夢見た舞台で 10節 アトレティコvsレガネス(H) 2024.10.20
代表明け。代表の出場時間からいこう。
アルゼンチン勢は相変わらずフル稼働。特にモリーナは代表のためのキャリアのようになっている。ヒメネスは出場停止明けで2試合目にフル出場した。
欧州勢はスルロットが2試合連続で得点。オブラクからも決めた。怪我人続出のスペインは途中でリケルメが追加招集されたが出場はなし。
ヘイニウドはアフリカネイションズカップの予選でエスワティニという国と2試合フル出場。調べたらモザンビークのお隣の国らしい。
代表ウィーク前を振り返ってみると怪我人が出始めてCLベンフィカ戦で0-4ボロ負け、勝って終わりたかったソシエダ戦に1-1ドローでした。ル・ノルマンとジョレンテ、そしてアスピリクエタは引き続き離脱中。この状況でモリーナが代表でフル稼働してしまうのも困ったものである。
レガネスは19-20シーズン以来のプリメーラ復帰。マドリードのご近所クラブ。前回対戦はアトレティコのホームで0-0ドロー。サポニッチのデビュー戦でした。
今季はここまで1勝5分3敗の8ポイントと聞くと及第点な気もするが3強+ジローナとまだ試合をしておらず勝った相手はラス・パルマスだけ、得点はフアン・クルスの3点とあとはDFの2点だけである。休み明けで変化を作りたい試合。
●スタメン
・アトレティコ
オブラク
モリーナ / ヴィツェル / ラングレ / ハビ・ガラン
コケ / バリオス / リケルメ
グリーズマン / コレア / スルロット
代表に行ってきた選手はモリーナとスルロットはスタメンで出る。あとオブラク。出場のなかったリケルメもスタメン。後ろ4枚でヴィツェル&ラングレはチャレンジ。
CLでは2試合ともスタメンで出ているコレアは、ラリーガではこの試合が初スタメンとなった。
・レガネス
ドミトロビッチ
ロジェ / セルヒオ・ゴンザレス / ナスタシッチ / ハビ・エルナンデス
タピア / ネヨウ / セイドゥバ・シセ
フアン・クルス / ミゲル・デラフエンテ / ダニ・ラバ
最近はナスタシッチがスタメン。
フアン・クルスとダニ・ラバが両方スタメン。ラバはトップ下のような立ち位置でスタート。
リヤドエア・メトロポリターノに名前を変えたホームスタジアムでの試合。
●前半
アトレティコは配置をいじってスタート。この日は4バックで。ビルドアップ形も変更。
ラングレがメインで配球を担当して後ろ2人。右はモリーナを高い位置へ動かす。2CBの前にはコケが立つがダニ・ラバが消している。レガネスは4-4-1-1風。一列前へボールを運ぶ役割はバリオスとグリーズマンが担当してコケに近づく。特にこの前半は明らかにグリーズマンをタスクで縛らない事がテーマになっていた様子でこれは良い傾向。そしてグリーズマンが代表に行かないメリットが出ている。
という事でバリオス&グリーズマンの仕事は相手CH(ネヨウ&タピア)を動かす事にあるので2CBからボールを引き取る仕事はもう1人が登場する。ハビ・ガランだった。
アトレティコのSBはこういう仕事を担当する選手は歴史上で見てもフィリペ・ルイスくらいしかいなかった気もするが、左CBのラングレが配球を選ぶのであればこういうSBは必要。レナン・ロディとは何だったのか。
ハビ・ガランはコケの隣まで移動してボールを引き取り、前に進む。あるいは自分が内側に動く事で対面するフアン・クルスを動かしてラングレ→リケルメのパスルートを空けて大外にボールを渡すサポートを行っていった。4分にこの形でリケルメがロジェを振り切ってクロスまで。右SHの位置で守備をするフアン・クルスの狙いを決めさせない事と、自陣深くで守備をさせる事が両方できていた。迷ってるところでグリーズマンがボールを引き取りに来るのでてんやわんや。
