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チラシの裏 21-22ラリーガ全チーム短評

今年も披露しますチラシの裏に書いてあったラリーガ20チームのシーズン短評。どんだけデカいチラシだよという批判は受け入れます。



●1位:マドリー

勝ち点86 26勝8分4敗
80得点31失点
国王杯:ベスト8
スーペルコパ:優勝
CL:優勝

早々に独走して2年ぶり35度目のラリーガ制覇。
今季は何と言ってもベンゼマの圧倒的なパフォーマンスとヴィニシウスの覚醒。このコンビだけでほぼ優勝を勝ち取った。ベンゼマはキャリアハイの27得点で得点王。ヴィニシウスは17得点13アシストと脅威の数字。先季3点しか取っていない事など皆忘れてしまった。来季はロドリゴの番だ。アザールもベイルもヨビッチも全くお話にならなくても圧倒的に強かった。
衰えが指摘され始めて久しいフットボール史上最強の中盤、モドリッチ、クロース、カゼミーロの3人は周囲を実力で黙らせ、終わってみれば鉄板であり続けた。バルベルデもカマヴィンガも、そしてセバージョスも自分の色を出した。
セルヒオ・ラモスとヴァランが抜けた最終ラインは新加入のアラバの相棒をミリトンが完璧に務め、困った時のナチョは今季も健在。クルトワは無敵だった。34節エスパニョールに勝利(4-0)した時点で余裕の優勝。

そしてチャンピオンズリーグ。グループステージ、ホームでシェリフに負けるなど不穏なスタートとなったが、その他は全勝して1位抜け。決勝トーナメントではパリに大逆転、準々決勝ではチェルシーに一度は逆転を許しながら再逆転、準決勝ではシティに後半ロスタイムに2点差を追いついて大逆転、とまるでこのスポーツがマドリーのためにあるような、ベンゼマのためにあるようなシーズンとなった。
迎えた決勝ではリバプール相手に何度もチャンスを作られながらクルトワの魔法で止め続け、最後はヴィニシウスの決勝点。3連覇以来4年ぶり、14度目のビッグイヤーとなった。

正直今季のマドリーは例年と比べれば圧倒的な戦力でゴリ押し出来るようなチームではなかった。しかし、だからこそ強固な撤退守備と圧倒的なプレス回避を軸に、地に足をつけて戦った。各々の役割はどのチームよりも明確で、ピッチに出れば全ての選手が必死にタスクをこなすグッドチームであった。こういう集団を作り上げ、その積み重ねをCL決勝で結実させたアンチェロッティのシーズンマネジメントが本当に素晴らしかった。

もっと上手いチームも、もっと魅力的なチームもいくらでもあるだろうが、今年のマドリーよりも試合に勝つ事が上手いチームはなかなかお目にかかれない。21-22シーズンのレアル・マドリーを、一生忘れないだろう。



●2位:バルサ

勝ち点73 21勝10分7敗
68得点38失点
国王杯:Round16
スーペルコパ:ベスト4
CL:グループE 3位
EL:ベスト8

開幕7試合を3勝4分という良いんだか悪いんだか微妙な成績でスタート。その間CLではバイエルンとベンフィカに負けてはやくも暗雲。その後、アトレティコ、マドリー、ラージョに負け、アラベスに引き分け。仕上げはセルタに3-0から追い付かれてクーマンを解任。14節のエスパニョール戦からついにチャビ・エルナンデスが就任した。ボール保持を”らしい”形に改善してアトレティコに勝ち(4-2)、クラシコにも圧勝した(4-0)。冬の補強も的確でフェラン・トーレス、オーバメヤン、アダマ・トラオレ、そして復帰したダニ・アウベスが明らかにチームを変えた。ペドリとガビ、アンス・ファティの存在はかつての黄金期を想起させるもので、これぞバルサというサッカーを見せ始めている。

しかし今季のバルサはラリーガで一番カレンダーが厳しく、ペドリとアンス・ファティは故障に苦しんだ。ELはベスト8でフランクフルトに敗退。終盤はカディス、ラージョに負けるなど完璧なシーズンとはいかなかった。
それでもチャビは9位でバトンを引き継ぎながら楽々2位フィニッシュで最初のシーズンを終えた。

未来を担う若手も出てきて、アラウホも契約延長。一方でデンベレ、フレンキーの来季が確定していない状況。チャビのフルシーズン指揮となる来季が、クラブ浮沈のポイントとなる。



●3位:アトレティコ

勝ち点71 21勝8分9敗
65得点43失点
国王杯:Round16
スーペルコパ:ベスト4
CL:ベスト8

シメオネ体制で最大の危機を迎えたシーズンだった。2点差を追い付かれてドローや年末には4連敗と非常に苦しんだ。当然のように失点は過去最多。CL出場権すら逃しそうな、己のアイデンティティとの戦いのようなシーズンをなんとか3位で終えた。

敗退危機だったCLグループリーグを逆転突破、決勝トーナメントではついにクリスティアーノ・ロナウドを破るなど、もちろん悪い事ばかりではなかった。シメオネはもう一度ポジティブな未来を提示出来るのか、クラブはそのために必要な補強は出来るのか。一息入れる間もなく、正念場の戦いは続いていく。

※アトレティコ・マドリー単独のシーズンレポートは後日公開!



