幸先 コパデルレイ1回戦 アトレティコvsヴィック(A) 2024.10.30
CLで勝ち点が取れなくてもベティスから点が取れなくても試合は続く。今週は国王杯の一回戦。対戦相手はウニオ・エスポルティーバ・ヴィックというクラブ。リガ・エリット(Lliga Elit)に所属している。リガ・エリットとは何かというと、実質国内6部リーグ。
スペインプロリーグは5部まで全国リーグがありその下は地域リーグになるが、リガ・エリットはカタルーニャ地方の一部リーグに当たる。関東一部のようなものかと。違ったらすまん。
クラブロゴの雰囲気がどことなくジローナに激似なのでこの地方にはよくある感じのロゴなのかもしれない。
●スタメン
・アトレティコ
ムッソ
モリーナ / ヴィツェル / コスティス / ヘイニウド
ギャラガー / ハビ・セラーノ / リケルメ
コレア / スルロット / ジュリアーノ
ムッソは8月31日の4節アトレティック戦以来の出場。コスティスがようやく初先発となる。
・ヴィック
モラ
ボフィル / プラダス / ベルトラナ / ブスケツ
リエラ / クニール / ピウス・ケール
セラ / イグナシ・ケール / プラット
読み方自信なし。左WGの23番アルナウ・プラットという選手は先季までFCアンドラ(先季2部。降格して今季は3部)に所属していた20歳。2部での出場歴はないっぽい。
キャプテンマークはコレア。ピッチは人口芝。
●前半
人工芝である事以前に雨でも降ったのか随分とピッチがスリッピー。ヴィックの選手もずっこけていたのでなかなかプレーするのが難しそうだった。コレアが速い縦パスを収めるのに苦労していたのを見てもイレギュラーだったんだなというのがよくわかる。
そんな中でも全く苦労していなそうだったのはヴィツェルとハビ・セラーノ。本当の技術はこういう時に出る。苦労していたのはモリーナ、スルロットあたり。なんとなく前半のモリーナ周辺は特にピッチが悪そうに感じたがカメラの具合なのかもしれない。
ヴィックは4-1-2-3ないしは4-1-4-1で配置。
2部だろうが3部だろうが、はたまた地域リーグだろうがこの国のサッカー選手は4-1-2-3でプレーできるように作られてるんだなぁとしみじみ。
17番のクニールはアンカーポジションに入り4-1-4-1。アトレティコはギャラガーとセラーノがMF4枚の手前でボールを受け取る。3-2-5の練習みたいな時間になった。特にセラーノはCBからボールを引き取って上手く前向きになった。コケの仕事はカンテラーノがやる。
ヴィックは横パスに対する反応があまり速くなかったので大外から内側へ刺さるボールが有効的だったが、ピッチ状況が良い感じにホームチームに味方していて細かいコントロールが上手くいかない。人工芝に最適化された守備をしているのかもしれない。
一方ピッチ中央付近でもボールが流れたり止まったりするので、一度モリーナがセラーノに渡そうとしたボールがズレてとんでもないボールロストに繋がり、以降はビルドアップで横パスを使いにくくなってノッキングしていった。これはまあ仕方のない事だと思う。せっかく中盤ラインの手前でギャラガーとセラーノが自由にプレーしているがこの2人の間でパス交換するのが難しい環境が攻撃の選択肢を狭める事に繋がっていた。繰り返すがこれは仕方ない。むしろピッチ状態に応じてプレーしていたと言える。ライン間でボールを引き取るコレアを中心にゴールへ迫るが、ダイレクトプレーがなかなか決まらないのもピッチのせいにして全然良い。
38分のスルロットのシュートは21番のプラダスがどう見ても手で止めたが普通にお咎めなしだった。なんという事でしょう。45分にはリケルメのFKにギャラガーが合わせたが置きにいってしまい止まられた。ロングカウンターに全てを賭けていたヴィックだったがアトレティコのネガトラは危なげなかった。コスティスが一回怪しかったが大目に見よう。
●前半終了
0-0で折り返し。展開次第ではモリーナを攻撃参加させて圧力を掛けるタイミングがあったかもしれないが、ロングボールを放り込まれるので問答無用で後ろ3枚。相手の様子もわからない試合の前半はこんなものかなと。セラーノが保持局面をよくコントロールしていた。リケルメはライン間を好きに動いて良いという設定だったようだが右に流れてきてジュリアーノ&コレアと関与するとラストサードで特徴が出た。ただし、"自由を与えてもこんなものか"という見方をする事もできるので本人はけっこう焦っていたと思う。
●後半
アトレティコは3枚替えた。コケ、ルマル、ハビ・ガランを投入。