リケルメにボールが渡るとハビ・ガラン自身はそのままポジションを上げて相手の右CBセルヒオ・ゴンザレスのポジションまで上がっていきグリーズマンを解放しながらリケルメと一緒に左サイドを旋回。崩しの選択肢となった。ちなみにバリオスとはタイミングが合わなすぎて揉めていた。
またハビ・ガラン自身の移動がグリーズマン周辺のマークを難しくさせ、グリーズマンが左ハーフスペースを縦に動き回って多くボールに触った。グリーズマンの前が空くと2トップはファーに逃げていくスルロットに反応してコレアがこちらサイドに出てくるなどわかりやすい狙いも持った。コレアらしくて良い。
続々人が出てくる左ハーフスペースで、ラングレのマークがいなくなってスルスルドライブしていきバリオスのミドルシュートに繋がった13分の場面などはこの配置の特徴となる。
この日は保持配置だけでなくネガトラの配置も変更。
後方に3枚残す事はなく主に2CBの前にコケが残っているが、コケの横にもう1人残りましょうという約束は割と固かった。ハビ・ガランが主に担当し、この日のメンバーの中ではネガトラで無理が効くタイプなので重宝された。ハビ・ガランがいない時はバリオスがやっていて2-2でネガトラ対応。何度か怪しい対応もあったが少なくともこの日の2CBはこういう対応を得意としておらずある種許容範囲でしょう。そもそもボールを圧倒的に握れた(前半全体で69.9%)のでネガトラ云々が問題になる45分ではなかった。シュートも32分のフアン・クルスのFKまでは打たせなかったし。ただし、34分に失点。人生上手くいかないものだ。ダニ・ラバが右サイドの崩しに関与してぽっかりと空いたCB横のスペースをネヨウに使われた。
良いフィニッシュだったが。わかっていた事だがこのスタメンはこの辺のPA内の対応をグリーズマンがやる事を期待する配置なのである。90分間一度も穴を開けないというのは難しくなる。わかっていた事だがワンチャンスをモノにしたレガネスを褒めたいシーンであった。
●前半終了
0-1で折り返し。ビハインドで前半を終えたのは今季のラリーガでは6節ラージョ戦(1-1引分)以来の2度目だが、やたらとボールを持たれて苦しんだラージョ戦と比べれば敵陣でプレーしようという改善は明らかに成功していてポジティブな内容だったように思う。左サイドの旋回、右のモリーナからコレアを使った侵入、スルロット目掛けたクロスはどれも当然のように普段から"狙ってやるべきもの"で、この先チャンスを作るためにもう一工夫ですねという内容だった。その中で失点するわけだが。
レガネスはボールを持てない展開を受け入れつつもカウンターに活路がある事を理解していた。ヴィツェルとラングレ相手なら背後に蹴っ飛ばす事も有効になり得る。ダニ・ラバが時々ヴィツェルを手玉に取るターンを見せていた事も味方に勇気を与えていた。上々の45分を過ごしている。
●後半
アトレティコはモリーナ→リーノを交代。ジョレンテとアスピリクエタがいない環境でさすがにモリーナのプレータイムは制限したい試合。
リケルメが右に動いて4バックなのか5バックなのか微妙な雰囲気に。正直前半を見て右サイドの守備なんて何でも良いという雰囲気はあった。レガネスは展開次第で左SBがフランケサに変わって攻撃シフト、というのは今季何度かやっている交代。ガランも当然のようにリーノの外側を追い越していったので3バックというよりは2バックのような心構えで後半に入った。開始早々にもらったカウンターを見てもハビ・ガランの優先順位は最終ラインに戻る事よりもコケの隣を埋める事にあったのは明らかで、相手がレガネスだからと言ってしまうとそれまでだが割と相手を下に見ている守備設計ではある。まあ人もいませんし。
これである程度守備を犠牲にグリーズマンとコレアがかなり自由にプレー選択し始める。そして周囲の選手が流動的になっていくと何したら良いかわからなくなってプレー選択が硬直していくのはパブロ・バリオスの物足りないところである。「君達が流動的だとネガトラは僕がやる事になるよね」みたいな雰囲気が出過ぎる。それはそうなんだが。