●4位:セビージャ

勝ち点70 18勝16分4敗
53得点30失点
国王杯:Round16
CL:グループG 3位
EL:Round16敗退

セビージャは序盤から好調で、年末にはビジャレアル、アトレティック、アトレティコに3連勝、年明けも2つ続けて5連勝。20節終了時点で首位マドリーと2ポイント差。下は3位ベティスまで10ポイント差あり、実質マドリーを追える唯一の存在となった。しかし対戦が2回り目になると一気に失速。負けはしないもののバレンシア、セルタ、オサスナ、エスパニョール、アラベス、ラージョにドローではどうしようもない。29節にソシエダと引き分け(0-0)た時点でマドリーとは9ポイント差。独走を許してしまった。

今季は何と言っても得点に苦しんだ。複数得点は14試合しかない。最下位のレバンテと同じ数だ。(もっと少ないチームはいるけど)
エン=ネシリが先季と同じような活躍をすると思った人はあまりいないかもしれないが、新加入のラファ・ミルがぎりぎり10得点。これを合格としていいチームなはずもないが、それに続くのがオカンポスの6点ではどうしようもない。ラメラ、イドリシ、デラネイ、冬にはさらにマルシャル、ヘスス・コロナと補強を繰り返したがゲームチェンジャーになれる選手は既存戦力含め1人もおらず、最終的には固い守備を誇るパプ・ゴメス個人軍のような陣容になっていった。結局最後はバルサ、アトレティコにも抜かれて定位置になりつつある4位フィニッシュ。
大きなトピックとしてはGKのブヌがサモラ賞を獲得した事。おめでとう。とても柔らかいボールへのアプローチが特徴で、止めるというよりサラッとゴールマウスの外に流してしまうような不思議なキーパー。鉄壁のCBコンビはさすがにクンデがプレミアに行きそう。そのアフロだけでも残していってくれないか。ジエゴ・カルロスはなぜかブラジル代表にも全く絡んでこないので、そろそろ大きな挑戦をするか、大金をくれるクラブに行くかの予感もある。ニューカッスルという噂はどうなったんでしょう(※アストンヴィラに決まった)。アンカーのフェルナンドもいつまでパフォーマンスを維持出来るか。

正直27〜31歳くらいが多いスカッドで魅力的な若手もいない。試合出られないなら出て行く選手がいても不思議じゃないし、CLがあるからとりあえずチームに残るくらいのモチベーションの選手もいるだろう。具体的にこのチームの上積みってどんなだよと言われても困ってしまうが、変化がなければ3強に割って入る事は出来ない事を露呈したシーズンである。



●5位:ベティス

勝ち点65 19勝8分11敗
62得40点失点
国王杯:優勝
EL:Round16敗退

ペジェグリーニ体制2年目のベティスは04-05シーズン以来、3度目となるコパ・デルレイ制覇となった。ラリーガのレジェンドホアキン・サンチェスの引退に最高の花道を用意したが、優勝直後にホアキンがなんとあと1年の現役続行を発表。そんな突拍子もないところまで含め、彼の持つ魅力だろう。もう一年楽しませてほしい。

今季もGKブラボ含むビルドアップの精度の高さをベースとしつつロングボールを活用し、ボルハ・イグレシアスとファンミのコンビが活躍。パンダことボルハ・イグレシアスは2季連続の2桁得点(10得点)。ベティス移籍後は怪我に苦しんできたファンミは決定機を決め続け、ソシエダに所属していた16-17シーズン以来の2桁、16得点を奪った。ボルハ・イグレシアスと併用されたウィリアン・ジョゼも9得点と躍動し、今季のラリーガでは珍しくFWが当たったクラブだった。
フェキルとカナレスは相変わらず手が付けられず、中盤ではギド・ロドリゲスがベストなシーズンを送った。
ただCBは誰が出てきても絶妙に緩いところがあり、特に新加入ペッセッラは質の高いところを見せたと思えば凡ミスをしたり簡単に裏を取られたりを繰り返した。

