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全方向性を手に入れて 29節 アトレティコvsアルメリア(H) 2023.4.16

絶好調アトレティコ。バルサ戦を直後に控えてアルメリアとのホームゲーム。前回対戦

サヴィッチ&ヒメネス欠場のスクランブル。カラスコもいなかった。主導権を握られ、特にバチストンのライン間の引き出しで後手に回った。

今節アトレティコは累積リーチが山ほどいる。気をつけてください。
ミッドウィークはトルコへ飛んで親善試合をやってきたとのこと。地震絡みのチャリティーとのこと。スコアはたぶん0-2負けです。

2部から首位で昇格してきたアルメリア。開幕からちゃんとした戦いをしており当然の如く残留すると思っていたがじわじわと星を落として残留争いに飲み込まれている。
いつの間にかチーム得点王のエル・ビラル・トゥーレが怪我でいない。ルイス・スアレスへの期待がより高まる。アキエメもいない。どうすんだ


●スタメン
・アトレティコ
オブラク
モリーナ / ヒメネス / ヴィツェル / エルモソ
コケ / デ・パウル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / コレア

サヴィッチが怪我で22節(出場停止)以来の欠場。代わりはヴィツェル。
トップには復帰したコレアを使う。

・アルメリア
フェルナンド
フブラン・メンデス / カイキ / エリー / バビッチ / センテジェス
サム・コスタ / メレーロ / ロベルトーネ
バチストン / スアレス

5バック。ようやく固定された中盤3枚と、替えがいなそうな2トップ。チュミが出場停止の最終ラインには最近使われ始めてきたカイキが使われる。スタメンは13節バルサ戦以来約5ヶ月ぶり。


スタメン



●前半
アルメリアは5-3-2風。まずボール保持がアトレティコ相手にハマらなすぎて全く前進できなかった。

3CB中央のロドリゴ・エリーから配球。コレアが真正面に立ち、左右に選択させて出てきたボールをジョレンテ&グリーズマンが捕まえる形。アルメリアは3CB+3CHを5枚で止められていることがそもそも問題だが、メレーロの右落ちでズレを作る。

アルメリアの3CHは全員可動域が広くて動き回れるのが特徴。メレーロがボールを引き取って前進する形でデ・パウルを引っ張り出すところまではできた。ただ、アルメリアの残り選手は両WBと2トップしかおらず、アトレティコはコケが真ん中にいる必要がなく、前方5枚で左へ圧縮。縦パス以外の選択肢を奪って守れてしまうので全然怖くない。どんどん前に出ていった。アルメリアはどこもかしこも一人足りないんだよな。唯一可能性がありそうなのは左WBのセンテジェスにボールを持たせてサム・コスタが前に突っ込んでいってヴィツェルに対応させる形で、全然違う流れからだったが同点ゴールはその周辺から生まれている。


とにかく、アトレティコは圧倒的にボールを保持できることが確定した噛み合わせとなる。

この日、アルメリアは5バックで構えてアトレティコの両WB(モリーナ&カラスコ)にダブルランデヴーに近い形で対応。
アトレティコは前節ラージョ戦で楽に前進できた理由にエルモソ→グリーズマンの縦パスを入れる形を確立し、カラスコが相手SBと1vs1を選び続けられることにあった。アルメリアは5バックにすることで、カラスコの1vs1に対して最終ラインに4枚(3CB+逆のWB)を残せる形を選んだ。ただ色々問題点があり、アトレティコの攻撃は止まらない。

まず、カラスコにマンツーマンで対応しているフブラン・メンデスに対して、アルメリアの最終ラインはサポートに行きにくかった。アトレティコはニアゾーンに必ずサポートが入り、フブラン・メンデスと隣のCB(カイキ)の間を引き離す配置を取り続けた。グリーズマン、コレア、デ・パウルが入れ替わり立ち替わりこのエリアを取り、カラスコは広いスペースの1vs1を繰り返すことができた。これじゃカラスコ対策をしている意味がそもそもない。「フブラン・メンデスでカラスコを止められるのか?」がそもそも不透明な中で、オープンエリアの1vs1をやり続けて収支プラスになるとは思えず、結局ボコボコに抜かれまくった。アトレティコの2点目もここの突破が絡んでいる。

決定的に"駄目だこりゃ"となったのは9:30のデ・パウルのランニングで、こんな簡単にCBが引っ張り出されて効果的に守れるはずがなかった。

まあデ・パウルは左大外を取っても左足でボールを蹴れないんだが

また、アルメリアの2トップはプレス開始位置をなかなか定められず、アトレティコはヒメネスを真ん中にしてグリーズマンが中央に落ちてくる1-3-1でビルドアップ。

1-3-1-5みたいな。
ヴィツェルとエルモソは第一ラインの向こう側へポジションし、2トップのプレスを無力化。大きくタッチラインまで開いた両WBにアルメリアのDFがどこまでついていくかを問いかけ、ジョレンテ&デ・パウルはIHの背後まで侵入し、メレーロ&サム・コスタに前方へのプレスを躊躇させた。
結果として5人で相手2トップのプレスを簡単に外してどこからでも侵入できる環境を作っていく。ジョイント箇所が多い上に、誰と誰がジョイントされているのかがわかりやくい配置で余裕を持ってプレーできている。