52分にはグリーズマンが単発でプレスをかけて奪い切り、コレアに決定機。こういうのはシステムに関わらず失いたくない武器だなと。
57分にアトレティコが3枚替える。
アルバレス、ジュリアーノ、デ・パウルのアルゼンチントリオを投入。コレア、リケルメ、コケが下がった。アルバレスは30分使いたかったのと、敵陣でのボール保持は確立されておりトランジションが増えそう(特にネガトラ)な展開でコケがピッチにいる理由はほぼなくなったので後は元気マンに任せる。ちなみにバリオスがコケの仕事をやって、デ・パウルはバリオスがここまでやっていた仕事となる。
ジュリアーノ投入はギャンブル要素だったが、シメオネはこのギャンブルに勝つ事となる。
後述するがここで"グリーズマンとスルロットを残した"事がこの試合の命運を決めた。
早速敵陣再奪回からジュリアーノ→リーノのクロスで決定機。これは完全に練習からイメージしている形でしょう。中央で再奪回して両WBがゴール方向に向かう。リーノは膝打って痛そうだったが。
残り1枚の交代は取っておきたかったがラングレがヴィツェルと交錯する不運なプレーで64分にヒメネスと交代。ラングレは一ヶ月ほど離脱する事になってしまうのであまり言いたくないが、イエローカードももらっていたのでここの対応をヒメネスに引き継げたのはこの試合単体の結果を見た時は悪くなかった。それと、結局グリーズマンとスルロットを下げるタイミングを失う事になったのは普段のシメオネの選手交代の選択を考えるとアトレティコの逆転勝利に繋がっていったように思う。完全に結果論だがこういう所から学んでいこう。ついでに余計な事を言うと既にCBからの配球も特に必要としない試合展開ではあった。
そんな中69分にCKの流れから同点に。よく考えたら"攻め残りしたヴィツェル"ってズルいだろ。コレアみたいなターンで1枚外してスルロットにラストパスを通した。スルロットは開幕戦以来ようやくの2点目。
しかもレガネスは67分にフアン・クルスとダニ・ラバを下げた瞬間だったのは痛恨。正直最終的にはこの2人を下げるのがどういう逃げ切り手段だったのか全く意味がわからないので采配ミスだったと言っておきたい。
レガネスはボールを持とうにもアトレティコはフリアン・アルバレスがナスタシッチにもの凄いスピードで圧力をかけてくるのでビルドアップを探る事さえさせなかった。ちょっとこれはレガネスにはどうしようもなかった。そしてアルバレスが追っかければレガネスは蹴るしかなくなるのでグリーズマンが全く守備をする必要がなくなったのも非常に大きかったが、これはアトレティコが作った現象とは言えないので触れる程度にしておく。レガネスはここでセバスティアン・アレを入れたが、先季のドルトムント戦を思い出せばわかるように彼は自軍がボールを握っている時に仕事をする選手(苦い思い出ですね)なので、この日は全く逆の展開での投入となりほぼ仕事はなかった。
この頃からデ・パウルが左SBハビ・エルナンデスの背後に適当に蹴っ飛ばせばチャンスになる実感を掴んでいき、ここをだいぶ狙っていた。ハビ・エルナンデスも疲れているようだったのでさっさとフランケサと替えれば良かったが不用意に引っ張り81分、デ・パウルがあまりにも雑に出したパスにジュリアーノが真面目に追いついて差し込んだクロスにグリーズマンが飛び込んだ。逆転。ジュリアーノは父親の前でグリーズマンの逆転ゴールをアシストした。なんという美しい場面か。ちなみにこのゴールの直後にレガネスはフランケサを投入している。
あとは守ったらやられそう、止まったら死にそうなメンツが残されたピッチで最後まで阿呆のように走り回りスルロットのこの日2点目が生まれて試合終了。直前にリーノのお膳立てを普通に外しているが、スルロットはあんまり気にしないタイプ。
●試合結果