最後までCL出場権を争ったが、トップ7直接対決で圧倒的に負け続け(2勝2分8敗)、最終的には5位フィニッシュ。来季へ向けての補強に注目。



●6位:ソシエダ

勝ち点62 17勝11分10敗
40得点37失点
国王杯:ベスト8
EL:決勝トーナメントフレーオフ敗退

ラリーガのグッドチームは6位フィニッシュ。
今季はホームのアノエタではなんと5試合でしか失点しておらず、合計9失点と圧倒性な守備力を見せた。これは15-16シーズンのアトレティコの7失点、17-18シーズンアトレティコの8失点に次ぐ近年のラリーガで最高の成績だ。
一方でそのホームゲームで16点しか取れていない。これも今季20チームで最低の数字。課題は明確。ストライカーがいなかった。
得点力に苦しむ中で冬にはラフィーニャをレンタルで借りて補強。しかし何度もチームを救ってきたオヤルサバルが3月の練習中に前十字靭帯を断裂。長期離脱となってしまった。

ELでも決勝トーナメントプレーオフ(実質ベスト32)でライプツィヒと当たってしまいトータル3-5で敗戦。不完全なシーズンとなった。トップ7の直接対決でもなんと37節にビジャレアルに勝った以外は未勝利(1勝4分7敗)。12試合で7得点23失点と歯が立たなかった。グッドチームに留まらず、さらに上を目指すなら説得力のある得点パターンがどうしても必要となる。

FWを補強したい中でイサクに退団の噂もあり、見通しは不透明。ヤヌザイも退団する。FW以外は無限に良い選手が湧いてくるクラブ。どうにかELクラスのストライカーを補強したい。ラカゼットとか駄目だろうか。



●7位:ビジャレアル

勝ち点59 16勝11分11敗
63得点37失点
国王杯:Round32
CL:ベスト4

今季は主力の負傷に苦しんだ。
まずエースのジェラール・モレノがラリーガ17試合出場に留まった。それでも年末には3戦連続ドブレーテ含む4試合ゴールの固め打ち。17試合で9得点は見事な数字。しかしジェラール・モレノが復帰すると今度は新加入のアルノー・ダンジュマが負傷。スピードとパワーでラリーガを席巻出来る選手となれそうだったが。いよいよ本格化が近そうなジェレミー・ピノも、終盤の怪我でCL準決勝リバプール戦に出場出来なかった。
今季のチームはジェラール・モレノとピノがいないと中盤と前線をリンクする選手がいない。ベテランパサーの多い中盤を抱えるもスイッチを入れる選手がおらず調子が上がらず、一時は12位まで落ち込んだ。
2月にスパーズからロチェルソが加入し、機動力で中盤と前線をジョイント出来るようになりやや調子が上向いたが、過密日程の中29節カディス戦、30節レバンテ戦に連敗し、CL争いから離脱した。
ロチェルソ加入の効果は国内よりもCLで。マンチェスター・ユナイテッド、アタランタと同居する厳しいグループを何とか2位で突破したビジャレアルは、決勝トーナメントでユベントス、バイエルンを破り準決勝に進出するアップセット。あの05-06シーズン以来となるCLの準決勝を戦った。2ndレグ前半でトータル2-2に追いつくも後半力尽き、残念ながらリバプールに敗れたが、ポジティブな戦いを世界中に披露した。フォイスとエストゥピニャンの両SBも欧州列強相手に見劣りしない対人性能を発揮してサプライズを演出。頂点を知る大ベテランのラウル・アルビオルはチームを導く役割をこなした。

来季に向けては、ストライカーをダンジュマと心中出来るかという問題がある。故障が多く、ボールの受け方もたいして上手くないので意外と取説が難しい選手だ。ディアもパコ・アルカセルも全く戦力になれなかった。さらに中盤は30歳以上の選手が多く(パレホ、カプエ、トリゲロス、コクラン、イボーラ)、DFも36歳のラウル・アルビオルに、メガクラブからの引き抜きが噂されるパウ・トーレスと、選手の入れ替わりはありそうだ。CLもELも出れないし。