カラスコにフブラン・メンデスがついてくるのは確定しており、モリーナも時々最終ラインに落ちると、対面するセンテジェスがどこまでついてくるか確認しながらジョレンテを大外に立たせるなど配置を工夫。

ヴィツェルの配球の良さも際立っており、できることを色々試しましょうのターン。

カラスコ側の侵入が煮詰まると、アルメリアの中盤はバランスが崩れてくる。グリーズマンをフリーにできないしデ・パウルを捕まえられないしコケまで近寄ってきてどうすることもできなくなり、逆サイドをガラ空きにする

なんだこれ
ジョレンテがフリーでボールを受けられる状態になり、ここからありとあらゆる方法で得点に繋げるジョレンテを見てきているアトレティコファンとしては、むしろ大丈夫なのかと心配になってしまう形。途中から仕方なくバチストンが穴埋めに降りてきて5-4-1みたいになっていた。本末転倒感がある
前回対戦で非常に危険だったバチストンは、この日は得意なプレーを一切選べていない感があり、この用法用量の難しさがまだ4得点に留まっている原因なんだろうな。良い選手だけどね。どーんと行ってばーんとやるエル・ビラル・トゥーレの方が結果を残しているのはそういうところだろう。

アトレティコは序盤5分にさっさとCKからコレアのフリックにグリーズマンが反応して先制。圧倒的優位に試合を進めたが、コレアのこの世の終わりみたいなパスミスがバチストンに渡り、バチストン自身はドリブルコースもタッチ選択も計4回くらい間違えまくった結果苦し紛れの左足キック(たぶんパス)がヒメネスの踵に当たってゴールに吸い込まれた。CBに一番必要なのは日頃の行いであることがよくわかるオウンゴール。

"この内容で追いつかれるんかい"とスタンドがザワザワする中で43分にコケのタイミング100点満点の縦パスでコレア&グリーズマンが中央打開。最後はPA内でフブラン・メンデスを振り切ったカラスコの折り返しにグリーズマンが上手に合わせてこの日2点目。この日のコケはこのくさびが非常に良かった。どうにかリードして前半を終えた。


●前半終了
3-0でもおかしくない完璧な45分。グリーズマンの2発で2-1で折り返した。

アルメリアのアトレティコ対策が外れまくっている感はあるが、今のアトレティコは相手の配置と対応を見てプレー選択ができている。4-4-2だったらそれはそれで対応して点を取っていたんだろうなと感じられる全方向型の崩しができていて非常に心地良い。なぜかいつの間にか5バックの破壊が得意になっているのも面白い。
デ・パウル&ジョレンテのIHが結果的にバランスの均衡を保ちながら、逆にバランスを破壊していく様も面白い。


●後半
選手交代なしで後半。
アトレティコはグリーズマンがジョレンテ側に移動しチャンスメイク連発。特にジョレンテは開始10分間で2つ決定機を作った。エルモソとコケの美しいプレス回避なども飛び出しやりたい放題になってくる。60分にはカラスコがポスト直撃のシュートを放ち、61分にはジョレンテの単独裏抜けからグリーズマンのハットトリック未遂もポストに嫌われた。ラージョ戦に続き3点目が遠い。

58分にアルメリアはカラスコの対応をやり続けていたフブラン・メンデスが怪我で交代。もう嫌になっちゃった可能性もある。全方向喧嘩型選手のピグマルが出てくる。
アトレティコは復帰戦となったコレアが64分でお役御免。スタンディングオベーションが送られた。

一向に3点目が奪えなかったアトレティコは後半、危険なシーンは75分にカラスコがサボって裏を取られたところくらいだったが、終盤にヒメネスのPK献上疑惑(ポルティージョのオフサイドに救われた)などがありながら慌ただしくクローズ。アルメリアは68分に3枚替えするも、全て同ポジションの入替に留まった。3点目を失う危険が常にあったのでルビ監督にとって難しい旗振りだったように思うが、結局83分にカイキ→エンバルバを交代するまで攻撃的な配置変更を行うことができなかった。それでもPK疑惑を作ったと言えば、それはそう。この辺の現実的な采配が今後の残留争いで吉と出るか凶と出るか。


●試合結果
6連勝。13試合負けなし。いつの間にか4位ソシエダを9ポイント離して安全圏に。来週、首位バルサとの大一番を迎える。勝ったら10ポイント差。その際は優勝を狙うみたいな話をしてもいいんですかね?さすがに駄目ですか?

