうにかなるかもしれない」
「スポーツしかやってこなかったけれど、他の道でも成功できるかもしれない」
といったように、誰かの背中を押したり、励ましたりすることができれば、そんなに嬉しいことはない。

第1章 サッカー人がビジネスに出会う

■人生を変えた雨

 人生に「たら、れば」はない。あのときああしていなかったら。こうすれば良かった。そんな後悔は、できる限り味わいたくない。だから、いつもそのとき自分がやれることを、必死で考えてやってきた。

 しかしもしも、15年前のあの日、雨が降っていなかったら。今の僕は、まったく違った人生を歩んでいただろう。そしておそらく、akippaという会社も、この世に存在していなかったに違いない。

 そう考えると、あの雨が僕の人生を大きく変えた、一つの要因だったと言える。

 2004年の春先。その日、僕は当時つきあっていた彼女と、大阪の天王寺駅で雨宿りしていた。ちょっと前に降り出した雨は、わずかな時間で本降りとなっていた。傘を持っていなかった僕たちに続いて、サラリーマンたちがスーツを濡らして次々に駅へと駆け込んでくる。

 時刻は午後5時。彼女も僕も、電車で帰るために駅にいる。ところが天王寺駅からの乗車賃は2人で540円かかるのに、財布を見ると220円しか残っていなかった。

「ごめん、俺、お金がなくなっちゃった。電車賃出しといてくれへん?」
彼女にそう聞くと、
「ええ〜、私も財布持ってない!」
悲しい答えが返ってきた。

「……じゃあ、雨の中を歩いて帰るしかないかな〜」
「それは絶対に嫌」
「うーん、困った」
ポケットやバッグの中をひっくり返しても、硬貨一枚出てこない。

 当時、僕は19歳。いくら若いカップルとはいえ、そのへんの中学生よりも手持ちのお金がないことが、本当に情けなかった。

 毎日、プロのサッカー選手になることを目指してクラブで練習していた僕は、アルバイトをしながら生計を立てていた。給料日前はいつもお金がなく、銀行口座には1000円以下の残高しかないこともしょっちゅう。小銭をATMで引き出すこともよくあった。

「どうする?雨が止むまで待つ?」諦め顔で彼女がつぶやく。仕方ないか……クラブの練習に遅刻するかもな。そう思いかけたとき、駅の地下にある100円ショップを通りがかった。

「ちょっと待ってて」彼女を残して、僕は100円ショップの店内に入り、手持ちのお金で傘を2本買った。そして、訝しげな顔をする彼女のところへ戻り、言った。

「これを1本300円で売ってみようかと。2本とも売れたら、電車で帰れる」
「ええ〜売れへんやろ」
そう言う彼女も、ちょっと面白そうに感じている様子だ。
「やるだけやってみるわ」カバンに入っていたノートを破き、それに「傘1本300円」とサインペンで書いた。

 駅から少し離れた場所で雨の中を急ぐ通行人に紙を見せていく。始めて5分も経った頃。2人組のサラリーマンが歩いてきた。どちらも傘を持っていない。「お、助かった〜。兄ちゃん、ありがとう、2本ちょうだい」2人組は感謝の言葉とともに傘を買い上げ、通りを歩いていった。

 手に入ったお金は600円。これで無事に電車に乗って、帰ることができる。「すごいなあ、ホンマに売れるとは思わんかったわ」すっかり上機嫌になって話しかける彼女に、僕はうわの空で応えながら、まったく別のことを考えていた。(ものを売るって、なんて面白いんや。傘のようなありふれたものでも、それを必要としている人に、適切なタイミングで売れば、喜んで買ってくれる。アルバイトでお金を稼ぐのとは、ぜんぜん違う)

 それは今思い返すと、僕にとって生まれて初めて自分から仕掛けた「商売」だった。サラリーマンが傘を買っていってくれたときに感じた高揚は、クラブでサッカーの練習を終えて、自宅のベッドで眠りにつくまでずっと続いていた。

続きは書籍で

noteでの公開はここまでとさせていただきます。
このnote記事が「50いいね」に達した場合は、6月5日までに第一章の続きを公開いたします。ご興味をいただいた方は、全編を電子書籍で読んでいただけますと幸いです。


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akippa株式会社CEO。高校卒業後プロサッカー選手を目指し関西リーグでプレー。その後Jリーグクラブの練習生として入寮も契約ならず引退。2年間上場企業で営業を経験し、24歳で創業。駐車場シェアアプリ「akippa」を運営。NewsPicksプロピッカー。モノノフ。
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