●8位:アトレティック

勝ち点55 14勝13分11敗
43得点36失点
国王杯:ベスト4
スーペルコパ:準優勝

マルセリーノ・ガルシア・トラル率いる4-4-2軍団。国王杯はベスト4、スーペルコパを戦ったりと大忙しのシーズンだったが無事8位フィニッシュ。欧州圏まであと一歩と迫るシーズンになった。国王杯は先々季、先季の準優勝に続くベスト4と立派な成績。
まあこのチームには基本的に補強というものはないんだが、修行先のミランデスから戻ったCBダニ・ビビアンがイニゴ・マルティネスの相棒になり、トップ昇格したイニャキの弟ニコ・ウィリアムズやニコ・セラーノがスピードを生かして試合終盤の切り札として躍動した。ニコ・ウィリアムズはスーペルコパ準決勝ではアトレティコ相手に決勝点を決めている(ラリーガでは無得点)
4-4-2に固定したシステムで、実質替えが効かないのはムニアインだけの陣容を用意出来ているのは本当にすごい。よくわからん。そのムニアインとサンセの2人は狭いエリアで縦パスを要求出来る選手で、大外のスピードのある若手と合わせて引いた相手を崩すパターンを構築出来そうな予感があった。
中盤はダニ・ガルシアがキャリア最高と言える出来。相方はベンセドールかでかいベスガが務め、どちらにしても強度のある守備と再奪回の強度を担保した。
今季は複数失点が6回だけと、固い守備を特徴とした。

しかし、シーズン終了後にオーナー変更を受けてマルセリーノが涙の辞任。もう一年、このチームの行き着く先を見たかった。非常に残念。よっぽどの事がない限りは来季も簡単には負けないチームを作ってくるだろうが、不必要な監督交代に思う。
ちなみにラリーガの連続試合出場記録を作ったイニャキ・ウィリアムズだが、通算出場試合は339。クラブ最多はホセ・アンヘル・イリバルの614で、まだまだ及ばない。ちなみにムニアインは498でたぶん歴代6位くらい。アトレティックの偉大な歴史を感じる数字だ。



●9位:バレンシア

勝ち点48 11勝15分12敗
48得点53失点
国王杯:準優勝

インテリ詐欺師風指揮官ホセ・ボルダラス率いるバレンシア。
まあ10位くらいだろうなというメンツでどんなサッカーをするか、と思っていたが結局10位くらいで終わった。今季は年明け直後(19〜25節0勝2分5敗)と最終盤(30〜37節0勝5分3敗)に勝てない時期はあったがそれ以外は成績が安定。やってるサッカーは全く安定していた印象はないが。そして決勝までトップ7と一つも当たらないスケジュールにも恵まれたコパデルレイでは決勝まで進み、惜しくもベティスに敗れた。
GKはシレッセン、ママルダシュヴィリ、ドメネチのスタメン級3人
CBはガブリエウ・パウリスタとアルデレーテ、ディアカビ
SBはコレイアとフルキエ、ガヤとラト
中盤はコンバートされたギジャモン、ヴァス、ラチッチ、ムサ、ソレール
前線はゲデスと覚醒を予感させるウーゴ・ドゥーロ
一人一人の活躍を思い出すと強いんだが、集団になるとまだ甘いところがあるのがこのチームの特徴だったかもしれない。意外と怪我人も多く、ボルダラスの標榜するサッカーの全貌は見えていないのかなという印象である。冬のヴァスの退団(→アトレティコへ)の影響が大きかったのかもしれないが、中盤でフィルターが効かなくなりずっと殴り合いをしてしまう試合もしばしば。イライシュ・モリバやブライアン・ヒルをレンタルで借りたが上位進出への決定打にはなれなかった。たぶんボルダラスはムサに大いなる期待をしていると思われるが、殻を破れるか。
このチームの補強ポイントはやはり純然たるストライカー。降格したアラベスからホセル辺りを持ってくると面白くなりそうな予感はある。



●10位:オサスナ

勝ち点47 12勝11分15敗
37得点51失点
国王杯:Round32

過去2季を10位、11位で終えている昇格3シーズン目のオサスナ。戦術家アラサテ監督の下、低予算の好チームを作っている。
今季もラリーガ中位の番人として戦った。18節のヘタフェ戦(A)を除けば、なんと12位以下のクラブに一つも負けていない。まさに番人。一方でトップ7からはビジャレアルに2つ勝った以外では一勝も出来ず(合計2勝3分9敗)、はっきりとわかりやすい結果になった。バルサとマドリーに引き分けているのは立派だが。
最終ラインからの構築、機動力のある中盤、突破力のある両翼と、ヘディングしか選択肢のない電柱CFという、どこを取ってもラリーガっぽいクラブだ。そりゃ上位からは点取れないよねという。
それに加えてこのチームには、ルーカス・トロやモンカジョラといったボールプレスに特徴を出せる中盤がおり、ダビド・ガルシアを中心にCBのメンツも豊富で、守ろうと思えば守れるチームだった。そりゃ下位には勝てるだろう。両SBの上下動もハイレベルだった。ナチョ・ビダルはおれの好み。
得点に直結出来ないアタッカーも多く、なんだかそういう選手が好みなのかなとも思うが、エルチェのボイェみたいなストライカータイプが用意出来るとWG勢にも選択肢が増えてラストサードの質が活性化しそうな雰囲気はある。
このまま中位キープを望むのか、上位進出を狙うのかで補強戦略、はたまたアラサテの去就にまで影響しそうな予感。来季は変化のシーズンになりそうである。