アトレティコはここに来て、相手の戦い方を見て攻撃を選択できる全方向性を手に入れようとしている様子。今ならどんな相手にも、と思えるタイミングでバルサと戦える。シメオネはこういうビッグマッチに"間に合わせてチャレンジする"のが上手いよな。さあ、いざ今季最後の山へ。


4/16
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 2-1 アルメリア
得点者
【アトレティコ】'5 '43 グリーズマン
【アルメリア】'37 OG(ヒメネス)



●ピックアッププレー 〜グリーズマンの相棒〜
ではこの試合の指摘事項。「グリーズマンの相棒の考え方_2023.04最新版」について記載する。

現状メンフィスがベストフィット感を出しつつ代表戦の怪我で離脱。バルサ戦に間に合うか微妙。モラタは伝統的に信用されておらずコレアが好調。さらに彼は身内の不幸を乗り越えようとしているストーリー性も後押ししている。

そもそも、メンフィスがグリーズマンの相棒として優秀な点は"グリーズマンのタスクを取り上げる"ことができる点にあると考える。
グリーズマンが並行サポートするなら裏に走ります。
グリーズマンが右側からカラスコへ長いスルーパスを蹴るならPA内ニアに飛び込んで潰れます。ファーにジョレンテが飛び込んでくるから重要な動き。
グリーズマンが縦パスの受け手になるならワンタッチフリックを受けられる位置に近づいてワンツーをサポートします。

今思えば全部コレアの得意なプレーですね。という気付きが最近のアトレティコの攻撃にはある。だからコレアがハマる。


さて、モラタの話。今季10点取ってる。グリーズマンの次に多い。モラタのプレー、ポジショニングは全てゴールに直結する形に集約されている。それは良いことなんだが、現状のアトレティコの配置からすると少しハマらないところがある。例をあげる。

前半から何度も擦ったカラスコの1vs1。グリーズマンの位置が遠いのでこの場面ではモラタにニアに抜けてほしい。しかしモラタはPA内でクロスを待つ。特に彼は相手CBの背後に隠れてファーへ消える動きを好むのでニアゾーンに空洞ができてしまい、アトレティコの攻撃はやり直しとなる。
これ、何が悪いかって言うと難しいんだが"モラタがニアゾーンに入らないのが駄目"というより"グリーズマンがわざわざ長距離移動してニアゾーンに入らないといけないのが駄目"ということで。わかりますかね。グリーズマンのタスクを取り上げるんです。それが大事なの。"グリーズマンがやって"という項目を減らせば減らすだけ攻撃が上手くいく。この感覚は試合を見てる人になら伝わると思っている。
この回答は現状"ルマルを入れろ"になりそうなんだが、それはそれ。

この試合何度もあったコケのダイレクトのくさび。斜め前方からパスをもらって前が空いていればほぼオートマティックに相手CBの手前目掛けてダイレクトで蹴り込んだ。コレア&グリーズマンでこのボールを処理して中央を打開する形はチームの2点目にも繋がっている。
この場面でモラタは自分も受け手の一人である認識がなく、グリーズマンがくさびを受けて自分にダイレクトフリックしてくれることを期待して裏抜けを狙っている。この場面ではグリーズマンから"受け手になる"というタスクを取り上げてボールに近づく動きが要求される。この感覚のズレはメンフィスorコレアと異なる。


モラタは理不尽なロングボールを収められることやファールをもらえること、そして馬鹿みたいに裏抜けが速いことなどストライカーとしての優秀な特徴も持ち合わせるのは周知の通り。現状のチームはその長所が出るような展開とは程遠い。まあセットプレーから決めてくれたりしそうだからいいんだけども。
彼の有用性はその特徴が生きる試合展開が来るかどうかにかかっている。シメオネの嗅覚が選手起用を分けることになりそうだ。さて、バルサ戦はどうか。


●ピックアップ選手
コレア
スタメン復帰し早速グリーズマンの先制点をアシスト。バチストンの同点ゴールもアシストしてしまったのはご愛嬌。コレアが必要であるということを彼自身に、そしてシビタス・メトロポリターノのファンに伝えるスタメン起用は見事。

ジョレンテ
スペースが与えられてプレーを自ら選択。直接得点には繋がらなかったが常に効果的だった。次節出場停止。

グリーズマン
2桁到達の2発。ベストの状態を維持してバルサ戦へ

コケ
どこにボールを届ければ何が起こるか、全てわかっているかのような配球で試合を動かした。ダイレクトのくさびで何度もチャンスメイク。非保持のバランスも完璧。さあ、バルサ戦だ。

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