終わってみればホームで3得点。実は複数得点は9月19日のライプツィヒ戦以来となる。
この日は何より4バックでプレーした事が大きな変化点であった。その成果はビルドアップの安定、敵陣でのプレー時間増加という形で現れたが、その実ヴィツェル&ラングレで安定して守り切れる相手というのもそんなにいないだろう。そしてこのシステム、モリーナとハビ・ガランがほぼ必須になる点も見逃せない。ジョレンテとアスピリクエタがいれば違うかもしれないが。だからセルジ・カルドナを取れば良かったのに。
この試合、シメオネの最大の功績はグリーズマンとスルロットをピッチに残し続けた事にある。多分交代枠が余っていればスコアが1-1になったところでバランスを気にしてスルロット→ヘイニウドを交代していたのではないか。正直レガネスが悪かっただけで見てらんないバランスだったので。ただ結果的に試合を決めるゴールを決めたのはこの2人だった。シメオネのバランス感覚の転換点になったりするかも、と思ったりする。
選手の出来で言えばまずバリオスに触れる。狭いエリアの関与が圧倒的だった事と、後方の枚数管理に気を配る事ができていたのは成長。責任感が良い方向に出ていた。その中で攻撃面の特徴を減らさないようになると良いね。
ハビ・ガランに関してはマドリー戦に続いての感想になるが特に驚きはないし新発見もない。こういう選手だと何年も前から知っていたので。圧倒的ドヤである。こんなもんです、この選手。
4バックは怪我人が戻ってくるまでの選択肢にはなり得る。とりあえずボールを持てるのは強敵との試合がない10-11月シリーズとの相性も悪くないので。次はCLのリール戦。
レガネスは選択ミスがいくつかあった試合。活かすも殺すもダニ・ラバ次第という攻撃は果たして生き残る道になるのだろうか。残留へ向けた茨の道が本格的に始まった気がする。
10/20
リヤドエア・メトロポリターノ
アトレティコ 3-1 レガネス
得点者
【アトレティコ】'69 '90+9 スルロット '81 グリーズマン
【レガネス】'34 ネヨウ
●ピックアップ選手
バリオス
パーフェクトなボールコントロールで中盤を支配。気が利くようになった。再度足を痛めて離脱予定。
ジュリアーノ
右SBなのかWBなのかわからない位置で使われてグリーズマンのゴールをアシストしてヒーローに。エモーショナルな瞬間だった。
ハビ・ガラン
ビルドアップとネガトラのプラス1を担当して敵陣で試合を進める事に一役買った。終盤は身体を張った対応で責任を果たした。
スルロット
良いパスを受けて良いシュートを決めるよりこの日のようなゴールが彼の役目。チームを勝たせた。
アルバレス
鋭いボールアプローチと真っ直ぐゴールに向かうプレーがチームに勢いを与えた。本来の彼のプレーだった。
●myQA
10-1 4-4-2の是非
アトレティコといえば4-4-2。シメオネといえば4-4-2。試合には勝ったがあまりにも粗が多かった。最大の粗は当然失点シーンで、ポケット侵入の対応をグリーズマンがやるかやらないかで試合結果が変わるシステムは明らかに今のアトレティコには適さない。誰に何をやらせてるんだ。
じゃあその回答は左SHフリアン・アルバレスなのか、というのは既に実験済みである。シメオネは実は既に色々やっている。でも右SBがモリーナである限り右側にコレアorアルバレスは必要だし、そうなるとグリーズマンが左SHのような位置で守備をするのは必然である。しかもその場合リーノのポジションが無くなる。困りましたね。しかも左SBはハビ・ガランの替えが効かない。システム変更の常とはいえ先週までプレータイムがなかった選手が突然不可欠になるのも考え物だ。ついでに言うとよっぽどの相手でない限りCBはヒメネス&ル・ノルマン以外の組み合わせはあり得ないだろう。4-4-2にすれば解決するものと成り立たなくなるもの。これだから面白いんだな。たくさん悩みましょうね。