●11位:セルタ

勝ち点46 12勝10分16敗
43得点43失点
国王杯:Round32

ラリーガの変態ヤンキー集団は今季も散々順位表を引っ掻き回した末、安全圏でフィニッシュ。上位には潔く負け、下位には何故か負け、中位クラブをボコボコにしているイメージだがたぶんそんなに間違えていないだろう。サンティ・ミナが本物の変態ヤンキーになってしまった事は残念だったが

エドゥアルド・コウデ監督は良い仕事をしている。あんまりシステムがどうこうよりも好きな事をさせてくれよという選手が多い印象だが、それなりに再現性のあるバランスを構築した。そのためにはレナト・タピアのアンカー起用は必須だと考えていたが、途中からベルトランを中盤の底に置きデニス・スアレスと一緒に機動力で色々解決させていく戦い方は恐れ入った。大いに勉強させてもらった。

時々信じられないようなカウンターをもらうのが玉に瑕だが、ボール保持はバルサ相手でもなんかやれそうなレベルであり、0-3から後半だけで同点に追いつき、クーマンにトドメを刺した。だからこそ"もっと勝てよ"と常に思ってしまう。実際には調子が良い時よりも手詰まりになってイアゴ・アスパスが個人でどうにかする試合の方が勝ち点が取れている気がするのも面白い。あとは試合単品で見るとDF陣が頑張っていた記憶はあまりないが、シーズン全部のスコアを見ると意外と頑張ってた。新加入ハビ・ガランは今季のベスト補強。攻撃のアクセントもネガトラの根性も良いレベルの選手だった。
得失点差プラマイゼロでシーズンを終えたように、ちゃんと勝てるチームだ。
エースのアスパスは34歳になった今季も欠場は1試合のみ。32〜36節にラッシュをかけて5試合5得点を固め打ちし、18得点。ベンゼマに次ぐ得点ランキング2位と、まだまだ衰え知らずの決定力を発揮してみせた。来季へ向けてはサンティ・ミナに代わるアスパスの相棒を確保する事が必須になる。毎年のように"あれがあれば、これがあればELを目指せる"と言ってきた気がするが、もはや本人達にその気があるのか不安になってきたのでもう好きにやってくれ。デニス・スアレスをください。



●12位:ラージョ

勝ち点42 11勝9分18敗
39得点50失点
国王杯:ベスト4

先季2部6位からプレーオフで昇格を果たしたラージョ。プレーオフで見ていた時のチームはショートパスでスピードアップするのが上手いグッドチームだった。資金があるわけではないため先季2部を戦ったメンバーが主力で、残留は厳しいかなと思ったが今季のサプライズチームになった。
ローンバックのセルジ・グアルディオラが8ゴールとキャリア最高のシーズンを送り、右SBのバジウは2部アルメリアからのフリー移籍、フエンラルラダから2人合計230万€で買ったパテ・シス、エンテカの2人も主力として活躍し、マドリーからレンタルの左SBフラン・ガルシアは驚きのパフォーマンスを見せた。そしてファルカオもフリー移籍だ。
チームは熱い球際のファイトとロングカウンターに人数をかけてアタックする集団として開幕から躍動。青年監督アンドニ・イラオラが生み出したチームの雰囲気は、なんだか応援したくなる要素を持っていた。

とにかく序盤からホームのバジェカスで勝ちまくった。20節までのホーム10試合で8勝2分と圧倒的に勝ち狂い、なんと4位で年越しを迎えた。さすがに欧州圏を守り切るには至らなかったが、セットされた守備もトップ下のオスカル・パレホのパスで切り開き、左サイドのアルバロ・ガルシア、フラン・ガルシアの上質なコンビネーションでラリーガの強豪を脅かし続けた。健闘が光った昇格組3チームの中でも特別のサプライズで、今季の台風の目となった。
ラダメル・ファルカオやマリオ・スアレスといったベテランももう一花咲かせる活躍。決して裕福ではないクラブが厳しいリーグを戦う中で、欠かす事の出来ない仕事を果たした。

来季に向けては限られた資金でプリメーラに定着出来るだけの的確な戦力補強が出来るかに注目したい。フアン・マタを連れてきてくれ。



●13位:エルチェ

勝ち点42 11勝9分18敗
40得点52失点
国王杯:Round16

今季前半戦の推しチーム。開幕から玉砕3バックで両サイドのモヒカとホサンは一生上下動を繰り返し続ける、という毎週決勝戦のようなサッカーをし、毎週CBが限界を迎えて途中交代していった。中盤にはファイターを揃え、前線は単独解決が得意なアタッカーを並べてなかなかエキサイティングだった。パストーレ、ベネデット、ルーカス・ペレスあたりの経営層からは期待されてそうな選手が悉く何もしないのに戦えている前線のタレントはなかなかなものだと思う。ルーカス・ペレスは冬に移籍してカディスでちょっと活躍してた。