交代はセラーノ、スルロット、コスティス。ごっそり立ち位置を変えた。ビルドアップの引き取り役がコケに変わり、ギャラガーがやや高い位置に出ていけるようになる。敵陣でプレーできている証拠に最終ラインのモリーナが前向きにボールを受けてロングシュートを打つ場面があった。これはGKモラがよく触った。それ以上にルマルの登場によりライン間で中継点になってコンビネーションを使えるようになり、さらに左大外がハビ・ガランに替わった効果で攻撃に厚みが産まれた。
時々とんでもないカウンターを喰らいつつ、60分にはギャラガーが股抜きされてピンチになるなど。ご愛嬌と呼ぶにはやられ過ぎだったがそのために後ろに3枚残しているので、やっている事は間違っていないと思う。やられ過ぎだが。63分にもコンビネーションで侵入されて大ピンチに。リエラの左足シュートが明後日の方向に飛んだがヒヤッとした。
アトレティコはフリアン・アルバレスを入れる事で単独でCBにプレスに行って相手を困らせ、コレアの突破をサポートしてゴール前で決定機を迎えるなどし、いよいよ仕上げの段階に。
64分、後半から出てきて良い仕事をしていたルマルがタッチライン際で右足を伸ばした時に内転筋を痛めた。人工芝だとこれがあるんですね。おれも何度やった事か。これって対応策あるのかね。ヒメネスとか内転筋弱い系は人工芝出場禁止でお願いしたい。ルマルはグリーズマンと交代。
元気だったヴィックだが、70分を過ぎると明確に運動量が落ちていく。選手交代を使いながらやりくりしたが、アトレティコが要所で優位を掴んでいく。最初から優位に推し進められればそれに越した事はなかったが。特にジュリアーノが長い距離のランニングを使ってヴィックを苦しめる。こういう展開だとモチベーションの高い小僧というのは有用である。カウンターで左サイドを走ってイエローを誘発すると、右サイドでもコレアとのコンビネーションで4番ベルトラナのタックルを誘発。PKゲットと同時にレッドカードで退場させた。これをアルバレスが決めてようやくアトレティコが先制。ヴィックも最後まで抵抗したが89分にロングカウンターからアルバレスが2点目を決めて決着。最後の最後で良い精度の攻撃が出た。
●試合結果
2-0で初戦突破。「下位カテゴリーのクラブとの試合における理想とはなんだろう」と考えた時に前半で2,3点取る事なのかもしれないが、この手の試合の内容にたいした興味がない人間から言わせてもらうと各々のプレータイムをほぼ当初の計画通りに割り振れたので特に問題は感じていない。ちなみにルマルの怪我がなければグリーズマンの投入はコレアと交代だったと思われる。
らしくない話をするが、こういう地域リーグのクラブのホームスタジアムにラリーガ強豪クラブが来るというのは大事な事で、実際観客も満員だったわけで。普段を知らないが。そういう試合にグリーズマンやコケ、アルバレスが全く出場しないというのは個人的にはあり得ない事だと思う。普段くだらない自論の理由付けに"サッカー人気が〜"だの"地域密着が〜"だの偉そうに言う人間がこういう時に限って"主力を休ませろ"みたいな態度に変わるのをSNSでよく見るが、全く意味がわからない。その上でちゃんと勝ったのだからアトレティコは義務(というと聞こえは悪いが)をしっかり果たした試合だった。コパ一回戦の価値というのはこういうところにあると思う。カードを誰も貰わなかったのも良かった点。
ヴィックというクラブは今後もなかなか触れる機会はないだろうが、ビルドアップはさすがにSBに圧力がかかると無理そうだったがロングカウンターで一発やってやろうという気持ちがよく出た良い組織だった。最後は走力差に屈したが可能性を見せた。というか普通に危なかった。6番のリエラは夜も眠れないだろうが良い酒のネタにしてほしいところ。こういう経験もカップ戦ならではである。
さてアトレティコはホームに戻ってラス・パルマス戦、そしてCLのパリ戦へと向かう。怪我人も戻ってきそうなので今季の第二章仕切り直しとなる。
10/20
エスタディ・イポリ・プラナス
ウニオ・エスポルティーバ・ヴィック 0-2 アトレティコ
得点者
【アトレティコ】’81(PK) ’89 アルバレス
●ピックアップ選手
ジュリアーノ
「おれ達はアトレティコなんだ」を強烈に感じさせるパフォーマンスで試合を決めた。コスティスとセラーノにとっても良い刺激になるでしょう。
コスティス
トップチーム公式戦では初スタメン。開始早々ジュリアーノに質の高いロングボールを届けた。ビルドアップは相変わらず危なげないが怪しいハイボール対応が一つ。ちょっと痩せた気がする。
セラーノ
ボールを引き取って動かす仕事を的確に行った。球際に強く出られるのは強みだが、強度が高いとは言えない。
ルマル
得意のライン間ワークで違いを作ったが負傷交代。まずは健康体で。
アルバレス
クラスが一つも二つも違う存在感があった。PKが上手いのはアトレティコにとって朗報。
●myQA
特になし