CBにビルドアップが得意なタイプはおらず、ベルドゥとかビガスみたいな無骨なおじさん達が3CBやらされているのはなんだか可哀想でもあったが面白かった。途中から4-4-2に変わったが。
中盤はみんな一長一短あった。皆微妙に得意なプレーを生かせる使い方が出来ていなかった印象がある。ラウル・グティとか使い方次第で化けそうだが。フィデルもいつもタスクが変わって大変そうだったが相変わらずの超抜テクと異常体力。

ボイェの負傷離脱もあり、実はギリギリのシーズンだったように思う。監督も途中で変わったし。ペレ・ミジャは8点取ったらしいが得点期待値は死ぬほど低かったんじゃないかと思う。いつも外していたような。
特に目立った連勝をする事もなく、終わってみれば何をどうやって残留したのか良くわからないが、何はともあれ36節のキックオフ前で、当時18位のマジョルカとの勝ち点差が6になった時点で無事残留確定。これで来季、プリメーラで3シーズン目を戦える。メンバーの高齢化も進んでおり、1部定着へ向けてそろそろ血の入替が始まる頃合いか。



●14位:エスパニョール

勝ち点42 10勝12分16敗
40得点53失点
国王杯:Round16

昇格クラブながら、終盤はもはや中位クラブと似たような扱いを受けていたエスパニョール。
なんでこんなメンツが2部のクラブに残ったんだという選手層で、とにかく個の能力が高いため自分達のやりたいサッカーを選べてしまう、という昇格クラブらしくないチームだった。
特に中盤のダルデル、メレンド辺りは上位クラブも驚くボール技術を持ち、自ら試合を動かすサッカーを可能にした。
前線はスペイン代表にも招集されたラウル・デ・トーマスが17得点と大活躍。ハビ・プアドも何かのきっかけでスーパーになれそうなポテンシャルを見せた。左SBのペドロサはたぶんシンプルにラリーガで一番足が速く、レアンドロ・カブレラとセルジ・ゴメスを中心に対人で頑張れるDFもいた。残留は通過点でしかなく、来季はさらに上位を目指す戦いになるだろう。
ディエゴ・ロペスやセルジ・ゴメス、アレイシ・ビダルなどベテランが良い味を出していた感もある。この辺がいなくなってもチームとしてまとまれるのかどうか。
ちなみにアウェーではバレンシア戦しか勝てていない(1勝5分12敗)。高いレベルでの安定を目指すプリメーラ2季目、すでに発表されている監督交代が吉と出るか、凶と出るか。



●15位:ヘタフェ

勝ち点39 8勝15分15敗
33得点41失点
国王杯:Round64

先季久々に2ケタ順位(15位)、ボルダラスの退任と、"何かが起きるなら今季"だったヘタフェは開幕から早速7連敗、その間2得点の大やらかし。8節ソシエダ戦の引き分け後にミチェル監督を諦め、我らがキケ・サンチェス・フローレスが通算3度目の監督就任。
そもそも先季のアタッカーはアンヘル・ロドリゲスだの久保建英だのククレジャだのみんないなくなり、何もかも一からというチームだった。カルレス・アレニャは残ってくれたが、あと補強出来たのはサンドロ・ラミレスくらい。なかなか厳しい構成であった。

キケ・サンチェス・フローレスは守備体制から改革を断行。なんだか頭数だけはいっぱいいるDFを5枚並べて撤退守備を大幅に改善。
チェレンジ&カバーが綺麗に整理された5-3-2のセット守備はラリーガ随一の質を誇り、アトレティコも勉強すべきところがある。特にジェネは質こそ違えどセビージャのクンデみたいな働きをしていた。GKのダビド・ソリアも当たりまくり、11節まで未勝利だったチームが終わってみればクリーンシート13回と、ソリッドな守備をベースにしたチームに生まれ変わった(計41失点)
手が回らなかったのは攻撃の方で、リーグ19位の33得点。勝ち切る形を作るのに相当苦労していたが、ここまでキャリアハイが6得点だったエネス・ウナルが突如の覚醒。16得点と決めまくった。アシスト1なので得点関与率は50%を超えた。
冬にはボルハ・マジョラルとゴンサロ・ビジャールのローマコンビにセビージャのオスカル・ロドリゲス、セルタで地味にポジションがなかったオカイ・ヨクシュルとレンタルで借りまくり得点パターンを構築、辛くも残留にこぎつけた。
なんとなく確変の匂いがするエネス・ウナルにどれだけ期待していいのかもわからず、マティアス・オリベラもナポリに買われていった。レンタル組の去就もまだわからない現状、ヘタフェはこのオフも難しい舵取りになる。個人的にボルハ・マジョラルとビジャールはまだラリーガで見たい。



●16位:マジョルカ

勝ち点39 10勝9分19敗
36得点63失点
国王杯:ベスト8

マジョルカも、他2クラブ同様に開幕から昇格組らしからぬ、狙いを持ったボール保持を見せるグッドチームであった。ただ、なかなか決定力が上がらず、これで残留出来るならグッドチーム、降格するなら無策な寄せ集め、という印象の戦いであった。保持のキーマンだったルイス・デ・ガラレタの長期離脱でバランスを失うと、29節のエスパニョール戦に敗れ6連敗、チームが降格圏18位に沈んだところで、クラブを1年でプリメーラ復帰させたルイス・ガルシア・プラサを解任。ハビエル・アギーレが就任した。

クラブ側のマネジメントも迷走した。補強したイ・ガンイン、久保建英の2人は終わってみればどういう使い道を想定していたのかわからないまま終わり、アギーレはこの2人に重要なタスクを与えなかった(それどころか出場機会を減らしていった)事が結果的にはプリメーラ残留に繋がった。結果を残したから良かったものの、冬のFW補強が電柱のムリキだったのも説得力を欠いた。補強で当たったのはGKのセルヒオ・リコ(パリSGから)くらい。地味に中堅クラブから引き抜かれそうな選手もちらほらおり、残留は果たしたものの来季は違うサッカーが求められる。そして残留争いの中でころころと目指すサッカーが変わっており誰が中心選手なのかよくわからない。続投が決定したアギーレがどんなチームを準備するのか期待したい。



●17位:カディス

勝ち点39 8勝15分15敗
35得点51失点
国王杯:ベスト8

ラリーガクラブらしからぬ泥臭さを全面に押し出すスタイルでプリメーラ2季目を迎えたカディス。今季はそんな”カディスのサッカーとは何か”を問い続けるシーズンとなった。
2016年に当時セグンダB所属していた頃に就任したセルベラ監督と相思相愛かと思っていたが、20節オサスナに敗れて2勝8分10敗、残留圏まで4ポイント差となったところで早々に解任。シーズン序盤には試合後の夜遊びを巡って監督と会長サイドで意見が対立するなど、悲しい別れとなってしまった。
後任のセルヒオ・ゴンザレスはボール保持方向にチームをチューニング。冬の補強でもセビージャからイドリシ、2部バジャドリードから中盤のアルカラスとフェデ・サン・エメテリオを補強。さらに前線にルーカス・ペレスをエルチェから借りて得点パターンを作ろうと取り組み、さらにセルベラにはあまり使われなかったイバン・アレホが右サイドで躍動するなど、セルヒオ・ゴンザレス自身は非常に良い仕事をしていた。でもカディスはこれでいいのか?という感じに様変わりしていった。
そんな中でもチームは先季に引き続きの大物食いを連発。バルサ、ビジャレアルに勝ちマドリーにも2分けし、徐々に浮上。最終節まで余談を許さない状況であったが37節でマドリーから1ポイントをもぎ取ると、最終節で降格決定済のアラベスに勝ってギリギリで残留。
セルベラが去ってもチームは共感を得られるカディスらしさを発揮出来るのか。ラリーガ有数の異物クラブは岐路に立つ。



●18位:グラナダ

8勝14分16敗
44得点61失点
国王杯:Round64

過去2季は7位、9位と上位成績を残していたグラナダだったが、ジェットコースターのようなシーズンとなり、まさかの降格となった。
まず開幕7戦未勝利。年末には15節から7試合(未消化だった9節含む)で3勝4分と調子を取り戻し浮上。と思いきやそこから8試合で勝ち点1のみとまた絶不調に。この中で新監督のロベルト・モレノを解任。ロベルト・モレノって代表監督の話でエンリケと揉めたあの人だったのね。 Bチーム監督だったルベン・トレシージャ暫定監督を経てアイトール・カランカが就任。カランカの手腕なのかどうかは全くわからないが、そこからの4戦を2勝2分で切り抜けて、安全圏へ登り切った。36節終了時点で18位のマジョルカと4ポイント差。普通に残留確定かと思われたが、なんと大逆転で降格。38節もエスパニョールにしっかり引き分け(0-0)ており、どう見ても助かる流れだったがマジョルカ、カディスが勝った事で1ポイント及ばなかった。

正直グラナダ側も何が起きたかわかっていないのではないか。不調だったとはいえ、37節までの間に降格圏にいたのは4度のみ。カディスは18度あった。マジョルカは5度。ちなみにヘタフェは17度ある。
38節の結果は、常々言ってきた"今季は自発的に3ポイント取りにいけないクラブが落ちる"を体現する形になってしまったが、はっきり言ってグラナダにそれがないとは一切思わない。南米の香りがする上質なアタッカーを抱えるチームだった。現に44得点はボトムハーフではレバンテに次ぐ数字。20歳のラウル・トレンテがCBに定着出来た事もポジティブなシーズンで、来季はもっと良いサッカーが見られる予感があっただけに残念だ。こうなったら2部で40歳ホルヘ・モリーナに得点王を取ってまた戻ってきてほしい。



●19位:レバンテ

勝ち点35 8勝11分19敗
51得点76失点
国王杯:Round64

先季の25節以降2勝4分8敗と不調だった状態を引きずるように、開幕から絶不調。4分4敗となった8節マジョルカ戦終了後にはパコ・ロペスを解任。2018年から続いた幸せな関係が終了を迎えた。パコ・ロペスはクラブの史上最多試合指揮、プリメーラ最多勝利監督としてクラブを去った。
その後もチームは状態を取り戻せず、なんと初勝利は年明け1月8日、20節のマジョルカ戦までかかった。地力があるチームでもあり、”調子が上がれば”と思っているうちにズルズルと負け続け、他のチームが必死に勝ち点を求める中、どこか他人事のような緩さで個人的には27節アトレティック戦の敗戦でほぼ降格を確信した。結局断トツ最多の74失点。不調時に頼るべき形を準備出来ず、日替わりのスタメンで戦い、迷走していった。
個人的には、パコ・ロペスの解任は得策ではなかったと思う。このチームはそもそも先季からたいして狙った形などはなく、鋭いカウンターで勝つチーム。得点源もカウンターの急先鋒になれるモラレスだ。身体を張れるFWもいないし単独でドリブル突破出来る選手もモラレス以外にはデ・フルートスしかいない。そんなチームでバランスを見つけ、対戦相手の長所を消しながら勝っていたのがパコ・ロペスだったのだろう。後任監督は誰に頼ればいいのか、果ては中盤の組み合わせをどうしたら良いのかも見つけられないまま、最終ラインを5枚並べる戦いに終始し、カウンターのキレは失われた。それでも51得点(リーグ7位)決めてるんだけどね。

2000年以降では4度目の降格。このタレントでまさか降格するとは。
カピタンのモラレスは降格が決まった試合後に早々に残留を表明したが、豊富な中盤のタレントは引き抜きもありそう。個人的にはペペルの選択に注目。



●20位:アラベス

勝ち点31 8勝7分23敗
31得点65失点
国王杯:Round64

開幕6連敗。アトレティコに勝ってまた連敗。9試合で1勝8敗。しかしビリではなかった(ヘタフェが0勝2分7敗)。しかもレバンテもまだ未勝利(0勝5分4敗)というとんでもないスタートとなった。

とにかくホセルの得点に依存したシーズンだった。リーグ最少の31得点の内、14点(45%)をホセルが決めた。13節レバンテ戦(2-1)で2発、24節バレンシア戦(2-1)の決勝点、32節ラージョ戦(1-0)の決勝点と、チームを勝利に導くゴールを決めてきた。
しかし失点が止まらない。クリーンシート僅か6回と苦しみ、ホセル以外の得点源もなく勝ち点を落とし続けた。

2021年内スケジュールを降格圏で終えると、ハビエル・カジェハを解任。エイバルで時代を作ったメンディリバルに残留を賭けたが、これが大外れ。良く考えれば分かりそうなものだが、シーズン途中から突然機動力と前プレを軸にしたチームに作り替えるのは無理があった。戦える選手の多い中盤は何とか頑張っていたが、解決の糸口を見つけられないまま、結局メンディリバルは指揮した12試合で僅か1勝と結果が出ず、30節アトレティコ戦での1-4を最後に解任となった。
冬にラツィオから加入したエスカランテが得点を量産して一瞬ヒーローになりかけるなどしたが、37節、先に降格を決めたレバンテに1-3で敗れて力尽きた。
残留争いを抜きにしても頼みのホセルが早々に契約延長を拒否するなどそれ以前の問題だった感もある。ラグアルディア以外に気合を注入出来る存在も乏しかった。それでもセグンダならたぶんルイス・リオハは手がつけられないくらいドリブルするだろうし、中盤も1,2人引き抜かれても戦い抜ける強度はあるだろう。またプリメーラに戻ってきてほしい。


以上!
CL決勝も終わって欧州主要リーグが概ね終了。あとは昇格プレーオフくらいかな。海外サッカーの夏休みです。来季も楽しみましょうね。

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